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横四楓院絞男はぶっといのがお好き

「おっはよー! 佐藤くん!」


 今日も今日とて、窓際の一番後ろの自分の席で諜報活動中のエージェントの僕こと横四楓院絞男は朝からいきなり田中恵とかいう馬鹿女に声を掛けられた。当然の如く、諜報員として諜報活動中の僕はそんなメスの当たり障りのないご挨拶に答えるはずもなく、引き続き窓の外から見えるグラウンドで黄色い悲鳴を上げる体操服を身に纏った淫らなメス共を監視していた。まったく、最近の女学生と来たら身体ばかり立派になりやがって……フフフ、まったく諜報活動が捗るぜ。


「…………」

「ありゃりゃ、またお得意のムシキングですか……ま、いーけど。よっこらせっと」


 僕に声を掛けてきた不届き者は僕の前の席の椅子に老婆のような声を出して座った。こら、僕の許可なく勝手に座るんじゃない。しかも、通常の座り方でなく、逆向きに、僕と正面から向き合う形で座っているところからこのメス、ここに暫く居座るつもりだな。


「ねーねー、何してんの何してんのー、ねーねーねー」


 早速である。目の前のメスは僕の愛くるしい赤ん坊のようなほっぺをツンツンと人差し指で突いてくる。うっとおしいぞこのメス豚がァ!などと罵声を飛ばしたい所なのだが、極秘任務中のスパイは沈黙が美学である。いつ何時どこから組織の敵が聞き耳立てているのか分からないこの状況でぺらぺらと一般バンビーとしゃべくる馬鹿なスパイはいない。僕の国ではこのようなセキセイインコを上位互換させたメス豚はすぐさま射殺処分なのだが、ここはニンジャの国ジャパンであるから今日のところは許してやろう。郷に入っては郷に従え、とはまさにこのことである。


「…………」

「いっしっし、そーやってまた私を無視する悪い佐藤くんにはお仕置きだね。ほれ」


グリッ


 目の前の艶やかな黒髪ショートの女子はいきなり鉛筆の先っちょを僕の鼻の孔に突っ込んだ。このメス、いきなり何てことをしやがる。しかし、ここで下手に声を出したり、反応してはいけない。この女の思う壺出し、ひょっとしたらこの女は組織の敵かもしれない。あくまで諜報員はクールに諜報活動するんだぜ。


「…………」

「あっれー? これでも反応しない、只の屍のようだ……佐藤くんはぶっといのがお好きなのかな?」


 何が、佐藤くんはぶっといのがお好きなのかな、だよ。

我慢しているんだよ、貴様の悪魔の所業行為を。それと何度も言うが僕の名前は佐藤くんではない。横四楓院絞男と言っている。今すぐ僕の懐に眠っているこのトカレフを奇声を上げながらぶっぱなしたい心境であるが、あくまで諜報員はクールに諜報活動するんだぜ。


「いよっし、じゃあ、佐藤くんには特別にもう一本進呈するね! やったね、このいやしん坊!」


 ちょっ……おまっ。

嬉々というよりも鬼気とするくらいの笑顔で僕の鼻の穴にさらに鉛筆の先っちょをぐいぐいと無理矢理突っ込む。おいっ、ちょっと待ちやがれもっと優しく挿入してください!いや、ナニを言っている、そうじゃないぞ、僕。この惨たらしい行為に文句の一つや二つ言うべきである。


「…………おい、止めろ」

「え? 『もうちょっと、ぶっといのが最高です?』……仕方ないなあ、佐藤くんはすこぶるえっちなんだから」


 おい。

誰かこの女を耳鼻科と脳内外科と神経内科と心療内科に連れていけ。


「…………」

「……。片方の鼻の穴に鉛筆二本挿されてクールな表情で黙って佇んでいる佐藤くんって……ちょっと、アレだよね」


 悪戯好きのメスは口を押えて、伏し目になる。

おい、ドン引くな、お前がやったんだろうが。いきなり冷静になるんじゃない。居た堪れなくなるだろ。どうせならそのままのノリで突っ走れ。まあ、これで良い……いや、良くはないが流石にこのテンションだともう悪戯をヤル気は起きないだろ。もう、そっとしておいておくれ……僕は窓の外で活動している女子を視姦……諜報するので必死なのだ。


ドブスッ。


 うっそだろ、おい。


「うんうん、やっぱり片方だけだと何か中途半端で可哀想だし、佐藤くんは両方装備している方がお似合いだよ!」


 もう片方の鼻の穴に異物の混入を感じたため意識をもう一度目の前に向けると、ぱあっと明るく笑顔で両手を合わせて何故か喜んでいるメスがそこにいた。おい、僕の鼻の穴は芸術アートじゃないぞ。可哀想なのは僕のプライドだ。畜生、昨日と同じく二度も同じ手は使いたくなかったが、このメスを何とか羞恥心の肉塊にしてやりたいのだ。この僕の御自慢のご立派なトカレフを駆使してな……。僕はトカレフを脅迫に用いて、目の前のメスを冷たい教室の床で全裸土下座させる光景を思い浮かべながら、スーツの懐からトカレf


ドブスッ。


 あ、まだやるの?


「いっしっし、鉛筆を四本挿された佐藤秀臣くんの今のお気持ちは!? どーぞ!!」


 何が嬉しいのか目の前のメスはリコーダーをマイク代わりに僕にインタビューする。この女、頭の中にカブトムシでも飼っているんじゃないのか?この女と一緒にこの場で空気を吸っていると思うと頭がおかしくなりそうだ。


「………………フッ、フンガガッ」

「『フンガガッ』! はい、頂きましたー! ぱちぱちぱちぱちー!」


 我慢していたが鼻呼吸が出来ず、苦しさについ鼻息で鉛筆がスポンと気持ち良く抜けてしまった。

……この女、いつか絶対に犯してやる。

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