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横四楓院絞男はハニートラップがお好き

 世界はトラップに満ち溢れていると言っても過言ではない。トラップと言っても狩猟に用いる罠やサッカーボールを自由自在にコントロールする技術や『こんな可愛いおやぢが女の子のはずがない』……など様々ある。中でも代表的で基本的なゲリラ戦で用いられる『ブービートラップ』はスパイたる者、その危険性をランク付けとともに把握し、粛々と冷静に解除すべきである。


 危険度1『犬の糞』。

道端や獣道で常駐しているアレである。基本的にはトラップというよりも飼い主のイヤゲモノであるが、これもご立派なトラップである。靴の裏でうっかり踏んでしまった際のあの何ともいえないグミのような感触と絶望感は精神に異常を来すレベルである。下手すれば自害にまで至ると言われている恐ろしいトラップではあるが、対策としては足下に注意を払い、見つけた際はポリ袋に回収してクラスの気に入らないDQNの机の中にそそくさとしまっておこう。


 危険度2『バナナの皮、まきびし』。

バナナの皮はその辺で闊歩しているゴリラのポイ捨て、まきびしはその辺でたむろしているNINJAがばらまいたマーキングのようなものである。いずれにせよ共通点は『トラッパーが悪意を持って仕掛けている』ことだろう。バナナの皮は踏めば滑って転倒し、複雑骨折、全治一週間の大怪我になりかねないし、まきびしも……然り、である。対策としては足下に注意を払い、見つけた際はポリ袋に回収してクラスのいけ好かない相撲部屋の親方のような女子の靴箱に『天誅でござる!天誅でござる!』とか言いながらぶちまけよう。


 危険度3『クレイモア地雷、殺人ワイヤー』。

ここまでくると悪意とかイタズラとかそういうレベルでなく、明確な殺意を持って相手を殺しにかかっていると言えよう。外から送り込まれるスパイ対策として設置している敵国は少なくない。いや……僕のような凄腕の情強スパイの口を塞ぐ手段としてこれぐらいするのは寧ろ普通の事か。対策は……無い。地雷処理とか専門家に任せるのが一番安全で合理的であるが、ハッキリ言おう、面倒臭い。見つけた際はずら被るじゃなくてずらかるのが一番である。


 ここまでランク別にブービートラップについて語ってきたが一番大切な事はトラップを見逃さない集中力、トラップをトラップと見抜く洞察力・観察力、そしてそのトラップが自分の利に取り込めるか否かの認識力である。トラップに敢えてハマり、敵の注意をそちらに逸らすというやり方もある。またそのトラップを思わぬ形でやり返すやり方もある。えっ?思わぬ形って具体的に何だって?それを考えるのは貴方たちスパイの皆様です。兎に角、未知のトラップに遭遇しても動揺せず、落ち着いて対処し、むしろ自分がトラップになってやる(?)くらいの気概で臨むことがスパイとして常識中の常識なのである。


 朝。

学園の自分の靴箱を覗くと女物の下着が置いてありました。


「こっこここれこっこここれは、パパパパパパ! パッ! パパのパンティ」


 パパのパンティって何だよ?

オッオッおっおおおお落ち着け僕。そ、そうだ、もちつくだ僕。スパイは慌てない。こっここココこういうときは落ち着いて深呼吸である。


「スー……ハー……スー……ハァー……はぁ、良い匂い」


 ……。

ハッ?!い、いつの間に……な、何故、僕は目の前のパンティを口と鼻に押しつけているのだ!くっ、スパイたる者、このようなしょうもないハニートラップに引っ掛かるとは情けない!はあはあ、こ、こんな男心を乱心させるようなハレンチアイテムを使うなんて卑怯だぞ女スパイ!絶対にどこか草葉の陰から覗いて僕の崇高な姿にほくそ笑んでいるに違いない!


「くそお! どこにいるう女スパイ! いるなら出てきなさい! くんかくんか……この黒い下着が新品かお古か答えるんだ!」

「黒い下着がどしたの?」


 女スパイかっ!?

僕を騙し、弄んだ罰として家に持って帰って神棚に飾って念仏を唱えてやる!僕は興奮しながら背後に思い切り振り返る。


「あ……」

「やはろー! さっとうくん! 朝からお盛んだねえ、誰もいない靴箱でシャウトしちゃって。もしかして好きな娘の上履きをかいでたのかな?」

「…………」

「む、なんかそう考えると嫌な気持ちになったよ。嗅ぐなら私の上履きを嗅げ! 私の上履きを嗅ぐんだ!」


 い、いきなり登場していきなり何を訳の分からんことを言ってるんだこの頭がお花畑女は。くっ、冷静に考えたら女スパイ何ているわけないじゃないか……この学園に潜入しているスパイは僕だけです。それに、変とはいえめぐみんさんもご立派な女の子である。女物の下着を装備してます……何て知れたらオカズにしてると思われかねない!


「……さっさいなら」


 逃げるが勝ち、である。

戦利品(←黒の下着)も獲得したし、こんな足臭の漂う巣窟はおさらばである。


「こらー! 勝手にさいならするなー! 教室行くんでしょー私も一緒に行く!」


 ぐえ。

カッターシャツの襟元を掴まれ、引き留められる。な、ナニが、私も一緒にイク、だ!この下着でイクのは僕だけで十分だ!ちなみにイクのは警察署だ!拾得物だ!


 ポトッ。


「…………」

「あ、何か黒いの落ちたよ、さっとうくん」


 墜ちたのは僕の社会的地位です。

何なのこの雑なオチ。モウちょっと頑張ろうよ、僕。頑張ろ?僕。頑張れ?僕。


「あっ……そ、その、黒い下着は僕のじゃない、です」

「……? 黒い下着って、ナニ? これのこと?」


 めぐみんさんは不思議な顔して僕に見せつけるように黒い下着を目の前に突き出す。うっ、うあええあえああ゛あ゛!や、やめろ!幼気な赤ん坊みたいな顔で黒い下着を見せびらかすな!演技が下手なAVよりも興奮しちゃう!ちなみにAVはアニマルビデオだ!


「シュシュだよ、これ」


 ……は、はあ?

シュ、シュシュ?なんだそれは犬の名前か?


「…………」

「佐藤くん、シュシュ知らないの? 見てて、こうして、こう……ほら!」


 めぐみんさんは呆然とする僕の目の前で、シュシュなるアイテムを自分の髪を束にしてくくり付ける。あ……か、髪留め、か?ようやく謎アイテムの正しい使い方を理解した僕に向かってめぐみんさんは嫌らしい笑みを浮かべる。


「女の子のファッションアイテムだね~、私は髪短いからあんまり使わないけど……それにしても佐藤くんって、ンッフフッ」


 や、やめて。

鼻で笑わんといて!そ、その先は言わんといて!言わんといて!はむすたぁは心が寂しいと死んじゃうんだよ?死んじゃうんだよ……?


「シュシュを黒い下着と間違えちゃうムッツリ助平さんだったんだー」

「ほう、佐藤氏はシュシュを黒い下着と間違えて装備してしまいエレクトする雷属性を持つ人種だったか」


 何ですかこの図ったように登場するケミカル大ようぢょ先生は?あ、あと!変なステータス増えてる!ぼ、僕はまだ装備はしてない!ちょっと嗅いでしまっただけです!嗅いでちょっと宇宙を感じてしまっただけです!!


「あ、幼児先生だ、おはようございまーす。それより聞いてよ先生、佐藤くんって黒い下着が好きなんだよー」

「せめて、『幼女先生』って言ってくれないか田中氏? ほうほう、佐藤氏ほ黒い大人を感じさせる下着が大好物なのだな」

「そうです! さっとうくんは黒い下着が大好物です!」

「ふむ、佐藤氏は黒い下着が大好物である」


 や、やめろ!

復唱するな!何か格好悪い!あ、あと、幼女先生!な、ナニを熱心にメモ書きしてるの!?通知表のコメント欄に『佐藤氏は黒い下着が大好物で、とっても元気です(意味深)』とか書くつもりなの!?


「ち、ちがっ……ちがいます」

「白地のクマさん柄の方がいいのか?」


 い、色とか模様の問題ではない!


「佐藤君って水色と白のボーダー柄が好きそうだよね」


 何故、そんなピンポイントで具体的?


「まあ、佐藤大先生が水色と白色のボーダー柄が好きすぎて呼吸困難になってしまうとしても、だ。そろそろ、予鈴が鳴るぞ二人とも。さっさと教室に戻るといい」


 何だその奇病!?

天宮大先生は僕とめぐみんさんに手を振り、教室へ行くように促す。くっ、け、結局何しに来たんだあの先生?僕をからかいに来ただけか?な、何て幼女だ。いつか、生尻をペンペンしてやる。


「よっし、じゃ、行こ? 水色と白のボーダー柄の下着が好きな佐藤くん?」


 めぐみんさんは僕の手をギュッと握り、晴れやかな笑顔を向ける。ち、違う!い、いや、違わないけれども!いちご柄もカモンである。ところで、この黒いシュシュは誰のものなのだろう。と、取り敢えず、ショーケースに保存……じゃなくて、落とし物コーナーに持って行こう。

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