六話 無邪気
短いで。すいません
番号がないドアは3つある。一つは廊下と最初に倒れていた部屋をつなぐ赤い部屋である。残りの二つはまだ調べていない。浩輝と有海はそのドアの先を調べようとしていた。
「この扉からにするか?」
番号のないドアは、と6番と10番の間と2番と4番の間にある。
浩輝と有海はまず6番と10番の間のドアから開けることした。
開けると15メートルくらいしかない短い通路に出た。その奥には扉があった。
浩輝と有海は別段その通路には何もなかったので、そのまま通り過ぎすぐに次の扉を開けた。
開けると目に写ったのは今まで見たことのない幻想的な空間が広がっていた。
空には大きな月みたいなのと星みたいなのが出ていて、地には気持ちよさそうな芝生と月の光で輝いている湖があった。湖の中央には大きな木があり、光輝く蛍みたいなのが大きな木の周りを飛んでいた。
「きれいだな...」
そんな美しい光景を見て、浩輝は魅了され、無意識に言葉が出た。
「そうだね」
と愛美が答えた後、二人はしばらくその景色を眺めていた。
すると、景色の一部だったものが動いたのを浩輝は見た。
気持ちよさそうな芝生に寝ころんでいた人であった。
その人もこっちに気付いたらしく声をかけてきた。
「あれ?君たちは?」
声をかけてきた人は倒れていた13人の中にいた人であった。浩輝はこの人が先に部屋に行ってしまった人だと思った。
その人は目を細めて、こちらをジーと見て「おーーー」と言ってこちらに駆け足で近づいてきた。
「有海さん、目を閉じて」
浩輝は有海が人と目を合わせないよう忠告するように言った。
「うん」
有海は浩輝の言ったことに答え、目を閉じ、浩輝の服の袖を掴んだ。
駆け足で近づいてくる人は何かに躓いて転んでいた。えへへと笑みをこぼしながら起き上がり、浩輝の方へ来た。
「僕の名前 遠野 智也って言います。智也とか呼びやすい名前で読んでください。やっぱり、あなたたちは、ターロットに歯向かった人ですよね、いやー、僕あの時心配してたんですよ」
智也は、屈託ない笑顔で言った。「それより、大丈夫ですか?怪我は?」
「大丈夫ですよ。これくらい、唾を塗っとけば治りますよ」
智也はえへへと怪我をしているのに喜んでいた。浩輝は智也の行動、言い方に幼さを感じさせられた。
「名前はなんですか?」
「菊池浩輝です。こっちは有海愛未です」
有海は「よろしくね」と言って、目を瞑りながらも智也に向かって手を振った。
「浩輝さんに愛未さんですね。そんな固い言葉いいですよ。多分、僕の方が年が低いと思いますので」
恭真は何歳か気になったが、聞く気にはなれなかった。自分で言うぐらいに年齢が低いと言うのだから、中学生ぐらいだろうか。こんなに幼いのに死んでしまう何て可愛そうだと同情して相手に不快な気持ちにさせると思ったからだ。
「え?何歳なの?」
何も考えてなさそうな有海は恭真の思っていることとは違く、あどけない笑顔で智也に聞いた。
「13です」
「あ。本当だ。私達より、3歳下だね」
「ってことは、16歳なんですか?」
「そうよ」
「高校生かー。いいなー」
「へー。やっぱり、憧れるもんだよね。私も早く高校生になりたいと思ってた時期あったから」
と有海がうんうんと頷きながら言った。
「まぁ、なれなかったんですけどね」
智也と有海は息があったのか会話が弾んでいた。だが、一瞬で智也の言葉で重い空気になった。
「そう・・・だよね」
有海は同情してしまったのか、悲しい顔をしていた。
「あれ、どうしたんですか?」
それを見ても、重い空気にさせた張本人の智也は気づいてなく、変わらない笑顔で聞いた。
「え?それは、ね。浩君?」
有海は自分では言いたくないのか浩輝にパスした。
「それはなー・・・」
浩輝は言いたくなかった。同情されることは浩輝も一番嫌いなことであったからだ。
浩輝が言い淀んでいると智也が「あ」と納得したような声を出した。
「もしかして、僕のことをかわいそうだとか思ってます?残念ですけど、僕は死んでから、今一番楽しいですよ。ようやく僕の人生が始まったんだって、今一番生きているという実感がします。まあ、確かに元の世界にも少しだけ心のこりがありますけど、後悔などしてませんから」
智也はそう言いながら、屈伸、前屈などのストレッチをしていた。
「そうだよね。この世界いいよね。ここだってとてもきれいだし、部屋もきれいだしね」
愛未は言い繕った。
「そうですよね。まあ、部屋は豪華すぎて、あんまし、なれませんね」
「へー。そうなんだ?どんな部屋だったの?」
「部屋が広くて、シャンデリアがあって、なんか金でできた王様が座るような椅子とかキラキラしたものがたくさんあって目が疲れる部屋でしたね」
「何だよ。格差ありすぎだろ。俺の部屋なんか。住んでた貧祖な部屋に気味悪くした物が置かれただけなのに」
浩輝は智也の部屋のことを聞いてがっかりし、自分の部屋がひどいことが分かった。
「そうなんですよね。なんか自分の部屋だけ特別みたいなんですよね。友達にもお前の部屋ずりーとか言われました」
「そうなのか、え?もしかして、有海さんの部屋もそうなの?」
自分の部屋だけがあんな感じなのかと思い、有海に聞いてみた。
「私も浩君と同じ感じかな。住んでた部屋だった」
「何ででしょうね」
「ターロットの気分なんじゃないか?」
「それだったら、僕はラッキーだったのかな」
「そうなんじゃないか。良かったな」
浩輝は智也の頭を撫でようと思ったが頭の位置が高かったので肩を叩いた。
「はい、あの~もし良かったら」
智也は突然もじもじし始め、顔がほんのりと赤く染まっていた。誰かに告白するかのようであった。
「僕と友達になってくれませんか」
「もちろん。いいよー。智也君。よろしくね」
「よろしく」
こうして、浩輝と有海は遠野 智也と友達になった。
「あ、やっば。そろそろ行かないと」
智也は自分のケータイを見て言った。
「どうした?」
「いや、ちょっと、友達と約束あるのを忘れてて行かないと」
智也は「それじゃ、失礼します」と言って、浩輝と有海が入った扉と対面してあったも片方の扉に入っていた。
智也は終始笑顔で話していた。本当にこの世界に来て喜んでいるようだった。浩輝には理解できなかったことであった。元の世界の方がいいに決まっている。それが当たり前だと思っていた。だが、智也と会って、皆が皆、帰りたいとは思っていない。智也と同じような人はほかにもいるのかもしれない。と浩輝は思い直した。
「行儀がいい子だったね」
有海は目を開けて言った。
「そうだなって。それより、あっちの扉入っていったということは、智也って黒だったのか?ていうか、ここって赤と黒が繋がっている場所なのか」
「そうなんじゃないかな」
浩輝の目を見て言った。
「てっきり、まだあっていなかった赤の人だと思ったのだが」
「あ。私も同じ、お隣さんだと思った」
「あー、そうか、有海さんにとってお隣か」
有海は五番の部屋なので、隣には浩輝とまだあっていない四番目の人がいる。
「そう、だからどういう人なのか気になるんだよね」
「いい人だといいな。もうちょっとこの景色を見てからもう一つの部屋に行くか?」
「そうだね」
といい、二人は少しの間、景色を見た後、ここを後にした。




