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横四楓院絞男は女装がお好き

 能ある鷹は爪を隠すという諺の示す通り、己の本当の力を敵組織にひた隠すこともスパイにとって重要なスキルである。時には威嚇や脅しによる重圧という意味で自分を大きく見せることはある。しかし、JKを諜報活動するスパイにとって効果的なのは第一印象を弱く見せることである。敵組織に潜り込み、自分が弱い存在であると相手の脳に刷り込み、相手が油断したその瞬間にスブリ……もうその毛も生えて無さそうなJCは僕に虜なのである。


 擬態と裏切り、赤ずきんと狼的なヤリ方がプロフェッショナルスパイダーマ、プロフェッショナルスパイマンに求められるプレイ…スキルなのである。一般的に敵対闇組織が『コイツ、チョロ松www』と刷り込みさせる存在に『毛が生えて無さそうなJK』『毛が生えて無さそうな赤サン』『ニンプ様』『エテ公』『パイパン老婆』『今日のわんこ』など様々いるが、一番この中で効果的に相手を騙せる存在とは。


「私はJK……パイパンJK……出来たてホヤホヤの美処女のJK……横四楓院絞子よ……ヨロシクするのよ……」


 横四楓院絞男の裏の顔、横四楓院絞子の爆誕なのだわ。

やはりJKはセーラー服にスカート姿がムラムラするとスラム街に棲息するおやぢが言っていたのよ。だから、今日の絞子もヤッテやったの。今時のJKはお肌にニキビとか以ての外、分厚い妖怪のような化粧で誤魔化さないとね。だから、今日の絞子もヤッテやったの。コンシーラー、ファンデーション、フェイスパウダー、チークとかのスキンケアも怠らないの。


「…………SHIBUYAとかHARAJUKUにこんな生命体(♀)が徘徊していたような気がするのよ」


 小っちゃな手鏡で自分の化粧で着飾ったスキンを拝みながら一人、呟く。年輩の老害が見たら心臓発作を起こすかもね。でも、いいの……今の私はパイパンJKだから。ウィッグも大事なのよ?女の子らしさを演出する道具の一つだから…。やっぱり、清純派JKと言ったら黒髪ロングよね……道端でゲーゲーヤッテたNISHINARIのお痔様に聞いたから大丈夫なのだわ。


「……。清純派とは程遠い派閥に属したわ」


 ウィッグを付けて再び小っちゃな手鏡で自分のスキンを拝みながら一人も呟く。清純派ではない…敢えて言うならば妖怪ぼっち派と言ったところかしら?でも、いいの……今の私はホウケイJKだから。うふふ、だから今日の絞子がこうやって女子トイレでお手洗いでお化粧直しをしていても不自然ではないの。


「ふぅ……スッキリしたわ」


 女子トイレでお顔も膀胱もスッキリした私はトイレを出て、廊下を出る。さて、身も心もスッキリしたところで今度は女子行為室もとい女子更衣室でスッキリしませう。


「待てえ! 貴様っ」

「ピャッ!?」


 な、何事!?ナニ事かしら!?

いきなり背後から私を呼び止める女子の声が聞こえてきたのよ。ま、まさか……私のナカの人(※横四楓院絞男)の存在がばれたのかしら。もしそうだとしたら私の背後にいるオトメイトはこの世から引退してもらうしかなさそうね。この私のスカートの裾に潜ませている黒塗りの彼……トカ男(イケメン銃)を使って、ね?


「貴様っ、そこの……ア●メ顔の貴様の事を言っている!」


 しょ、初対面の人に向かってアク●顔とかヒドすぎませんこと?誰かしら、そんな無礼者にはトカ男の射せ…鉛玉をそのお額にお喰らわせてやりますわ。


「うるさいですわね……ナニ事か、ヒッ!?」


 背後を振り向くと右手にリコーダーを、そして左手に釘の刺さった藁人形を、『恵はワシの嫁』と書かれたハチマキを額に装備した白装束を身に纏った女子が立っていました。目は血走り、けだもののようにハアハアと息を切らせています。そして、よくよく足下を観察してみますと何故か裸足でグラウンドの砂の汚れが付着しておりますわ。……えっ?な、ナニ……なんか怖っ。学園の清々しい朝とは対照的な世界観が別次元の方が出現しましたわ。あまりのあんまりな素材のご登場にびっくりし過ぎてチョロチョロとお漏らしてしまったですのよ。くっ、しかし私とてプロの女スパイ。たとえ、敵対組織に存在がばれ、拘束されて地上から数百メートルの誰の声も届かない部屋に監禁されて、いかなる極悪非道で羞恥的な拷問を受けようとも自分の組織は裏切りませんことよ……ゴックン。あらやだ、自分の最悪な未来を想像してたら興奮してフルお勃起してしまいましたの。


「はあはあ、お前っ………………可愛いな?」


 ぱふぱふ


 私のオパーイ(偽物)を服の上から愛撫し、耳元で優しく囁く変質者。私は異星界に転生してしまったのでせうか?


「ピャアァァァァ!? なっななななになななっ! ナナナにゃにをををを!?」

「ハアハア……何も怖がらなくてもいいぞ。私はお前の味方だ、つまりお前は私の味方だ」

「……こ、こないで」

「私はお前、お前は私。つまりは合体が約束されているセフレのような関係だな、ゴックン」


 やだあ。

ナニコノヒト……会話のキャッチボールがきつスギィ。こっちは緩やかな言葉のボール投げているのに全力投球であさっての方向に投げ返されているような。宇宙人と交信しているみたい。ていうか、私のナカの方が一生懸命『その神聖レズ魔からニゲロ!その女は危険だ!』と囁いているような気がしますわ。


「うっ…………」

「何故、私から距離をとるのだ? 大丈夫、大丈夫、大丈夫だよ……今は何もしないぞ」


 あ、後でナニかをするおつもり?


「…………」

「ひ、一目惚れなのだ。こんな優しくて切なくて儚い気持ちになったのは恵に次いでお前で二人目なんだ。お前をベッドの上で守ってあげたいと思った」

「ヒェッ……」

「そして。廊下で歩いているお前を見て私は何が何でもお前を屈辱的かつ羞恥的に滅茶苦茶にしたいと思った」


 い、言ってることが本当に滅茶苦茶ですわ。


「わっ私の名は黒岩魔切……腹黒の『黒』にお岩さんの『岩』、魔王の『魔』に切り裂きジャックの『切』と書く……。ど、どうだ? か、可愛い名前だろう? 気軽に『切り切り』と呼んでくれ」


 か、可愛さの欠片も見当たらない名前ですこと。


「…………」

「さ、さあ…だ、黙ってないで。お前の名前を教えてくれぇ」

「い、いやあ……でしゅう」

「そ、そうか……お前の名前は『佐藤秀美』か。ひ、秀美ぃ……あ、愛してるぞぉ」


 や、やだあ……。き、きち●イ。


「フッフー、今日はどんなことして佐藤くんをいぢろうかな~」


 頭が可笑しなオトメイトと対峙していると背後から鼻歌交じりで脳天気な女子の声が聞こえてきましたの。


「あ……き、切りねえ」

「えっ……アッ! め、恵ィ! ち、チガウ!! わ、私はチガウのだ!」

「な、何が違うの? じゃ、じゃあ、私は急いでるからこれで……」

「まっまままま待ってくれえ!! か、身体だけ! 身体だけの付き合いだったのだ! 身も心も全部お前だけのものなんだあああ、ウエエエン!!」


 恵と呼ばれたオトメイトは神聖レズ魔に縋り付かれておりますわ。な、何で…不倫を嫁に目撃された旦那みたいになってるのこの人。


「ギャアア! は、離して、離してよ切りねえ!! ヒィイイイイイイ!! ど、どこ触ってるんだよー!!」

「おいタワシや、おいたわしや……許してくれえ、許しておくれよおおおおおお」


 と、とてもじゃありませんが、この横四楓院絞子の手には負えませことよ。何だか怖くなった私は揉めているその場からこっそりと離脱したのですわ。

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