横四楓院絞男は白衣の天使がお好き
『貴方は何色がお好きですか?』
胸の谷間がたまらんレースクイーンにそうインタビューされたら僕はすかさずこう答えるだろう……白である、と。いや、この際別にレースクイーンじゃなくてメガネ巨乳美人秘書やSMの女王様でも良いとしてだ、問題はそこではない。僕のブランドカラーというかイメージカラーは白とは正反対の黒である。血を血で洗うような世界に常に身を置いている僕には白などと言う甘えたカラーは似合わないし、許されないのである。
精白の白。
恐らく殆どの人間は混じりけのない純粋な色と認識するだろうか。僕が最初に白から連想するものは巨乳のナースさんである。別名に白衣の天使と名の付く通り、その身は天使のように白で覆われている。『ぶっといお注射しちゃいますよ?』とか『貴方の汚い、コ コ に座薬入れときますね?』とか笑顔で指先でツンツンされた日には……ナーススキーな僕にはたまらんのである。待て、違うそうじゃないぞ僕。兎に角、何も汚れていない白とは汚れていないからこそ、俺色に染めてやるぜゲヘへで背徳的なですね……って違う違う違うッ言いたいのはそういうことじゃないぞ僕!はあはあ、とにかく汚染された僕の心を癒してくれるのは白衣の天使様なのである。視姦しているだけでもHPとMPが全回復である。まさに僕にとってナースさんはエリ●サーが服を着て歩いているような存在なのである。
しかし、である。
残念ながらこの学園には白衣の天使様は存在しない。敢えて近しい存在で言うならば、保健室に常駐している校医か。しかし、この学園の校医は河童とコブダイを足して二で割ったような老婆であるから僕のイメージする白衣の天使様とはハッキリ言って程遠い存在である。前に保健室でその妖怪校医が机の上でズルズルと盛大な音を立ててお茶漬けを喰い散らかす現場を見た時には殺意が芽生えたが、まあ要するに白衣を着ていれば何でもいいわけではないのだ。僕がその気になれば、今いる妖怪校医を無理矢理に引退させて僕好みのナースもとい校医を入れてやる事など造作もない事なのだが、極秘潜入している僕にとって騒ぎはあまり好ましくない。畜生、あんな妖怪校医だったら、その辺で歩いてるゴリラにナース服を着せて保健室に常駐させてもそうは変わらないと思うぞ。
「はあ……。僕の心の傷を癒してくれる白衣の天使様は現れないものだろうか」
昼休み。
昼のゴミのようなエサ(←くさや)を摂取し終えた僕はリノリウムの廊下を歩き保健室へと向かっている。今あの保健室の妖怪校医に鉢合わせると顔を拝んだだけでその場で吐き戻すかもしれない。しかし、保健室という場所は何者にも邪魔されない安らぎの空間なのである。ベッドがあるから横になって昼寝することが出来るし、何となく白衣の天使様にエンカウントして、耳掃除を太腿の上でやってくれそうな気がするのだ(妄想)。運が良ければ健康診断のお手伝いで美人の校医がやって来る時だってある。まあ、ホントごく稀なのだが。
「ふぁああ……あ。まあいい、あの妖怪校医はけったいなオブジェと認識しておけばそれほど邪魔でもない」
エサを喰い散らかした後は当然のように眠気がやって来る。
今は白衣の天使様の良い匂いがするふわふわベッドで横になり、白雪姫のように安らかに眠りにつきたいのである。あとは、僕の唇を奪ってくれる巨乳のレースクイーンがいれば最高なのだが。僕は保健室の扉を三回ノックし、すかさず扉に手をかけ中へと入る。
「ンッ……チュッ、ン、チュ」
「うぅっ、せ、先生……も、もういいでしょ?」
「ぷは……ナニを言っている田中氏、まだ全然血が止まっていないではないか。だめだ、やり直し」
「だ、だって……なんかこしょばいよ先生。こんなとこ、誰かに見られたら……えっ」
…………えーっと、昨夜のオカズは何だったかな。そうか!『ボクのオカズ妻はレースクイーンでした!』いかん、脳が一瞬フリーズを起こしてしまった。保健室に入ると真っ先に目に入ったのは、丸椅子に座っている女子生徒もとい田中某が右足の膝を天宮育とかいう変態化学教師にペロペロと舐められている衝撃的な光景であった。げ、幻覚かな……ごしごし、ごしごし……しかしいくら目を擦っても目の前の光景はナニも変わらない。それどころか、幻覚と思われた田中某と目と目が合ってしまった。
「ヤ、ヤア。コ、コンニチハ、バイバ~イ」
初音●クのような声を出して僕は背を向け保健室から出ようとする。何てことだ、この学園の保健室はいつからガチレズレスリング場になったのだろう。これではあのレズ魔も大喜びではないか。しまいには『おぅおぅ! お前は私のものだぁ恵ぃ!』とかシャウトしつつ、アヘ顔全裸(頭に謎のショーツ装着)で腰を振ってリンボーダンスを踊り始めるかもしれない。お、恐ろしい、もし薄暗い教室の中でそんな場面に出くわしたら僕は恐怖のあまり心臓麻痺を起こすかもしれない。
「まあ、待て。折角来たのだからお茶でもしてゆっくりしていくと良い」
やぁああああん!やだぁ、この人!
保健室からすぐさま逃げようとしたが、次の瞬間、扉にもたれ掛かっている何食わぬ顔をした天宮大先生がそこにいた。え、エスパー●美かこの人!?僕の退路は塞がれてしまった。しかし、こんな怪しげでお下劣なピンクサロンから一刻も早く逃げ出したい!
「い、いい……です。と、通して……そこを通してくだしゃい天宮先生ぇ……」
「君は知っているか? バファ●ンの半分は大人の優しさで出来ているのだぞ。金に目が眩んだ大人のな」
か、会話になってません先生!それにいやらしい事を言うな!訴えられるぞ!
「さ、佐藤くん! ちがうの! これは、そのっ……違うよ!」
田中某は珍しく慌てて駆け寄り、僕の腕を掴んで許しを請う奴隷のような瞳で見つめてくる。じゃ、じゃあその、乱暴されたような制服の乱れようは何なのですかね。髪まで何かちょっと乱れちゃってるし。乱れた服から覗くその肩が妙に色っぽいのですけれど、ごっくん。いや、生唾を飲み込んでいる場合じゃないぞ、僕。保健室という閉鎖空間でナニかイケないことがあったのは確かのだから、ごっくん。
「フフフ、佐藤氏。私の事は親しみを込めて『イクイク』と呼んでくれても構わないのだぞ」
天宮先生はウインクをしながら、クールな中にも悪戯っぽい笑みを浮かべて舌先をぺろりと出す。な、ナニが、イクイクだよ変態教師女め。お前を僕のトカレフでイクイクさせたろか?あ、ちょっとマテ、この間は『横四楓院氏』って呼んでいたのに……田中某の前だから気遣ってくれたのかってチガウ!ナニを言っているんだ僕の本当の名前は横四楓院絞男ではないか!あ、危ない危ない、危うく謎の意思に洗脳されるところであった。
「せ、先生! 誤解を解いてよ!」
「ああ……。気持ち良かったのだろう? 熱くなってきたのだな、先生も熱さでムラムラだ」
「ギャアー! 解いてない! 全然、誤解解けてないよ! むしろ誤解を招いているよ!」
両腕をバタバタと交通整理のおっさんのように振り、涙目になる田中某。美少女と似非幼女が暑さでムラムラ……僕もムラムラ……いや、僕もムラムラしてどうする!ええい、こんな煩悩は僕のトカレフで払ってやるやい!
「とまあ、冗談は置いておいてだ。田中氏が転んで膝を盛大に擦傷してな。保健室に連れて来たのは良いが、なにぶん校医が留守だったのでな。痛みでヨガっている田中氏を私が介抱して、上のお口でペロペロと汚れた雌犬のように傷口を舐めて味見していたといわけだ」
「な、なんか言い方がやらしくないかなあ先生!? 普通に止血していただけだよ!」
「フフ、今回は膝の止血をしたわけだが、次回は田中氏の排卵日に止血してやる事にしよう。上の口を存分に駆使してな」
「ギイャアアー! げ、下品! とっても下品だよ先生! 不潔! 不潔! そんことしたら病気になっちゃうよ!」
げ、下品とか不潔とかそんな簡単な言葉ではとても片付けられないと思うが。レズ魔と同じ穴の狢じゃないですか、ヤダー。こんな白衣の天使は絶対イヤダ。あっちのレズ魔は理性が飛んでる分ヤバいのはやばいが、こっちのレズ魔は理性があり冷静な分、ヤバさが半端ないな。真性だ、真性児、此処に現る……。ヤバさはカレーで言うとココ●チの十辛ぐらい。
「え……。じゃ、じゃあ……な、何で服が乱れてるんですか……」
「………………否定は、しない」
「否定してよ! 何その変な間! 違うよ! 本当に違うんだよ佐藤くん! 怪我して痛いのが耐えられなくてもがいててそれで髪も服も乱れちゃっただけだよ!」
「ネタバレしてしまうとはつまらん。女子はミステリアスがモテるというだろう?」
「そ、そんな嫌なミステリアスな女の子にはなりたくないよ!」
な、何だ、そんなしょうもない理由だったのか。
しかし、痛くて廊下の床でもがいている姿を思い浮かべるとシュールな光景だな。高校生とはいえ、痛さで暴れるとは何て危ない女なのだ。そうか、田中某は痛いのが苦手なのだな、痛いのが……って、何で僕はすぐそういうピンク系に思考が向かってしまうのだ。ええい、僕のトカレフよ、鎮まれ!
「で? 佐藤氏は何故、此処に来たのだ。よもや自分の精剣を自分で慰めに来たのではないだろうな?」
教職の立場でなんてことを口走るんだ、この女。
「それなら話が早い。ほら、其処のベッドで仰向けになって寝たまへ、私が介抱してやろう」
「ち、違う……違います。いやあの……僕は昼寝に……」
し、しまった。
つい目の前の変態教師に毒されて、正直に言ってしまった。こんなことを仮にも教師にカミングアウトしてしまったら僕はお尻ぺんぺんの刑にされてしまうのではないだろうか。
「なに昼寝だと……。そうか、それは済まない。じゃあ、邪魔者の私は失礼してここは若い二人にお任せしよう。では失礼する……アッヒャヒャヒャヒャヒャ!」
そう言いつつ、保健室から出て行く天宮大先生。
怖えぇ、最後のはどういう笑いなんだよ。ていうかあの人、本当に教師なのか?外面は教師でも中身は姨捨山から這い出てきた老婆じゃないか?混沌を体現したような人だ。
「…………」
「…………」
天宮先生が出て行った途端に静かになる保健室。
目の前には黙ってスカートを両手で掴み、俯いている田中某。な、何なんだよ、この変な空気は。ち、畜生、あの人が余計な事を言うから妙に意識してしまったではないか。な、何か、喋れよ田中某。間が持たない!た、耐えられんぞこの空気。仕方ない、今日はお昼寝は我慢してさっさとここから出て行こう。何か心臓がバクバクして寝れそうにない。
「じゃ、じゃあ……で、出て行くから」
「…………うん。ごめんね」
田中某は頬を染めて、僕に謝る。
な、何かしおらしいですけれどこの娘。な、何で?しかもよく見ると何か涙目になってるし。い、居た堪れない。ああ、畜生!スパイがこんな、こんな!僕は半ばヤケクソになって保健室の扉を思い切り開いた。
「き、キキきき……きっさまぁ……よくも私の恵を……ナカセタナァアアア……!」
扉を開いた次の瞬間。
保健室の目の前に鬼のような顔をした邪鬼が仁王立ちしていました。
鬼なんだから鬼のような顔って何か表現がオカシイなとか、どうでもいいことを考えながら僕は脳天に向かって振り下ろされるバッドを見つめていた。




