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買い物。

ゆっくり更新していきます。ああ、作者の勉強が足りないものだから、語彙が少ない。


 街の喧騒とは素晴らしいものだ。

 活気に溢れる商人たちの気合いに満ちた声は、こちらの心の顔をあげさせ、暗示のように耳に残る。

 混沌とした往来の激しい通りに流れる馥郁とした香りは、鼻を貫通し、脳に足取りを軽くさせる。

 店先に陳列した品々の中に一際目を引くものがあれば、目を釘付けにし、予定にない頭をひねる問題となる。

 さらには目当てのものを我先にと奪い合うかのように競り合う者もいれば、罵倒し合うもの、果ては取っ組み合う者までいる。

 それに嬉しそうな顔を浮かべる商人、苦笑いする商人、大笑いしながら煽る道行く人。

 種々様々だが、特筆すべきはやはり笑顔だろう。

 行き交う人でさえも笑顔なのだ。

 地球では見なかったものだ。いや、見れなかったものだった。

 地球はつまらなかった、と心底思わされるというものだ。


 ーーーーーーーーーー


 はい、やって来ました市場です。みんな元気があっていいですな。俺としては、全くいらんものを買う気はないんだけどね。

 いや、お金は〈無限宝物収納庫〉のおかげでたくさんあんだよ?ただ、俺が欲しいのって市場じゃなくて、専門店で入手したいものが主だからさ。てことで、レッツゴー!


「そこの嬢ちゃん!肉の串焼き、一本100リルだがいらねえか?」


「買います!10本ください‼︎」


「おお!嬢ちゃんの年齢でアイテムボックスを操作できるとは珍しいな。なら、一本サービスだ。」


「ありがとう!おじさん!」


「おっ、気前が良いお嬢ちゃんだねえ?こっちの焼きたてのパンも一個100リルだけど如何かな?」


「うん!それも10個ください!」


「はっはっは。そうかいそうかい。なら、こっちも一個サービスだ。」


「ありがとう!おばさん!」


「元気の良いお嬢ーー。


 ーーーーーーーーーー


 何故だ!何故こうなった!何も買わないはずが、ちゃっかり爆買いしてる!金は払ってるから問題ないと言っても幾ら何でも買いすぎた!

 …

 ……

 ………まあ、一個だけ残して全部食べちゃいましたけどね。お金が全部同じだったし、お金が無限だったこともあって買いすぎちゃいましたね。てへっ。

 …そんなことより、〈最適化〉フィルターのやつこういう時にはかからないんだな。ちょこっとイラっときたよ。

 うん、でだ。残した一個は〈無限宝物収納庫〉に入れてみようと思う。これってアイテムならいいなずなんだけど、食料とかいけんのかね?ってわけでやってみんの。

 よしこい、〈無限宝物収納庫〉オープン。


 虚空に浮かんでくる漆黒の棺。開いた先の闇に触れ、自分の買ったものを収納する。


【肉の串焼きinフレン、焼きたてのパンinフレンetc…を無限複製し、貯蔵している。アイテムコンプリートまでは程遠い。】


 わあお、できちゃった。もうこのスキルに死角とかないんじゃねえの?現段階ではまだ、〈無限宝物収納庫〉の鎖が言ってたような奴には会わないだろうからいいけどね。


 まあ良かろう、目的地にはついたことだし。我輩の服はどのようなものになるのかなー。

 と店に入ると、店内は明るくてセンスのいい装飾をしてある。当たりではないのだろうか?だが、店の中には客が居らず、また店員もいない。


「ごめんくださーい。誰かいませんか〜?」


「後ろだ。」


 なんだって!

 勢いよく振り返りそのものを直視すると、目が急に言うことを聞かなくなった。なぜか?それは実に簡単だ。


「あら、かんわいいお嬢さんじゃな〜い♡」


 オカマだ。非常にオカマだ。究極的なまでにオカマだった。

 そうだ、わかっていた。テンプレでは服屋にはモンスターがいる、と。だが、これまでにへし折られてきたテンプレが、服屋にはモンスターなどいない、と叫んでいた。

 そうだ、テンプレたちも同類というのは増やしたかったのだ。

 だが、たった今いらんフラグを見事に回収してしまった。

 そして、目を閉じていたところに抱きついて来る妖怪。


「な、何をする!」


「この感触は男の娘ね!珍しいわ!」


 別に男と断定できる場所を握られたわけではない。ただ、感触として同胞になれそうな雰囲気を持っていることをキャッチしたのだろう。だがな、俺はオカマになる気はない‼︎


「離せ!離せ、ケダモノ!」


「もうひどい子ねえ。そんな子にはお仕置きが必要ねえ!」


「な、何をーーー。


 ーーーーーーーーーー


「何だ?ここは?」


 目を開けると天井だ。ただ、白い。それに匂ってくる消毒液のにおいがここを病院だと教えてくれているようだ。

 よくは分からないが、俺はベッドで寝ていたようだ。それにこ

 こには見覚えがある。


「ここは地球?」


 窓は開けられていて、爽やかな風が顔を撫ぜる。燦々とさす太陽は懐かしさを覚えるが、それ以上にこの病院の人気のなさに薄ら寒さを覚える。


「何故、また地球に?」


 そう思い周辺に何かないか探そうとベッドから降りようとして、違和感とも言える不思議な感覚に囚われる。


「これは…。」


 そこには、地球の時の体があった。細く、吹けば飛ぶような体。だが、食べ物をあまり食べてなかった生前の体はミイラのようだ。そのため、他の人が抱えるぶんには軽い体であっても、自分からしてみれば筋肉が全くついていないので酷く重い。難儀なものだ。


 見回していると、新聞が目に入る。その新聞を取ってみて驚愕する。見出しは、


【◯◯病院殺人事件容疑者、佐藤聖夜(イブ)遺体発見‼︎】


 とあった。


「そうか…やっぱし俺はーー。


 ーーーーーーーーーー


「うう、何だってんだよ。」


「気づいたかしら?ごめんなさいね、あんまりに萌え萌えキュンキュンだったから強く抱きしめすぎちゃったみたい。」


 また急に意識が暗転したと思ったら、目をさますと今度は異世界だ。そこには化け物がいる。オカマというのはときに、魔王をはるかに上回る凶悪性をみせるようだ。

 こっちの世界でも死んでたまるかよ!


 ばっと飛び起きて動こうとするが、動き勝手が朝と違う。今の方が何倍もいい。不自然なのは股がスースーすることだ。いや、不自然と言い出したら全てが不自然なのだが、今は関係ない。なぜこんなにも股がスースーするのかと思い下を向くと、

 …

 ……

 ………そりゃそうだよ馬鹿野郎!


「貴様!我にこのような服を着せるなぞ万死に値するぞ!」


「あら、可愛いじゃない。どこからどう見ても可愛い女の子にしか見えないわよ!」


 今一度俺の姿を確認しよう。

 顔立ちは、目は純粋なブルーで大きいが顔のバランスを崩すことのない大きさだ。髪は空色で、地球ではあり得ない髪色だったため、髪は気に入っていた。それはもう、俺は切りたくなかったし、親父様も、『え、切っちゃうの?切らないよね。安心したよ。切っちゃったら世のハゲが君に呪詛を送りつけてくるから。』とか。鼻は、高めでシャープで外人さんみたいだなって感じ。口は少しぷっくりとしていて、親父様曰く、『唇には気をつけろ!舐めまわそうとしてくる聖職者のデブとか領主のクソ息子とかが居やがる。』だそう。なんかすごい気迫だったからやけに頭に焼きついている。総合的に見るとまだ男の子でいいが、7歳くらいにはなって男と言い張るのは無理になる顔立ち。

 あんまり刺激しないで欲しかったよ…


「黙れ!先の言は訂正する。寝ている我に女物の服を着せるなんぞ、貴様の命を一万積もうが許される問題ではない!よって、貴様は拷問にかけて地獄を見せてから殺してやる!」


 …〈最適化〉フィルターのせいで言っちまったが、心臓が1万個積んであるってキモいな。


「あーら、強がっちゃって、可愛いわね。」


「なんだと!まだ我を愚弄する気か!」


 と、その言葉の後になぜか空気を変えるオカマ。

 俺はこのとき悟った、


(ああ、〈無限宝物収納庫〉の鎖が言ってた奴ってこいつじゃね?)


 と。


「あなた、自分がどうやって着替えたのかわからないの?」


「は、何です?」


 内心ビビりまくって真っ白になっていた頭の中にそんな質問が響く。急いで答えを出さなければゲームオーバーだと思って、考えるもなかなか思考できない。〈最適化〉フィルターもこんな時にはちゃっかりきれてやがる。


「私が着替えさせた、ってあなたさっき言ってたわよね。」


 そう言われればそうだ。ていうか本当に言ってたじゃないか。

 いや、あれは〈最適化〉フィルターのせいで言ったことで私が考えて言ったことではーー。


「それで、スカートにも着替えさせた。ここまで言えばわかるでしょう?」


「くっ!」


 勢いよく手を股間に当ててオカマから隠す。


「可愛い体だったわ♡大きさから見て5歳と推理したけど、いかがかしら?」


「くそったれーー!」


 急に叫ぶが、俺の悲痛な叫びは店内で虚しく消えていった。


 ーーーーーーーーーー


「それで、ここにある服5着と靴に靴下 、ちょっとカッコつけるには無理だと思われるローブとか他多数ね?お金は大丈夫なの?」


「それは問題ない。それとここで両替のようなことはできないか?」


 弱味を握られた俺は渋々着せ替え人形にされること1時間。意外にもここのオカマはすごく手際がいい。さらには、一瞬で着替えた姿を堪能してしまう驚異の目力!まあいって仕舞えば、俺が恥ずかしいと感じる前には既に違う服に切り替わっていた、ということだ。それにこのオカマ、用意していた分の着替えを見終わると、3分くらい店のカウンター奥に行くんだ。その時間の間はミシンの音とか聞こえて来るんだ。そんで戻ってくるときには新しい服を25着ほど携えてやってくる。

 …多分、3分の間に作ったんだと思うんだ。なんか執念って恐ろしいね。


 でまあ1時間たって解放されてからは、店に来た目的である服を選んだのだが、オカマが選ぶのを手伝ってくれたおかげで酷く助かった。まあ本当は、ちょいちょい女物の服持ってきてうざかったけどね。

 そのうち話してていい人だとわかったとたんに、〈最適化〉フィルター始動。違和感しかないと思ったんだが、オカマは大人だった。『うふふ、子どもの背伸びってのは可愛いわ♡』だと。こういう反応は嬉しいんだけど、なんか気持ち悪かった。まあ、そんなこともそこそこに、俺たちは仲良くなったわけだ。


「できないこともないけど…ここは最高で銀板が2枚あるだけよ?」


「ああ、それでも構わん。ほら、小銀貨110枚だ。早く大銀貨と銀板をよこせ。」


「もう、女を急かすのは男として良くないわよ。」


「え、どこに女の方がいらっしゃるのでしょう?」


「傍目八目ね。素敵な女性は意外とすぐそばにいるってことよ。」


 バッチーンとウィンクしてくるが、無視する。


「はい、じゃあこれが大銀貨と銀板ね。それとこの服の支払いだけど、45000リルよ。」


「そんなものか?」


「いいえ、あなたにはいいもの見せてもらったから、サービスしてるわ。」


「はっはっは、あの仕打ちでサービス程度とはなかなか黒い店だな。」


 いや、本当に。心からそう思うよ。

 その後は、支払いを済ませてから一時くだらない話をして店を出た。


「うん、なかなかいい仕立てじゃないか。」


 買った服を着て歩いているが、実に良いものだ。言っちゃあなんだが、アシュリーが持ってきてくれたさっきまで着ていた服よりも圧倒的にこちらの方が良い。

 それに、なぜかファッションセンスが俺にはあった!なんとびっくり!だけど、ジャージを愛用〜。

 そうだ、ジャージがあったんだよ。初めて気づいたのは、目を開いたとき。イケメンジャージがそこに居たから。『なんであんの?』って聞いたら、親父様は、『お父さんパワーはすごいんだよ〜。』とまっっっったく意味のわからないことを言ってた。まあでも、家では寝るとき以外ずっとジャージだったからね。なんか、『子供にジャージって萌えるねえ〜。』って言ってた奴が居て、何度脱ごうと思ったか定かではないけど。


 次に向かうは武器屋だ。

 やっと武器が手に入るのだよ、諸君。これからは、私の時代の到来だ!

 そんなふうに気持ちはフワフワしていて、足取り軽く武器屋まで歩いていった。

 …

 ……

 よっしゃ、着いたぞ武器屋。

 発進だーー!


「すいませーnーー。」


「子供が来るところじゃないよ。ほらお金あげるからおかえり。」


 店に入ると、優しげな笑顔を浮かべそういう男がいた。変態かと思った。店員だった。ていうかこっちの言葉最後まで聞けよ。

 …

 ……

 ………


「そもそも貴様、我を一体いつから子供だと錯覚していた?」


「なんだと…!」


「だがしかし、我もここで真の姿を解放するのはまずい。故に、ここはひとつこの店の最高の武具を売るということで手を打たないか?」


「わかった。君には負けたよ。売ろう、この店、最高の武具を。だけどその前に君の名前を聞かせてくれないか?」


「我はシリウスだ。早速、武具を見せてもらおうかな?」


「ええ、いいですよ。ちょっと失礼しますね。」


 と、奥に行く青年。

 あ、すいません。メンドくさかったんで意識シャットアウトしてましたんで、何話してたか全くわかんないです。いつの間にか武具って呼んじゃってますね。


【おはようございます、マスター。】


 あ、お前。二時間って言ってたのにだいぶ過ぎてるじゃないかー。


【あーもう、起きぬけにうるせえなあ。】


 いや、俺は君のマスター、OK?


【あ、寝てて思い出したんですけどね。説明してなかった点がいくつかありましたよね。】


 スルーか。ていうか、【寝てて思い出す】ってどうやんの?


【ちっちゃいことは気にしない。そんなんだから、女顔に育つんだよ。】


 関係ないと思う。


【で、そうなんですけどね。まず、ステータスの素質ですけどね。】


 ああ、あのバツのやつか。あれって俺の素質なしってこと?


【いやいや、むしろありすぎてヤバイ感じですね。】


 どういうことよ?


【ランクがアルファベットで表されるって考えると、Xはどう考えても“エックス”でしょう。】


 えー、でもAの方が強かったじゃん。なんでXが強いんだよ?


【まあ、Xの方がかっこいいからですね。】


 嘘だー。なんか隠してんだろー。


【いえ、何も隠してませんよ?】


 本当は?


【情報開示の条件を満たしていません。そういうことです。】


 なんだと…!ここでも俺の弱さが露見するのか!


【ああ、弱さといえば何ですけど。】


 なんだよ?


【あの魂魄眼ってありましたよね?あれ、ステータスを見れるんですから、もうちょい有効活用していきましょうよ。】


 あー、あれね。だってさ、〈最適化〉が目立ちすぎて〈無限宝物収納庫〉は別にしても、〈魂魄眼〉と〈武具支配〉が全く目立たないじゃないか。


【まあ、そうですが使っていきましょう。実際問題、ステータスってどんなものにもあるんですよ?例えば、金魚とか、牛の糞とか、果ては宇宙の暗黒物質まで。全てに存在するんです。】


 えっ、てことはだけど、俺がわからなかった料理の名前とか料理の素材とか〈魂魄眼〉使えば分かったの?


【そうですね。ここは武器屋ですから、一旦使ってみたらどうですか?】


 それもそうだな。じゃ、〈魂魄眼〉発動。


 おお、凄い。あの門番の時は慌てていたから、気付かなかったが、なんか良く見えるし文字が浮かんでくるぞ。

 例えば天井だと、


【汚い木の天井

 材質 木

 レア度 ゴミ

 フレンの街の裏通りに存在する武具屋、ハンターブレイクの天井。店長兼鍛治師のドワーフが鍛治しか頭にないため、汚い。掃除しろよ、汚ねえ。ゴミ。】


 …〈魂魄眼〉が私情を挟むってどういうことよ?


【はい。それは〈最適化〉が〈魂魄眼〉には有効であったためにそんな感じに仕上がりました。】


 いや、仕上がりましたじゃあなくね?だいたい、天井がゴミってのもおかしい。


【まあまあ、落ち着いて。天井が汚いからって武器まで汚いとかはないですから、武器が来るのを待ちましょう。】


 まあそうだーー。


「馬鹿たれが!お前のような奴が認めた程度でこの店最高の武具をやれるか!」


「いえ、ガバン師匠。彼はこれを持たせるにたる人物だ!」


「なら、そいつをわしに見して見い。」


「はい、こっちです。」


 と小さいが重厚な筋肉を身に蓄えた褐色のおっさんが出てきた。

 ふーん、これがドワーフかあ、と人以外の種族を見られたことに感慨に浸っていると、ドワーフと目が合った瞬間、そのドワーフは驚き、尻餅をついてしまった。


「どうしました?師匠。」


「お、お主は…?」


 と、青年には取り合わずに俺にそう訊いてくる。俺は答える。


「我はシリウスだ。どうした?ドワーフよ。我は貴様の武具を持つにたらないようなものか?」


「いや、そうではないが、お主には悪いがわしの最高の武器は売れん。」


「なんだと?」


「勘違いするな。わしが作る武具なんぞをお主のように武具に愛せれておるやつに金をとってまで売っってしまったら、わしゃ鍛治師失格だ。じゃが、こちらも生活があるし、何より、武具を作るにも金がいるからのう。だからこそ、売れん。」


「フッ、そうか。」


 どこに笑う要素があったかはわかりません。〈最適化〉フィルターがかかってると、変なところで変なリアクションとっちゃうんだよ。


「いや、待て。そういえば、我が家の家宝があるではないか!」


「え、師匠。いいんですか?」


「ああ、お主には信用していなくてすまないと思う。わしは最高の武具を売ると言うたからには最高の武具を持って帰ってもらわねば、商人も失格じゃあ。」


「そ、それは…。」


「いいんじゃ。お主が認めたやつに我が家宝を託すんじゃ。問題は無かろう?…お主もそれでいいか?」


 訊ねられ、頷き返す。


「ああ、良かろう。そして、貴様の家宝とやら期待しておるぞ?」


「問題ない。素晴らしい武具じゃ。」


 と、奥に行き、持ってきたのは埃をかぶっていて、鞘に入っていない一本の剣だった。〈魂魄眼〉で見てみると、


【アルマッス

 材質 ミスリル

 レア度 伝説級(レジェンド)

 氷の剣。相手を氷結状態にし追加ダメージ。遥か昔、神代の傭兵団『グローリー』の幹部の1人が愛用した剣。一瞬で50もの魔物を氷漬けにした。】


 やべえじゃん。めっちゃいい武器ですやん。これ、もらえんの?


「これが、わしの家宝じゃ。こいつは、氷の剣ゆえに鞘を凍らせてしまってのう。鞘に収めてないときは、こんな風に凍らせたりはせんのじゃがのう。」


「ふむ、いい剣ではないか。」


「当たり前じゃ。それに、お主であればこの剣が牙を剥くことはなかろう。」


「どういうことだ?」


「簡単なことじゃ。武具も認めたやつにしか体に触れて欲しくない、そういうことじゃ。」


「そうだな、我に牙を剥くなど馬鹿以上に馬鹿としか言えん。」


「そうじゃな。」


 うん、くれるみたい。やったよ、これから無双だよ。


【なんか調子乗るとウザいですね、マスターは。】


 そう言うなよー。まあ、お金がどれくらいするかわからないんですけどね。


【大丈夫ですよ、マスター。】


 うん?どして?


【さっきの話の流れからわかるでしょうに。】


 えー。まだ5歳だからわかんなーい。

 だから、おじいちゃんに聞いてみる〜。

 教えて、おじいチャーン。


「良し、この剣俺が貰い受ける。幾らだ?」


 可愛さのかけらもねえ訊き方だな。


「金はいらん。だが、その武具を出来る限り使ってやってくれんか?」


「ほう…どういうことだ?」


「先にお主が武具に愛せれておるとわしは言うたな?それはきっとこれからもそうじゃろう。わしと同じように、ドワーフはお主が武具に愛せれておることにすぐに気づく。真に良いドワーフの打つ武具となったら凄まじいものじゃ、たやすくその剣より遥かに優れた武具を受け渡してくるであろう。そうなれば、武具とは敵を殺すものであり身を守るものだ、常に最強の装備をするであろう。そうなったら、いかにわしの家宝と言えども、最強の装備とは言えなくなる日がくる。そうなったときに、出来る限りでいいから使ってやってくれんか?」


「ふむ、良いだろう。どうせ我を語るには武具の種類が少なくては話にならんしな。」


「ほっほ、武具で周りを囲うか。それでも良かろう。願わくは、その一本にこの剣があらんことを祈るまでよ。」


「その必要はないさ。」


「何故じゃ?」


「俺が使うんだ。いつまでだって使える、無限の剣になるのさ。」


「それもそうじゃな。武具に愛されたお主じゃ、そうなっても不自然ではないのう。」


「はっ」


「フッ」


 そうして、鍛治師のドワーフと尊大な物言いをする女顔の5歳児は笑い合う。そばにいた青年もそう信じて疑わないようだ。


 かくして、俺の服やら武具やらの買い出しは終わった。


 ーーーーーーーーーーーー


 外に出ると、黄昏れていた。だけど、俺は急がずに帰路につく。

 帰りの道中、俺は疑問があった。


 なあ、アン。俺さ、前世のことを思い出してな。


【どうしたんですか?急に。前世のことなんて一度も話そうとしなかったじゃないですか。】


 いいのさ、嫌な思い出といい思い出の両方にまみれてたよ。それに、地球はつまらない、って言ってたのは本心だけど約束だったんだよ。


【そんな約束って普通ないんじゃあないですか?】


 無いな。だけど、俺の約束の内容は明確じゃないけどそれが答えだったのさ。


【地球がつまらないなんて答え、馬鹿みたいですね。】


 まあな。俺だって大切なものを失って気が付いたからな。


【お気楽なマスターにも何か深い過去があるんですか?】


 いんや。いつか話すかもだけど、簡単に言えば変態のサンタの真似事さ。


【マスターにはぴったりですね。】


 そうだな。だけど、俺以外が転生してないとは考えられないのか?


【それには、深淵本体から回答の許可を貰っています。】


 それは、なんだ?


【はい、『いない』だそうです。】


 そうか…そうだな。失ったものが戻って来る方が異常なんだよな。ましてや、第二の人生なんて他の人も転生させて欲しかったなんて言ったら欲張りすぎだよな。


【そうですね。ですが、マスター。マスターは〈無限宝物収納庫〉の鎖に『最強にはなれない』と言われましたよね?】


 まあそんなニュアンスだったな。でそれが?


【私や〈無限宝物収納庫〉の鎖に言わせて貰えばマスターは、『最強になれない』だけでそれ以外はほとんど全てが可能なんですよ。マスターには、それだけの素質があるんです。】


 そうなのか。なら、俺が強くなれば…


【ええ、どんな願いだって叶います。まあ『最強になれない』ってのは結構大きいですけどね。】


 そうだな。まあ、男だったら強くなけりゃあな!


 そう思い前を向くと隠れていく太陽のような星があった。明るくこの星を照らしているが、その光を止めることを知らない。ただただ我武者羅にその光を振りまいている。でも、その暖かさに、その輝きに多くのものが自分もあやかろうと、近づいてくる。それもそうだ、この星もまた恒星である太陽のようなあの星に惹かれあの星に適応した形が今の環境だ。星だってそうなんだ。地球の生命体の進化だって適応だった。つまり、強いものに適応するように寄ってきたものは形を変える。結局、強いものが弱いものの行く末を決めるのだ。それが自然の摂理。だけど、この広い宇宙には同じ規模の恒星や、それ以上の恒星がある。そもそもをいって仕舞えば、恒星だって宇宙を形成する要素の一つだ。いつだって上がある。誰にだって親がいる。だからこそ、上を目指す。だからこそ、親のようになりたいと願う。そうして、慢心せず進む道中に目標は現れる。進んだ先に夢は置いてある。そうだ、進むんだ、この道を。良くも悪くも太陽のようなあの星が照らしてくれるこの道だ。俺にはまだ指し示してくれるものがある。横を並んでくれる家族だっている。照らしてくれるものなかに、失くしたものはないけど、一周して戻ってきたら、もう一度拾い直そう。それでも良いだろう?桜。

主人公の前世軽くしようと思ってたんだけど、若干重くしようと思った。

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