七話 大人
今回も短いです
外から廊下に戻った浩輝と有海はまだ調べてない残りの扉、二番と四番の間にある扉を開けると
食欲をそそられるいい匂いと、グツグツと煮込む音がしてきて、浩輝の腹が無意識に鳴った。
有海にその音を聞かれクスクスと笑われた。
「おいしそうなにおいがするね?浩君。誰かが料理しているのかもね」
「そうだな。恵んでくれるといいな」
と、浩輝は有海の方を向き、瞼を閉じていることを確認してから奥に進んでみると、大きなキッチンと赤を主としたオシャレなイスとテーブルがあった。レストランが経営されてても可笑しくないぐらい適した部屋であった。
「おや、君たち」
大きな鍋をお玉でゆっくり混ぜている男の人が声をかけてきた。その男はオレンジ色の髪に眼鏡をかけていて、穏やかそうな顔をしていた。身なりは黒いTシャツに半ズボンを着ていた。浩輝と同じように、サイズがブカブカで合っていなかった。
「君たちは何歳?」
その男は唐突に年齢を聞いてきた。
「十六ですけど……」
「私も十六」
浩輝と有海は何が何だかわからないまま、年齢を答えたが、聞いた本人は肩を落とした。
「はー。何で、みんな十代なんだ・・・」
男は溜息を吐いて、どんよりと落ち込んだ。
この人に年齢は聞かないでおこうと恭真は思った。
「あなたは何歳なんですか?」
浩輝が思ったこととは裏腹に有海は躊躇なく聞いた。まただと恭真は呟いた。
「ふっふっふ。36だよ。お嬢ちゃん・・・」
男は不気味な笑みをこぼしながら言った。それは耐えているようにも見えた。
「へー、結構なお年ですね」
男は心にグサッと来たようで、胸を抑えた。クリーンヒットだった。
「お嬢ちゃんは酷な人だねー」
言われた有海は頭を傾けて、はてなマークを出している。
それを見た男は笑った。
「大丈夫ですよ。今の姿だったら、十四、五歳にしか見えませんから」
浩輝は有海のフォローしといた。
「そっちのお嬢ちゃんは私に気を使ってくれるたのかい。ありがとうね」
にこやかな笑顔で恭真の方へ向いた。同じ身長ぐらいなのだが、大きく見えた。これが大人の貫禄というものを実感した。
「あ、俺、一応、男です」
浩輝はこのままずるずるいくと、女に間違えられたままになりそうだったので否定した。
「あー、そういえばそうだったね。忘れてたよ。あの変身してた子だね。あれすごかったね。どうやったの?」
「いや、自分でもよく分かってないんです。けど、出来たとしても、もうしたくないですね。あんな痛みは・・・」
浩輝はあの時の痛みを思い出し、体が震えた。
「そうだったかい。それは悪いことを聞いたねー。あ、お腹減っただろう。食べるかい?」
気を利かせてくれたのか。それ以上聞いてこなかった。この男の人は人柄がいい人だと思えた。
「いいんですか?」
「いいよ。いいよ。ほら、こっちに座って」
西方にキッチン接しているカウンターのところを勧められたのでに恭真と愛未はそこに座った。
「おっと、そういえば、名前を言ってなかったね。私の名前は西方 煌真。君たちは?」
「菊池 浩輝です」
「有海 愛未です」
「浩輝くんに愛未さんね。」
西方は浩輝と有海の名前を聞いた後、背を向き、調理し始めた。切った野菜とベーコンをフライパンで焼き、香ばしいにおいが立ち込めた。
「でも、良かったよ。君たちが来てくれて、本当は愛優君と陽介君に呼んでもらおうと思ってたんだけど、言うのを忘れててね」
西方はフライパンで具材を混ぜながら、言った。
「愛優と陽介もここに来たんですか?」
「来たよ。私が出した料理をすぐに完食して、食べさせたい人がいるって言って、弁当持っていってしまったよ。愛優君と陽介君、そして夢香さんだっけ?皆、高校生でがっかりだったよ」
西方はまたどんよりとした。
「へー、そうなんですか」
浩輝はまた年齢を気にしすぎて流石に呆れていた。
「だから、残りの一人にかけようと思っているんだよ」
「へーそうなんですか」
浩輝は受け流すように言った。ふーんと有海も興味がないらしかった。
そのあとも年齢の話は続いた。年を取るとねーとか、若い子を見るとねーとか言っていたけど、ほとんど耳に入らなかった。
愛優と陽助がすぐ完食した理由が分かった気がした。
「よーし、できた」
と西方が言ったとき、ようやく話が終わると浩輝は思った。
出てきたのはパンとシチューと野菜炒めであった。
「いただきます」
浩輝と有海は言って食べた。腹が空いていたので、口に吸いこまれているようにどんどん口に入っていった。西方が作った料理はとてもおいしく、店に出てもおかしくないレベルであった。数分で食べ終わってしまった。食事中は西方は年の話はしないで、浩輝と有海のことをジーとみていた。少し気になったが、それよりも飯を食った。
有海は目を開けて机に置かれている料理だけを見て、食べていた。
「ふぅ」
浩輝は食べ終わった後の満腹感に浸っていた。
「どうだった?おいしかっただろう?」
「はい、おいしかったです」
「私、こんなにおいしいシチュー初めて食べたかも」
「それは良かった。良かった」
西方はとても満足している表情であった。
「このまま、自分の部屋へ戻るだろう。残りの一人を呼んできてくれないかな?」
これを聞いた時、弁当でいいんではないかと思ってしまったが、ここへ連れてくる理由は年齢を聞くためだろう。浩輝は食事を作ってくれたお礼も兼ねて協力することにした。
「はい、わかりました」
浩輝と有海はご馳走様を言って、この部屋を後にし、谷崎を呼びに行った。
谷崎の部屋の前に着いたのはいいのだが、どう呼ぶのかが問題であった。
横にあるスイッチはまだインターホンと確定していないので、押すか躊躇っていた。
「どうする?有海さん」
「押すしかないよ。この部屋一個ずつ防音だったから声をここから出しても意味ないし」
有海は経験したように話す。
「なんか、悪いことをしたな」
「いや、いいよ。いいよ。結果出てきてくれたし、それよりどうする?押す?押すんだったら」
「押すしかないんだろ」
浩輝は有海の言葉を最後まで聞かずにインターホンを押した。時間差でピンポーンと音が鳴った。
「っもう。浩君、押すんだったら、押すよ?とか掛け声してよ。ちょっと怖かったじゃない」
有海は浩輝の背中をぽこぽこ叩いた。
「まーまー。大丈夫だったからいいじゃないか」
浩輝は有海を落ち着かせているとき、谷崎の部屋が少し開いた。
「うるせーな」
谷崎は少し開いた扉から顔をのぞかせた。
「ん?お前らか。なんだよ?俺に何か用があんのか?」
谷崎は真っ青で誰が見ても気分が悪そうな顔をしていた。
「お腹空いているだろ?隣の部屋で西方さんが料理作ってるから呼びに来たんだよ」
「西方って誰だ?」
「四番の人。とても優しい人だったぞ」
「そうか。わかった。少ししたら行く。ありがとうな」
谷崎はそう言って、自分の部屋の中へ入っていった。
「ねー。浩君、さっき話してた人って谷崎さん?」
と言って目を開けた。
浩輝と谷崎が話している際、有海は目を閉じていたので、会話だけ聞いてそう思ったらしい。確かに、恭真もあの悪い意味で威勢がいい谷崎があんなに落ち込むとは思うわなかった。
「まさか、もう一人の谷崎か。ってのはないと思うぞ。なんか落ち込んでいるみたいだったけど」
「へー」
有海は腰を曲げ低い姿勢で下から恭真の目を見た。
「言う必要あったか?」
「浩君の口から聞きたかったんだもん」
有海は頬に指を当てながら甘えた声で言った。
「何がだもんだ。どうせ、能力のこと忘れてたんだろ?」
浩輝はぶりっこという猫を被る存在が嫌いであったが、可愛いと思ってしまった。
男はこうやって騙されてしまうのかと実体験をした。
「それより、今かわいいと思ったでしょ?」
浩輝の質問を無視し、浩輝が思ってしまったことを聞いてきた。
「あ、ああ、俺ってこんなにかわいいんだなって思ってしまったよ」
動揺しながらも可愛いという言葉を本人に言うのに抵抗がある浩輝は違うことを口走った。
「はー。ヒロ君少しは自分が思っていることをそのまま言った方がいいと思うんだけど」
浩輝は有海に言われた言葉が心にズきっとひびが入った。
「そうだな。俺って結構陰湿だなって言われるからな。気を付けないとな」
浩輝は思ったことのないことを口にした。
そんな浩輝の目を見ている有海は「もう、また」と小声で言っていたが聞こえてないふりをした。
「なー、時間も時間だし、そろそろ部屋に戻んないか?」
浩輝はターロットから渡された携帯を開き、時計の時間を確かめたら、十時を過ぎていた。体の弛みと眠気があるにはあるのだが、浩輝は有海を気遣う体で話す。
「大丈夫なの?ヒロ君」
「前にも言ったけど慣れなくちゃいけないしな」
と、有海の方を見て、微笑んで自分の部屋へと入った。
廊下は外が暗くなっているのと同じに真っ暗になっていた。浩輝は廊下のあかりを付け、廊下で寝る身支度をした。リビングにあるベットに入る際、電気を消し、鏡を見ないようにし、一日を明かした。
これだとこの部屋に慣れない一方で状況が同じままなのは恭真にもわかっているがどうしても避けることしかできなかった。自分の意志がそうさせた。




