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横四楓院絞男は回転寿司がお好き

『にぃに! くるくる寿司に行く! じゃないと暗殺する!』


 放課後。

くるくるパッパラぱぁの睦海にそうせかされた僕は駅前の某回転寿司のチェーン店にやって来た。『キョェエエッ、おだまりっ!』の一言と僕の黒くて力強くて逞しくてご立派なトカレフでぺちんぺんちんと往復ビンタ攻撃で睦海のうるさい上の口をチャックすることなど朝飯前である。しかし、悲しいかな。久しぶりにあの添加物のオンパレードのケミカルハラスメント寿司(偏見)を摂取したくなったのである。ああん、セレブ舌な僕のバカ。


「シース! シース! シース! シース!」


 睦海は乳輪がでかそうなガチムチ店員に案内されたテーブル席でコンベアに流れている寿司を横目で見ながら、駄々っ子のように好物を業界用語で連呼している。ハッキリ言おう、兵長、駆逐してもいいですか?醤油差しの先を睦海の鼻の穴に思いきり突き刺したい衝動に駆られる。畜生、周りのやけに微笑ましくて生暖かい視線がキッツいぞこりゃ。無言でいたら余計に気になるな。どうでもいい会話を睦海に投げかけて気にしないようにするしかないぞ。


「おい、睦海。『回転寿司』って、寿司が『回ってる』から『回転寿司』なんだよな……じゃあ、何でこの寿司は『自転』してないんだ? 寿司が『自転』しながらコンベアに流れていくのが真の『回転寿司』だと僕は思うのだが、如何でしょうか皆様?」

「何そのクソどうでも良い誰得な話。つまんない、つまんないよ、にぃに! そんな下痢便みたいな無駄話してないでいつものつまらなくない顔芸やってよ!」


 い、いつもの顔芸って何だ!?僕はそんなオモロ顔を披露した覚えはないぞ!あ、あと、仮にも年頃の女の子が下痢便とか言うな!失敬な!


 まあ、睦海がうきうきわくわく土器土器する気持ちも分からなくはない。最近の回転寿司というモノは色々な具材がシャリに乗ってコンベアで循環されるという。定番のマグロ、サーモン、光物からお下劣具材までその数は豊富である。季節によって投入される具材も変化が激しい。そんなコンベア上で動く様々な寿司をどれを食べようかなと試行錯誤しながら個性ある寿司を選抜していく行為はさながら対象の女子を諜報活動するあのドキドキ感と似ているものがあるな、フフフ。


「ん~~……おいひぃよ、ほっぺが落ちちゃいそうだよう」


 睦海はうっとりして幸せそうな顔して寿司をモクモクと頬張っている。

い、いつの間に……しかも皿に残っているアレは得ネタ大トロ(¥280)ではないか!こ、こいつ。僕の奢りだと思って、端から雑魚寿司に目もくれずイキナリ大物のネタに突撃しやがったな。ま、まあいいさ!ジャンボ旅客機のように心の広い兄である僕はこんな些細な行為は気にもしないのだ!


「ん~~っと、次は……『得ネタ大トロ(¥280)』にしーよおっと!」


 おい、こら、ふざけるな。

お、おっとっと。いつまでも睦海の寿司を喰い散らかしている姿を観察している場合ではないな。僕もナニかおいしそうなネタを拾って、喰い散らかすとしよう。よし、これなんかとてつもなくうまそうだ。


 ピッ『ミートボール軍艦』


「ギャワワー! にぃにの欲情魔! 信じらんない!」

「だ、誰が欲情魔だ!? あ、そうか……悪い悪い、『ガリ』が欲しかったんだな。そんなものすぐに湯呑みに入れてやるからそう興奮するなよ、どうどう」

「にぃにのバカァ!! そんな事言ってない!! そんなんだから『ピーナッツ顔の男』って噂されるんだよ!!」


 だ、誰だそんな噂を流している不届き者は!?

初めて聞いたぞ、そんな不名誉な称号!ま、まあいい、それより何で睦海はいきなり憤怒の権化になったのだ?今の今まで無遠慮に大トロを喰い散らかしていたくせに……メンヘラか?怒りポイントがまるで分らん。キレやすい若者ブームはとうに去ったのではなかったのだろうか?


「いや、待て。本当に何でお前は怒っているんだ睦海? あ、この僕のミートボール軍艦を食いたいのか? 何なら分けてやろうか?」

「そんなゴミみたいなネタは要らないよ! 何でそんなモノ食べてるの!」

「何でって……おいちいからどす」

「赤ちゃん言葉はやめてよ! 邪道だよ! そんなのは邪道なネタだよ! 邪道なネタを喰い散らかす邪道なにぃにのバカぁ!!」

「じゃ、邪道邪道言うな! うるさいなっ、ナニを喰い散らかそうが僕の勝手だろ! お前こそ、大トロみたいな高いもんばっかり喰いやがって……って、お前それもう十皿目かよ!! 打ち止め打ち止め!! そんな身体に悪いもんばっか喰ってるとしまいには肥えるぞ!!」

「こ、肥えないよ……肥えないモン!! にぃにのあほぅ! にぃにのショタコン!」

「だ、誰がショタコンだっ!? こんなところでトンデモないワードを口にするな!!」


 まったく!そんなしょうもない理由で怒ってたのか!

寿司くらい勝手に喰わせろ!回転寿司が好きとは言ったが、僕は実のところ生魚がオトンの水虫よりも大嫌いなのである。その為、必然的に生魚の類の寿司を避ける形となるのだが。そうなると僕の食べられるネタは変わり種が多くなる、そう、これは必然なのである!だから、いい歳こいた僕がミートボールとかウインナーとか幼児お得意の変わりネタを食べていても全然不思議ではないのだ!


 ピッ『ミートボール軍艦×3』


「にぃ~に~~! いい加減にしないと暗殺する!」


 何なんだよ!!


「んー。私はそういう変わり種のネタも好きだけれど、ローストビーフとかおいしいもんね、もぐもぐ」

「そうだよ、君はよく分かってる……本当に美味い寿司は鮮魚ネタではなく変わり種のす…シャァアア嗚呼あアアああ゛あ゛!?」


 今日も今日とて唐突にあかんネタがやってきおったで!!

思いの外、美味かったミートボール軍艦を頼んだ瞬間、今の今まで空席だった僕の隣にイキナリ、田中某が現れた!ど、どっから出現したんだよこの女。気配察知能力が高いスパイたる僕でも全然分かんなかったぞ。この不条理の塊みたいな輩に対抗する術を現状の僕ではもたない。こ、今度は定置網でも設置するべきか……?


「ヒッ……ウッ。や、やだ……ま、また来た」


 すっかり田中某に苦手意識を植え付けられてしまったのか、睦海は寿司を食う手を止め、頭を抱えてマナーモードのように震えている。睦海が静かになるのは良い事だが、それ以上にあかんネタが僕の人生コンベアに通せんぼしている限り、僕のスパイたる平穏は一生取り戻せない気がするぞ。


「もぐもぐ……ふっふっふ! 『お寿司か焼肉のどっちが良い?』って聞かれた時に『焼肉!』て即答する私だから下ネタのさっとうくんの肉々しいネタが食べたいって気持ちが分かるんだよ、えっへん!」


 口の周りにご飯粒を装着した田中某は僕に指差し、偉そうに胸を張って声高らかにそう口にする。だ、誰が下ネタやねん。キィイイ……何て憎々しい娘!何とかこの不純物を追っ払ってやりたいが、良い方法が思いつかない!こういう時に『俺の大好物はお前のオナネタなんだよおおおおおお!!』とか叫びながら目の前の女のパイ乙を揉みまくれる肉食系男子が羨ましくなる!滅びろ、草食系男子!


「だーかーらー……お兄ちゃんに悪い事言う睦海ちゃんは食べちゃうぞ~~! にっしっし!!」

「ぎっ、ぎぁああああ! くっくるなっ!! くるなくるなくるなくるな!! に、にぃに、タスケテ!!」

「いっしっし……に~げ~る~な~! だめだよ、ネタに手をつけず、シャリだけ食べる特殊性癖を持つ君のお兄ちゃんは薄情冷酷無視魔だから助けてくれないのだ……がぶっ」

「うわぁああああ!! また、かっかかかかんだ! かんだ! 今度は耳たぶ噛んだぁああああ!! うわぁあああああんにぃにのばかぁああああ!!」


 なんやねん、その性癖、こわいどす。

こうして、僕は今日も今日とて田中某にいぢくりいぢくられ振りまわされるのであった。……うっ、嬉しくなんかないんだからねっ。


「にぃにのうん●! ミートボールの恨みはらさでおくべきか……暗殺する!!」


 ズボゥッ(←醤油差しの先っちょが絞男君の鼻にズボる音 ※よゐこはこんな反社会的な行為はしちゃだめだゾ!)


 いった……何やねん、ミートボールの恨みって。鼻の穴の処女が醤油差しの先っちょに奪われてしもたやないかい!


 一時間後。


「お会計、合計で一万六千七百九十円となります」


 うっそやろ?(白目)

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