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八話 眩しい朝

 朝が来た。


 カーテンを閉めずに寝てしまった部屋の中に朝日が差し込んできた。


「眩しい・・・」


 眩しい光に思わず目が覚めた。目を開けた瞬間、不快な物が目に入った。鏡の中にいる何重にもなっている自分だ。やっぱり無理だ。浩輝の中に嫌悪感が出てきた。やはり、遊園地のアトラクションのビックリハウスのようなハラハラ、ワクワク、ドキドキ感は全くなく、吐き気を催すぐらいの気持ち悪さしか残っていない。

 そんなリビングから浩輝は逃げるように出た。そして、身支度とかも何もせず、廊下へと出た。


「うえっ」


 昨日、散々慣れようと言ってきたのだが、一瞬見ただけで耐えられなかった。

 浩輝はこうして、嫌な気分で新しい一日を迎えた。


・・・・


 少し気分を落ち着かせた後、浩輝はまず携帯で時間を確認した。


「六時半か・・・」


 まだ早朝の時間帯であった。起きている人は少ないだろう。有海も多分、昨日の疲れで寝ているだろう。インターホンで起こすのは悪いし、ずっと廊下で誰かを待つのもどうかと思った浩輝は休めるスペースのあるキッチンのある部屋に行った。

 食べ物があるのはキッチンの部屋しかないので誰かが先にいるんではないかと少し期待していたのだが誰もいなかった。 浩輝は自立してから一人暮らしをして慣れたと思っていたが今は少し寂しさを感じる。昨日、ずっと有海と行動していたからかもしれない。


「飯でも食うか」


 浩輝は寂しさを紛らわせるために、料理でもしようかと思い、キッチンに立った。まず、何の食材があるかを確認するために冷蔵庫だと思われる通常より大きな箱を開けてみた。案の定、冷蔵庫であり、様々な食材が入っていた。そのほとんどの食材は日本の一般家庭によく使われている食材から高級食材であったが、一部だけ見たことのない食材があった。ピンクの水玉模様のとげとげとした果物とか、いかにも腐っていそうな匂いがする肉など日本にはないのがあった。


「困ったなー」


 冷蔵庫には冷凍食品がなかった。そう、冷蔵庫には食材しかなかった。すでに加工されたものがなかった。


 浩輝は簡単な冷凍食品を料理しようと思っていたので困っていた。浩輝が作れるものといったら、冷凍食品とシリアル、カップラーメンぐらいであった。一人暮らしになって料理しようと最初は思っていたが、高校が始まり、明日からやろうと何度も思うようになり今日までいたった恭真である。とりあえず、朝飯を作るのを諦め、冷蔵庫の中にあった牛乳だと思われる白い飲み物を食器棚にあったコップに入れ、ちびりと少しだけ口に含んだ。それが牛乳だと分かると勢いよく喉に通した。


「ふー」


 浩輝の腹に少しだけ満たされた。しかし中途半端に満たされた浩輝の腹は食べ物を欲するようになった。


「牛乳があったことっだし、コーフレークどこにあるかだな」


 浩輝は冷蔵庫以外のキッチン内にある戸棚を全て調べたが食べ物と言えるものはなかった。入っていたものは様々な種類の調理器具と調味料であった。

 そんな中、浩輝が気になったのが一つの包丁だと思わしきものであった。その思わしきものは刃渡りが今の浩輝の身長の半分ぐらいあり、とてもただの食べ物を切るものではなかった。見た目は刀にしか見えない。人を簡単に殺せそうな。


「何に使うんだろうか」 


 浩輝はそれを手に取り長々とみていると。ガチャっと誰かが入ってくる音がした。そして、足音がこちらへと近づいてきた。


 西方煌真であった。


「うわっ」


 西方は包丁を持っている恭真を見て驚いたのか、奇声を上げ、尻もちをついた。


「あ。すいません。驚かせてしまって」


 浩輝は驚いている西方を見て、すぐに包丁を元あった場所に戻した。


「いや、こっちこそ。変な声を上げてしまったね。っで、なんで浩輝君はマグロ包丁を持っていたんだい?」


と体制を立て直しながら言った。


「簡単に食べれそうなのを探していら・・・。これ、マグロ包丁ってなんですか?」

「マグロを解体するための道具だよ。マグロの解体ショーとかでみたことない?」


 テレビでマグロの解体ショーを見たことはあったが、特に興味があったからではなかったので、記憶がおぼろげであった。恭真は「あるような、ないような」と曖昧な返事をした。


「すごいよ。ここのキッチンは様々な調理道具があるんだよ。私でも見たことのないものがあってね・・・」


 この後、西方は子供のように目を輝かしなが ら、調理道具から始まり、調味料や食材の話を永遠と浩輝は聞かされる羽目になった。


 浩輝は適当に返事を返し、西方の思う存分に話をさせた。


「あと、これもすごいんだよ。このフルーツ。ってあれ?浩輝君、私が作りおいてた料理を知らないかい?昨日、作り置きしたのがなくなっているのですが?」


 西方は冷蔵庫の中身を見て不自然なことに気づいた

 浩輝は見ていない。開けたときには料理と言えるようなものはなかった。


「俺食べてませんよ」

「何でだろう?ほかの人が食べたのかな?ん?昨日全て使った食べ物が何であるんだ?」

「俺に聞かれてもわかりませんよ。見たときには、こうなっていましたよ。俺が飲んだのは牛乳だけです」

「それは、おかしいな」


 西方は思いつめた表情で顎を触った。


「また作ればいいんではないんですか?」

「それもそうなんだが・・・。まーいいか。浩輝君、何か食べたいものはある?作るけど」

「いいんですか?」

「いいよ。昨日はあれだけいいことがあったんだからね。本当にありがとうね」


 昨日?


 浩輝は一瞬何に対してお礼を言っているのかわからなかった。


「谷崎君を呼んできてくれたことだよ」

「あー、いや、いいですよ。あの時、おいしい料理をいただいたわけだし」

「そうかい?いやー。実に気分がいいよ。今なら、何でも作れそうだよ。ハンバーグ?カレー?パスタ?」


 西方の上機嫌な顔を見て、谷崎は何歳なのか、浩輝は気になった。西方の喜びようから、二十歳を超えているのはわかる。


 もしかしたら、西方よりも年を食っているのかもしれない。あんな人間でも年は食う。

 浩輝は谷崎みたいな大人にはなりたくはないと自分の将来に誓う。


「日本の朝飯だと思えるものでお願いします」

「了解」


 西方はそう言って、朝飯の支度に取り掛かった。


 浩輝は邪魔をしないように、西方の領域から抜け出し、昨日と同じ席に座った。


「浩輝君、そういえば愛未ちゃんはどうしたんだい?」

「朝早かったので、寝かせときました」

「そうかい。愛未ちゃんて、ここで目覚めた時に泣きわめいていた子だろう。もしかしたら、君みたいな変身能力みたいに何らかの能力があるんじゃないかな」

「ありますけど……」

「どういう能力何だい?」


 西方は子供のように目を輝かせた。


 有海は愛優や谷崎等の前で何故か能力言いづらそうにしていた。多分、隠したかったのだろう。理由が何でも、隠していることなら言わない方がいいだろうと浩輝はそう思った。


「やっぱりそういうのは本人に聞いた方がいいと思いますよ」

「そうだよね。後で聞いてみるよ。二人が能力があるんなら、私にも何らかの能力があってもおかしくないと思って参考にどういう系の能力があるか、聞いてみたかったんだよね」


 浩輝から下準備をしている西方の背中しか見えなかったがそれほど有海の能力を聞きたかったのか、肩を落としていた。


「西方さんて、もしかして能力系バトル漫画とか好きだったりします?」

「好きだよ。大好きさ。もし、自分が時を止められたり、絶対服従の能力を持っていたらって毎日妄想するぐらい大好きだよ」


と浩輝の方を見て、目を輝かせながら言ったまだ幼い感じが抜けていない少年は三十四歳である。大人になっても変わらない少年心。


「そうなんですか。幻滅しますよ」


 浩輝は有海と自分の能力を発動したから断言できる。有海の能力は記憶を見るために泣き叫ぶぐらいの痛みが生じる。浩輝の能力も変身する際に焼ける痛みが体全体から襲ってくる。デメリットが大きすぎる。この状況で能力や記憶を見る能力なんか何の意味もない。


 痛いだけだ。


「そうかい?あるだけでもいいと思うんだけどな。能力が分からない側から言うと」

「確かに、自分もそっちの立場だったらそう言うかもしれませんね」

「私にも能力があるのかな。そしたらどういう能力何だろうな。楽しみだな」


 西方はウキウキと体を弾ませながら調理をしている。


「痛みさえなかったら、喜んだのになー」


 浩輝は西方には聞こえない程度に呟いた。


 ドアが開く音がした。新たな人が来たみたいだ。ガシャガシャと金属音を発しながらこちらの方へ向かってきた。


「おっと、誰かが来たみたいだね」


と西方が言うと、キッチンから廊下に顔を出した。浩輝も誰が来たのか気になり、廊下を見た。愛優と陽介がいた。


「おはようございます」


 愛優が西方に一礼。西方も「おはよう」と返した。愛優の隣にた陽介は何も言わずに一礼した。


「なんだよ。その恰好」


 浩輝は会った開口あいさつではなく、出たのはその言葉であった。


 愛優と陽介の服は以前の汚れている服とは違っていた。陽介は普通の服であったのだが、問題は愛優の方であった。愛優の服は服ではない。西洋で着られていたであろう全身を覆い隠す金属でできている甲冑であった。さすがに顔を隠すヘルメットはしていなかったので、愛優の顔は見えた。


「やあ、浩輝、来てたのか。どうだ僕の恰好。ほれぼれするだろう」


 愛優は悦に浸った顔で恭真に見せた。自慢をしたいのだろうか、しかし、その甲冑には、似合わないものが腰にぶら下げてあった。


「何で竹刀なんだ?」


 愛優の腰にぶら下げてあったのは、西洋を思わせる剣ではなく、剣道の剣である竹刀であった。


「僕にも竹刀がこの甲冑に対して合わないのはわかる。僕だってこの鎧を見つけた時、金属でできた剣があると思ったからね。それを見なかったことにしてまずはかっこいいと言ってくれ」


 隣にいる陽介は顔を横に振りながらため息を吐く。


 愛優は陽介の前でも同じように言ったのだろう。それも、言うまで言い続けたのだろう。なんとなく察してしまう。


「かっこいいと思うぞ」


 浩輝は心にもないことばで答えた。


「そうか。それは良かった」


 愛優は満足した顔をしてから、西方の方を向いた。


「西方さん、弁当三つお願いします」


 愛優は西方に弁当を注文した。


「え?愛優君と陽介君、ここで食べていかないのかい?」

「夢香ちゃんが部屋でお腹空いて待っているので、一人で食べさせるのも何かなーと思ったので」

「夢香ちゃんがここに来るというのはダメなの?」

「今、忙しいんですよね。漫画を読むのに」

「漫画?」


恭真は気になって聞いてみた。


「そう、漫画。自分の部屋にあったのをずっと読んでいるよ」

「何の意味が?」

「さあ?わかんない。けど、本人が言うには思い返しているとか言ってたけど」

「どういう漫画なんだ?」

「うーん。姫と執事の話だったよ。題名は聞いたことなかったな。三十巻ぐらい出ていたのに。浩輝は知っているか?『私と執事』っていう漫画なのだが」

「知らないな」


三十巻も出ているのだから、それなりに人気がある漫画なのだろうが浩輝には聞いたことがない。


「だよな。陽も知らないって言っているんだけど。あっ、西方さんは知ってますか?」

「ありそうな題名だけど聞いたことがないよ」

「そうですか。うーーん、実在しない漫画なのかー?はーあ、この世界ってとことん不思議だなー」


 愛優が言ったことに、この場にいる三人はそれぞれ頷いた。


 この世界には不可解な点が多すぎる。能力のこと、今いる城内のこと、ターロットのこと。特にターロットは何をさせたいのかが全く理解ができない。自分たちに衣食住を与えて、意味のない能力で何をすればいいのか?ターロットが言っていた知りたい感情とはどういうことなのか?今日の九時になれば全てが分かるのだろうか?


「わからないなー」


浩輝は不意に声に出てしまった。


「そうだな」「ああ」「ん」


と浩輝以外の三人も同じように頷いた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「よし、できたよ。ほい、弁当三つ。」

「おー。いい匂い。陽、夢香ちゃんのところへ行くぞ。」


と愛優は言い、隣にいる陽介は頷いた。


「じゃーな、九時に会おう。浩輝。西方さん、弁当ありがとうございます」


 愛優は浩輝と西方に別々の口調で言い、隣にいる陽介は何も言わず、礼するだけであった。


 ガシャガシャと金属音を鳴らしながら、ここを出ていった。


「浩輝くんの分はもうすぐできるけど、愛未ちゃんはどうする?」


 浩輝は携帯で時間を確認した。


 七時半を過ぎていた。


「今から、有海さんを起こしに行ってきてから、ここで食べます」


 浩輝は言って、廊下を出て、有海の部屋のインターフォンを押した。

 時間をそんなに待たずに扉が開いた。


「おはよう」


有海はまだ眠いのか目をこすっている。


「おはよう。よく眠れたか?」

「うん、ぐっすりと」


 そう言い、大きなあくびをした。


「まだ、寝足りないようだな」

「そうかも」

「朝飯、西方さんが作ってくれたけど食べるか?それともまだ寝てるか?」

「食べる」

「よし、行こう」


 まだ、足取りが不安定の有海の手を握り、西方がいるキッチンのある部屋までリードした。


・・・・・・・・・・・・


 有海の目を瞑らせてから扉を開いた。


「ただいま戻りました」

「おっと、早いね。愛未ちゃんは眠そうだね」


 有海は浩輝の手を握ったまま、目を瞑っていてウトウトしていたのでそう言われても仕方がない。


「今日もありがとうございます」


 有海は眠そうながらも感謝の言葉を口にした。


「いいよいいよ、料理は私の趣味だし、ささ、席に座って、料理はもうできてるから」

「はい」


 いつものキッチンバーの席ではない。西方も食べるということなので四人テーブルに座ることにした。浩輝は有海の向かい側に座った。


「おいしそう」


 有海は口を漏らした。確かにおいしそうである。匂いでそうわかる。


 今日の食事は白飯と鮭とみそ汁にほうれん草のお浸しといった本格的な和の食事であった。


「それじゃー、いただきます」


 西方の合図に浩輝と有海もいただきますをし、食べた。


 西方は自分の料理に一つ一つに採点を付けながら食べていた。十点満点なのか、八か九の点数が付けられていた。

 浩輝にとっては全ておいしかったので、すべて十点満点であった。


「どうだい?おいしいかい?」

「おいしいです」

「うんうん」

「そりゃー良かった」


 昨日と変わらない返事。見守ってくれるような安心感がある暖かい声であった。


 食事を食べ終わると八時になった。後、一時間で最初に目覚めた円卓のある部屋に集まらないといけない三人は八時半まで食後のお茶を飲んでから、向かった。無意識に有海の手を握って。


 向かっている途中に通る赤い部屋で谷崎と遭遇した。昨日みたいな気分が割るそうな顔をしていなかった。


「西方さん、昨日はありがとうございました」


谷崎は急に西方の方へ歩み、深く礼をした。


「いいよ。別に」

「な、何をしたんですか?」


 浩輝は威勢がいい谷崎が直にお礼を言うことに驚いた。昨日、浩輝も礼を言われたことはあるが、それとは違う尊敬の眼差しで西方に言っている感じであった。


「昨日、ちょっとね」

「ああ?お前には関係ねーことだよ。それより、西方さん、今日も一杯やりますか?」


 酒の誘いだろうか、指を輪っかにして杯を持っているかのように西方さんに向けた。


「いいね」


 西方も谷崎にこたえるように指を輪っかにして、空想の杯が乾杯した。


 西方と谷崎は昨日、酒を飲んで仲良くなったらしい。ここまで、谷崎が従順にさせてしまうとは西方恐るべし。


「じゃあ、これが終わったらすぐ飲みましょうか?」

「いやー、それは難しいかな。昼食作らないといけないし」

「そんなの別にいいじゃないすか。あいつらだって、いい年なんですから」

「んー。浩輝くんに愛未ちゃん、昼は弁当でいいかな?」

「別に作らないで大丈夫ですよ。西方さんにはいろいろしてもらったのに何も返してなくてまたしてもらうのも悪いですし」

「いや、弁当だけは作らせてもらうよ。君たちにはまだ親が必要な年だろ。僕が親の代わりになるから、何でも私に頼ってもいいよ」


 西方の大人の懐の大きさを感じた。


 浩輝たちは谷崎を連れて、円卓のある部屋へと入った。


 早く来すぎたせいか、まだ全員来ていなかった。赤は愛優達三人が来てなく、黒の方は昨日会った智也と知らない人が三人だけであった。その三人は智也の周りに集合していた。


「あっ。浩輝さんに愛未さん。おはようございます」


 智也はこちらに気付いて、挨拶してきた。浩輝と有海は挨拶を返した。


「おい、智也、お前の知り合いか?」


 智也の隣にいたすごい特殊なファッションセンスをしている人がチラチラとこちらの方を見てきた。


浩輝は恐れ入った。


 ドクロマークが入っているパーカーにやけにチャックが多いジーパン、そしてジーパンにぶら下がるジャラジャラしている鎖、留め具が多くしてあるブーツ、おまけに首に巻かれているチョーカーと指だしグローブで厨二病に完全に侵されてしまった服装であった。


そこまでの服装は着たことはないが厨二病を患った者にとっては見るだけで心が痛かった。


「うん」

「あの二人すごいオーラを身に纏っているぞ。気を付けた方がいいぞ。智也」


 痛い奴が浩輝と有海に指を指し言ってきた。


 「お前が言うか」って言ってしまいたくなった。すると変わりに


「どこがだよ。お前の方がオーラ半端ないだろ」


 ぼそっと耳を澄ませれば聞こえるくらいの声で言った。その人は全身黒色ぶかぶかジャージを着ていて、ズボンの丈を何回もまくってあった。


「そうだよ、あはは、面白い。厨二病くん、面白すぎ、お腹が捩れちゃうよ」


 黒の中の唯一一人の女は笑っていた。髪は薄い桃色のロングで、黒いふんわり膝丈スカートにこげ茶色のニットのセーターを着ていた。女らしい服装で自分に似合った服装を着ていた。


「ふっふっふ、仕方ないことだ。俺のアビリティーは常時発動しているからな、オーラがやばいのは当たり前だ」


厨二病は右腕を掲げ、決め顔で言った。


「すごいね。マサは。僕なんてまだ自分が何の能力が備わっているかわからないよ」


 智也は目を輝かせながら言った。厨二病の言ったことをまるで信じているようであった。


「え?お、おう。お前とは違って俺には才能があるからな」


 厨二病は予想してないことが返ってきたので、戸惑いながらも答える。

 その厨二病の戸惑う表情を見て女は腹を抱えながら笑っていた。ジャージの男はジャージの襟の部分で口を隠し、フルフルと震えていた。笑いをこらえているようだった。

 この人達は昨日、智也が言っていた友達だろうか、傍から見てもとても良い関係を築きあげていることが分かる。

 その光景を見ていると浩輝は健と陽のことを思い出してしまう。もし、ここにいたら、こんな状況でも笑いあっていたんだろうなと思った。


「浩君」


 手を握っている有海が浩輝に声をかけてきた。


「何?」

「あなたには私がいる」


 有海は浩輝の手を強く握った。


「そうだよな」


 浩輝も有海の手を握り返した。

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