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横四楓院絞男はごっこ遊びがお好き

 スパイの極秘潜入において重要視されることは己の役割を完璧に演じ切ることである。弁護士、看護士、自宅警備員、詐欺師、魔法使い(30歳男児)、性騎士、魔道士……世の中にはありとあらゆる職業が存在するが、これら全て自分の役割を演じていると言えよう。極論ではあるが、人類皆全て俳優であり女優なのである。中でもスパイは一級の俳優あるいは女優であらねばならない。すべては本当の目的、己の素性をひた隠し、社会という集団の中で着々とおぼこい女子をストー……諜報する為である。現在の僕こと横四楓院絞男の役割は『善良で頭の切れてきょぬーのレースクイーンに慕われるKY(空気読める)肉体言語派スーパー金持ちイケメン生徒(と妄想する厨二病の提供でお送りいたしました)』である。だ、誰だ、今、余計なオプションを付け足したレースクイーンは……ちょっと、ベロチューしてやるからこっち来なさい。


 プロのスパイが一級の俳優ないしは女優であるとは言い換えればスパイは何者でもないし、何者でもあるということである。フン、つい詩的で哲学的な事をツイートしてしまったが、外来種にも分かるような言語で説明すると、スパイはどのような役でも完璧に演じ切るということである。……あれ?何か先刻も同じような事を言った気がするが、最初に巻き戻ったかしら?多分気のせいである。昔の逝かれたVHSのような行為をしている場合ではない。尊大な言い方をしたが、役を完璧に演じるとはエテ公が飛び級でマサチューセッツ工科大学に入学するのと同じくらい難易度が高いことは容易に想像できるだろう。


「だから僕はライトセ●バーを振る……」


 ぶいん、ぶぃいいん……。


 誰もいない早朝の教室で虚空に向かってラ●トセイバーを振る僕。遊びではない、これも役を完璧に演じる訓練なのである。


「コーホー……どうした、絞男。お前の力はこんなものかコーホー」


 ぶぉおん、ぶおおおん。


 一人一役でルーク・スカイ…横四楓院絞男役でライトセ●バーを振り続けるのは流石の僕も淋しい為、悪役の暗黒卿ダース・ベ●ダーを投入することにする。無論、CVは僕こと横四楓院絞男である。ていうか、一人二役である。監督:横四楓院絞男、脚本:横四楓院絞男、演出:横四楓院絞男、スポンサー:横四楓院絞男etc……つまりはこの教室は横四楓院絞男の独壇場なのである。


「くっ……! こ、これが、『帝国のMarch』と呼ばれた貴様のフォースの力というのかっ」

「コォーホォー……今のお前ではこのワシには勝てんよ。お前がジェダイでワシが帝国の犬である限りな……コーホー」


 果たして本家が本当にこんなことを言うのか映画に疎い僕にはさっぱりであるが、重要なのは内容・中身ではない。自分が思い描いている役を完璧に演じることである。はっきり言ってそれがスターウ●ーズである必要性は今のところ全く無いのであるが、絞男、やってやったです。本当はプリッキュアーとかえっちなお医者さんとえっちなJKとの一部始終を演じたかったのたが、流石の僕も『それはないわァ……』とドン引きしたので今回は断念したのである。


「くっくっそうう! だっだめだ! 俺ではとてもじゃないが歯が立たない! どっどぉすればいいんだあ……!」

「コォォ……ホォォ……ピンチだな、ルーク・スカ……横四楓院絞男よ。だが、ワシは一切手加減はせんよ……コッホ」


 いつの時代においても主人公のピンチというものは見るもの全てを奮い勃たせる魅力がある。……それにしても。思いの外、きついな。きついというのは体力的な意味である。しかし、そろそろクラスの連中がやって来るだろうし、命のやり取りをしていた主人公と敵が突然唐突に謎のラブコメ展開に陥るホモエンドで締めくくるとしよう……絞男だけに。


「グアアア! ぐ、ぐうっ、や、やめろ……! まいった……まいりましたっ……! 降参っ……! 絞男、降参ですっ……!」

「コーホー……何が、絞男高三です、だっ……! アラサー……! どこをどうみてもお前はアラサーではないかっ……! 終わっていない……! まだワシとお前の肉体言語は終わっていない……! ワシのライトセ●バーでお前をお仕置きしてやる……コーホー」

「広報がどうしたの、さっとうくん?」


 コーホー?!

一人二役でスパイウォーズを楽しんでいると突然僕の背後からレースクイーンヴォイスが!?(←幻聴)ば、ばかな!今回は念入りに教室のドアから窓の鍵まで内側からロックしたのに!もう諦めに似た面持ちで声の発信源に振り向く。


「可愛い子だと思った? 残念! とっても可愛いめぐみんさんでしたーにっしっし!」


 ドヤ顔で僕を指差すめぐみんさん。

くっ、ムカつく!その言葉が皮肉でなく本当なだけに、そして嫌みをまったく感じさせないと心の底からおもっ思っているじっ自分に!くっくやっ悔しいです!悲しいです!もう、めちゃくちゃにして……。


「……あ、あの、た、田中さん、は……ど、どうやって……」

「きーこーえーまーせーん」

「うっ、えぇっ……?」

「うえぇ、じゃない! 言っただろー! 私は『田中さん』じゃない! 久しぶりに私を呼んだと思ったらこいつー! かぶがぶっ」

「ギャアア! めぐっ……めぐみんっ、愛してるぜ!」

「……!? よ、よし、ゆ、許す。で、でも、『めぐみん、調教してほちい? ほちくない?』って私に言ってくれたら、もっと許す……」


 言えるかっ!?

ど、何処の異世界にそんな台詞で欲情する奴がいるんだよ!やっぱり頭が可笑しいんじゃないかこの女!?


「そ、それ……より! ど、どうやって……! この教室には、入っ、入っ」

「んー? 普通に職員室にある教室の鍵を使ってだよ?」


 あ。そっすか……くっ、何たる盲点か!

この横四楓院絞男を誑かすとは田中恵、あっぱれなり!


「それより、さっとうくんその光り輝く玩具の棒はなあに? もしかして、女の子にヒドいことするつもりなのかな?」


 す、するわけあるか!ど、どんな発想だ!


「ヒドいこと……しない、で」

「ンー……でも、何かそのイタズラスティック見たことあるんだよなー……ンー?」


 い、イタズラスティックとかいかがわしいこと言うな!

というか、被せるな、最後まで言わせろ!僕の台詞が襲われている少女みたいになっちゃったじゃないか!


「す、すた、スターウォー」

「あー! そうそうスターウォー●! んでもって、その玩具の棒がラヴライヴセイバーだよね! あー、思い出せてスッキリ」

「ら、ラヴライヴセイバーじゃなくてライトセイ」

「ウンウン、名探偵めぐみんは謎は全て解けました! ごっこ遊びをしたいお年頃のさっとうくん……でもそんな痴態は見られたくないさっとうくんは隠れてこそこそと一人でスター●ォーズごっこをしていたんですね!」


 ご、ごっこ遊びとか悲しいこと言うなぁ!?

でも、ほぼ当たっているよちっくしょう!ちっくしょう!しかし、ごっこ遊びは侵害だ!崇高なるスパイの訓練を馬鹿にする愚か者には……何もしないぞ!


「というわけで、そのラヴライヴセイバー貸してください」

「こ、断りゅ!」

「えー!? 何で断りゅんだよー! かせー!」

「いやでち!」

「無駄な抵抗はよせ! めぐみん様にその面白ステッキを貸すのだ!」

「ヒェー」


 ひとつの玩具ステッキを取り合い揉み合いになる僕とめぐみん。うーん?な、何をやっているんだろう僕……。


 プニッ


「あっ」

「ンッ…」


 揉み合いの最中。

ライトセイ●ーの先端がめぐみんさんのマシュマロに当たり、食い込んでしまう。ヒェー、次の展開が容易に想像できてまう!


「ぎ、ギャアア! い、イタズラ! ささささっとうくんにイタズラスティックでイタズラされました! イタズラされたぁ!」


 ぺちぺちペチペチぺちぺち


 アガガガがががが!

やめて!リアル往復ビンタはやめたげて!もっもぉ……ゼロよ!横四楓院氏のライフはゼロヨンダイバーよ!!

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