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横四楓院絞男はローラースケートがお好き

 ターゲットに気配を悟られぬよう迅速かつ隠密に諜報活動を行うのは犬が電柱と女性のナマ足にマーキングするのと同じくらい基本中の基本である。だがをかし、それはあくまでターゲットが諜報活動において未だ情報的に存在価値がある場合に限りである。ターゲットが存在価値無し、と判断された場合は邪魔者は即座に後始末デリートである。たとえターゲットが女子供であろうとも容赦はしない。……ちょっと、パイ乙の先っぽ触らせてくださいオラとか言うかもしれないが、とにかくスパイは容赦せんのである!


 ターゲットを始末する際は迅速なのは勿論の事、的確かつ冷静かつ静粛に。

ターゲットに『ギエピー!』などと断末魔を上げられている内は三流である。何時、ターゲットが始末されたのか分からないくらいのまさに死神がその身に舞い降りたかと思われるくらいの手際でようやく二流である。えっ?じゃあ、一流は何だよだって?フン、一流スパイは僕を除いて他に存在しないのである。そして一流スパイであるぼっくんに欠かせないデザート…デリートアイテムを御紹介しよう。


 ローラースケート、である。

車輪を靴底に取り付けたいわば自動車の人間様バージョンである。ローラースケートなど盛りのついたウェイウェイ大学生バカップルのウェイウェイアイテムなんじゃねウェイウェーイ!とか思われるかもしれないが、ウェ~イ……馬鹿にしてはいけない。海外の青い人達は犯人を追跡したり、出前のDQNは移動手段としてローラースケートで公道を平然と爆走する(※日本では交通量の多い公道やスケートリンクのない公園等におけるローラースケートは基本的に使用禁止となっています)。ローラースケートは自動車よりもスピードはトロイものの小回りが利き、近距離を即座に詰めるには最適なウェイウェイアイテムなのである。始末すべきターゲットとの距離を即座に詰め、背後からズブリ……スパイのデザートアイ、デリートアイテムにはまさにうってつけなのである。


「フフフ、せっかくだから僕は誰もいない早朝の学園の廊下で風を切るぜ」


 ローラースケートを両足に装着した僕は一人、ほくそ笑む。

そして、クラウチングのような体制となり両手両足両手に力を込め、全体重を前方にかける。颯爽と猪のように滑るのである!猪突猛進に服を着せたような奴だな、とかそんな感じの男になってやるです!


ツルッ


「ウェイウェッ……ヴェー!」


 ……。

結果、両足が前、両手が後ろに行き万歳のような体制で尻餅を着いてしまう僕。…フン、他人様から見れば単に僕がズッコキ三人組のように滑ったように見えるかもしれないが、これも立派なスパイの訓練なのである。もし、ターゲットにレースクイーンの柔道家がいたらどうする?頭から地面に叩きつけられるのを防ぐ為にケツで受け身の訓練を行っているのである!


「あいたたたた……フン、思わず地面に尻を喰われちまうところだったぜ」


 尻に付着した埃を叩きながら生まれたての子鹿のようにプルプルと震えてこの場を何事も無かったかのように立ち上がる僕。自分で言ってて何だけど、地面に尻を喰われる状況ってどないやねん。高度な腐女子様なら『ギャッハハハア! 地面×○○とかかつる!』とか黄色い声を上げて悦ぶのかな、とかしょうも無い事を思いつつも今度こそこの裏の世界が求めて止まない横四楓院絞男の身体で風を切るんだぜ…?


ツルッ


「ウェイウェイウェッ…ヴェエエエ!」


 ……フン。

性懲りもなくまた受け身の練習をしてしまったではないか。やれやれ、しかし何だな。言い訳とかそう言うのでは決して無いが、僕の装着しているローラースケートは四輪ではなくて車輪を一列に並べているいわゆるインランスケー…インラインスケートと呼ばれるローラースケートである。であるから当然、普通に立っていてもバランス感覚は相当に難しいし、これはもしかしてその道のプロ、いや……スケート選手、神様でないと乗りこなすのは相当に難しいのでは無いだろうか。いや、言い訳とかそう言うのでは決して無いです。


「くっくっく。まったく……僕と言う人間は石橋を叩きすぎて橋をぶち壊すタイプの人間のようだ。しかし、受け身の練習はもういいだろう。次こそは身体で風を切ってやろう」


 そろそろ僕の身体が風を欲しがっている。ローラースケートを自由自在に操作して華やかな衣装を着て、陽気に歌えば女子にモテそうな気がするのは僕の気のせいだろうか?


ツルッ


「ウェーイ! ウェイウェイウェッ…ヴェェェイッ!!」


 これは、受け身の練習である。


「オハヨー! さっとうくん、さっとうくん! さっきから吉●のズッコケ練習してたけど、どしたの?」

「……ウェイ?」

「それとも、いつもの自虐的なマスター●ーションかな?」


 ちょうど、受け身練習で尻もちを着いたところで待ってましたと言わんばかりに登場するめぐみん。あ、朝っぱらから男子である僕に向かってとんでもない事を言うな、こいつ。パンツ見られただけで真っ赤になるくせに。まあ、夜だったら良いと言うわけではないが、今の台詞を録音して後でリピート再生するくらいには興奮したのでヨシとしよう。


「あっ……う。ち、ちが、います……。い、今のはう、受け、受け……身」

「え、受け? まあ、佐藤くんの顔的にも挙動不審的にもそのまんまだけど。でも、偶には佐藤くんはライオンさんみたいに『がおー』って私専属でがっついて欲しいけどね!」


 めぐみんは両の掌を僕に突き出して、がおがおと鳴く。あらま、可愛らしいですこと。じゃなくて!い、一体何の話なんだよ!挙動不審的ってどういうことなんだよ!はあはあ……だ、だめだ。この女といると動機、息切れが激しくなる。救心が此処らで採取できれば良いのだが、見当たらない。心落ち着く魔法の言葉を心の中で唱えて、英気を養いませう。


「(ウェイ?)」

「アッー! さっとうくん、なにそれなにそれー! めっちゃ、カッコイイ『タイヤ靴』履いてるね! 貸して貸してー!」


 貸して貸してと欲しがり屋の子供のような邪悪な笑顔で僕のローラースケートをぐいぐいと脱がしにかかるめぐみんさん。くっ、こ、こら!僕の暗殺アイテムをタイヤ靴などというダサアイテムと一緒にするんじゃない!か、かくなる上は僕のトカレフの鉛玉を此奴の急所にぶちこんで……!


「あっ……やだ、やめっやめっ……ままああんっ」


 スルッといとも簡単にローラースケートをめぐみんさんに奪われる僕。現実は無情で非情である。


「クンクン……。フッフッフッ、これがさっとうくんのナマ足臭……癖になります! さっとうくん、今からお前の靴は私の人質となった!」


 この子は頭がイカレてしまったのだろうか?


「あの、返して……。返して、くだしぇい……」

「やだ。それにこのタイヤ靴の性能を試しておかないとね。よっと、ほっ」


 めぐみんさんは僕から強奪したローラースケートを履き、廊下をスルッと前方に移動する。あっ、とってもうまい……です。普通の人間なら履いて立ち上がった時点でバランスがうまくとれなくなり、転倒してしまうものであるが、此奴は難なくそれもクリアし、それどころかローラースケートで廊下をスイスイ移動してしまう始末である。しまいにはトリプルアクセルもしてしまいそうな雰囲気である。悔しい悔しい、いと悔しい~!何てことは思っていないのである。フン、なかなかにうまいではないか……しかし、僕と比べるとまだまだですね。どの口が言っている?だと?この崇高なる横四楓院絞男のアヒル口である。


「楽しいね、これ! そっか~さっとうくんは通りすがりの女の子の下着をずりおろしてそのまめこのタイヤ靴を使って逃走するつもりだったんですね! えっちっちなさっとうくん!」


 こ、こら!

も、もうすぐ、人が集まるんだぞ!大きな声でそんなえーぶいの企画モノみたいイタズラをカミングアウトするんじゃない!そんな発想思いもつかんかったわ!……はっ、お、思ってない!僕はそんな事、思ってもいなかったんだかんな!って、僕は誰に向かって言い訳しているのだろう。


「たっのしー……あっ!」


 僕に向かってローラースケートで滑走していためぐみんさんだが、後ろのめりに滑って尻もちをついてしまう。やーい、滑って転んでやがるですー……えっ?どの口で言っているですって?この至高なる横四楓院絞男のおちょぼ口である。


「いった~……もー、さっとうくんが顔芸するからビックリしてこけちゃったんだよー」


 めぐみんさんは打った尻を撫でながら文句を言っている。か、顔芸なんてしていないだろ!僕のデフォの顔が顔芸してるって言いたいのか?ふ、ふざ……アッ!み、みえ、見えてーら!めぐみさんが後ろのめりに仰向けで倒れて微妙にめくれたスカートの下からく、クマー!


「……ごっくん」

「……ごっくん? 佐藤くん、どうし……ハッ!?」


 僕のつばを飲み込む様子を見ていためぐみんさんは自分の微妙にめくれたスカートに気付き、即座にスカートを整え直す。しかし、時既に遅し。僕の眼にはクマー!さんが焼き付いて離れない。


「…………」

「……佐藤くん、見たよね?」

「み、見てません」

「……。ハチミツが大好物なキャラクターは何ですか?」

「くまのクマパンだクマー! ……あっ」

「ギャーやっぱり、見てるじゃん! しっかり見てるじゃん! 嘘吐き! さっとうくんのぼかばかばかえっち!」

「あ、ありがとうございます」

「何でお礼なの!?」

「あ、あの……高校生でそのクマー!さんの下着はちょっと恥ずかしいどころか何か何というか変な調教プレイで履かされてる感が満載で如何にも見て下さい的で背徳的な感じがしてとっても素人でしか味わえない素朴なオカンの筑前煮のような味が何とも興奮して勃起して……ご馳走様でした」

「ヒィー! な、何言ってんの! 何言ってんのこの人! き、キモイ! 普段、口数少ないくせに何で突然そんなに饒舌になるのこの人! さっとうくんのばかばかえっちばかばかえっちえっ」(※エンドレス)

「ヒェー、ありがとう、ございまっす!」


 我々の業界ではご褒美です!!

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