信用って買えないですかね?…もちろん、お金で。お金無いけど。
作者、文字数、不安定!
「…ふわあ、朝か……」
こんな目覚めのいい朝は初めてだ。眠るのが早かったからだろうか?ただ、あの親父様のモーニングコールはすごかったのは忘れられない。
…何があったかは説明したくないが、『ふわあ、』とか欠伸しながらもベッドで迎撃態勢を整えている、ということだ。
「おはよう、シリウス。…何してるの?」
「朝の運動だな。俺の家は、朝から俺めがけてダイブしてくる奴がいたから。」
あの変態親父のせいで、朝からそんなやりとりをするハメになる。
あと、昨日の一件から〈最適化〉フィルターに改善の余地が見つかったようで親しいものならある程度は言葉を崩せるようになった。
俺が寝ていたのはベッドということになるが、そう、俺は、この家の空き部屋を使わせてもらっていた。ただ、位置がアシュリーの部屋の真横だったので、それでまたラインのおじさんと言い合いになった。
まあ、最後には、『シリウスが近くがいいな……』というアシュリーの切実なお願いにラインのおじさんは撃沈。俺は見事にアシュリーの部屋の隣の部屋を使えるようになった。
着替えはないので、服はそのままで、部屋を出るためにアシュリーのそばまで行くと、アシュリーは恥じらいながらも手を差し伸べてくる。
「ね、ねえ、シリウス。」
「なんだ?アシュリー?」
「ちょっとの間だけど、手を繋いでくれない?」
「いいぞ。」
ぎゅっと手を繋ぐ。いきなり大胆だな、と思うも所詮は5歳。本能に忠実であってこそ子どもとは可愛いものだ。その証拠が、嬉しそうに無邪気に微笑む様は、俺をしてやばい気を起こさせる。
そうして、昨日の食事の部屋まで行く。そう、昨日の部屋には親子喧嘩するためにいたんじゃなくて、ご飯のためにいたんだと、あの後のマーサおばさんの発言で気が付いた。
「えへへ、シリウス。」
「なんだ?」
「なんでもなーい。よびたかっただけー。えへへ。」
可愛いのはいいが、俺たちはまだ5歳だ。そう、婚約者云々は俺たちが決めろ、とマーサおばさんが言ってくれたが、俺はこんな可愛い子なら、いつでもウェルカムだが、それまでが長すぎると感じる。
こんなときゃ、どうすりゃええのん、アンちゃーーん!
【ZZZ ZZZ ZZZ】
お前まだ寝てんのかよ。さっさと起きねえか。
【フゴッ、あれ、ここは?目を開けるとそこには汚い頭の中だった。調べていくと、体が5歳児だから、と5歳児の美少女といい感じになってる変態、シリウスという名前が出てきた。】
おい、ふざけんでいいから。取り敢えず、どうしようかって思ってんだよ。
【あ、これ答えたらまた寝ますからね。】
いや、なんでだよ。まあ、二時間くらいならいいが、今日は買い物に行くぞ。
【へーい。じゃあ、とりあえずの方針はですね、
1,冒険者になる。
2,冒険者として上を目指す。
3,13歳になる年から学校に通う。
4,18歳で学校を卒業する。
5,18歳でアシュリー嬢とゴールイン。
もう、こんなもんでいいんじゃないすかね?では、お休みなさい。】
あっ、おい!
こいつ、相談の意味わかってんのか?勝手に意見押し付けて眠るってどんなだよ?
だが、その思考も部屋についたので打ち切る。
部屋に入ると、昨日と同じ匂いだがわずかに甘そうな香りがする。昨日もそうだったが、このメニューを知っているのが常識であるように三人とも振る舞ってくるので何も料理に関して訊けずに食事は終了する。ただ、美味しいのは美味しいのだ。だが、懐かしくどこかで確実に食べたことがあるものの味だ、とわかるものの、何かはわからないので謎は深まる。親父様曰く、『それは仕方のないことだよ。世界が違えばやっぱりそういう文化も文明も違う。そもそも生態系が違うのにそれらが同じなんてありえないね。』だそうだ。
まあ、わからない食事の話は置いておこう。ここからは買い物などの必要なものの話だ。その際に〈無限宝物収納庫〉を使おうかと思っている。
ともかく、話を切り出そう。
「なあ、マーサおばさんよ。この辺の貨幣事情を教えてくれないか?」
「もう、お義母さんでいいのに。だけど、あんた。お金も知らないで今まで暮らしてきたのかい?」
「ああ、俺の家は少し特殊でな。親父様が何も教えてくれなかったんだ。」
「それはそれは。って、あんたはこの辺の人間じゃないのかい?」
「ふむ、一応ここがどこか教えてくれないか?」
「わかったけど、あんたんとこの親父の名前を教えてくれないかい?」
「何故だ?」
「ああ、簡単だよ。あんたみたいなガキをほったらかしてる様な人は、一発殴らなきゃ気が済まないんでね。」
「ああ、そういうことか。だが、俺は親父の名前を知らない。」
「「「え、…」」」
これは、さすがに予想出来ていなかったのか、聞いていた3人全員が驚く。
「知らないって、嘘だろう?」
「いや、本当のことだ。親父様は、俺がちっちゃい頃から冒険者に憧れているのを知っていた。それで、名前を知っていると冒険者として生活するのが難しくなるから、と名前は言わなかった。」
「それは本当かい?」
「ああ、本当らしい。母親も同じ事情があるため、同じように名前を知らない。…まあ、最も母親に関してはあったことがないけどな。」
「そんな……。」
皆一様に驚いているが、アシュリーだけは尋常ではない。やはり、この子にはなにかあるのだろうか?そう思うも、またもそれを言わせないような形でマーサおばさんが言う。
「そうかい、いらんことを訊いたね。それで質問の答えだけどね。ここはフィーネ帝国南部を治めるフルーク辺境伯の領土の中でも再南部にあるフレンの街だよ。」
「ああ、ここがどこかはわかった。次は貨幣価値を教えてくれないか?」
「あいよ。お金の数え方はリルだね。で、基本十倍で上の硬貨になるよ。鉄貨が一枚、1リル。小銅貨が一枚、10リル。大銅貨が一枚、100リル。銅板が一枚、1000リル。それが小銀貨、大銀貨、銀板、小金貨、大金貨、金板、それの上に、まだ白金貨、閃貨とあるらしいけど、この辺じゃあ大銀貨を見ることだって稀だね。」
「そうか、実物はあるか?」
「一応、あるよ。なければ、ラインのへそくり引っ張りだしゃいいんだしね。」
そこでぶっ、と飲んでいたお茶のようなものを吐き出したラインのおじさんはむせているが、マーサおばさんは何の反応もなく部屋から出て行った。
「おい、クソガキ。これだけは教えておいてやる、覚えとけよ。いいか?女に弱味は見せるな、きょどるな、握られるな。だ、わかったか?」
「ああ、心底痛感したよ。」
と、男のくだらない話は花を咲かす前に引き抜かれるように、マーサおばさんは戻ってきて見せてくれる。
「はい、こいつがへそくりだね。意外にも溜め込んでいたみたいだから、よおく見ときな。まず、鉄貨、こっちが小銅貨、それでこっちがーー。」
全部で、鉄貨、小銅貨、大銅貨、銅板、小銀貨までがあった。硬貨の装飾には王国の王様が描かれているようだ。これは、フィーネ帝国以外の国でも使用可能のようだ。
ここでしなければならないことがある。
それは、
「なあ、俺のスキルでこの硬貨で増やせるかもしれないんだが、一度貸してくれないか?」
「なんだって⁉︎あんた、スキルが使えるのかい?」
「あ、ああ。ていうかマーサおばさんたちは使えないのか?」
「いや、使えるよ。だけどね、5歳でステータスを開けるからそれ以前はスキルを身につけることはできないんだよ。だから、5歳で持ってる子は天才って言われて持て囃されるんだよ。」
「そうか。…だが、先天的に持っていたからといって天才とは限らないだろう?」
「いやね。大体、先天的なスキルっていうのは[ユニークスキル]って言って強力なものばっかりなんだよ。まあ、英雄とかが持っているのは、[レジェンドスキル]っていう歴史上でも最強と言われるスキルだよ。」
「なに?…絶対級や、混沌級、根源級とかじゃあないのか?」
「いや、[ユニークスキル]は唯一級だし、[レジェンドスキル]は伝説級だからね。そんなのは聞いたことがないよ。」
「いや、クソガキ。たしか、創世記の原本には神が[アルティメットスキル]と言われる究極級を使ったとされている。このスキルが最高と言われている。」
どういうことだ?と思うも、そもそも、スキルが一体どのようなものであるかも、前世の知識で『なんかチートって感じ』としか認識していない。
だけど、アンが言うには『弱いから』、『条件開示の条件を満たしていないから』、俺に情報の開示ができない。つまり、俺が強くなりさえすれば、情報は一気に知ることができる。
そうなれば、スキルのことも把握できるかもしれない。
いや、ていうか大仰に言ってっけどめんどっちいから、調べるのはパスで。
そんな〈最適化〉フィルターがかからなくても問題が生じるような思考だが、現状ではそうしておこうと思い、話に戻る。
「うまくいけば、俺は金をいくらでも出せる。」
「なんだって⁉︎」
「てめえ!ふざけんなこらああ‼︎」
「シリウス、それはまずいよ…」
いってえ…この世界でぶたれたの初めてだよ…
いやね、あの親父様は、叩くくらいならって抱きついてきて、『今日1日中、ずっとこれね!』なんて言うんだよ。トイレも食事中もずっとくっついてるから、すんげえ動きづらかったし、くっついてる間中、魂が抜けたように喋らないし、動かない。俺の力で動かせる程度まで力弱めて、ずっと同じ顔、同じ姿勢。挙句に脈がないときた。気持ち悪かった…。
1日経ったら、『どうだい?これが世に言う制裁だよ?』と言って、動き出す。
絶対に違う。
そう叫ぶ前に溜まった疲労のせいで寝ちまったよ。
でまあ、ラインおじさんにぶたれました。…いいですね、青春って感じがすごいプンプンしますね。でもでも、青い春に想いを馳せるには、俺は5歳なわけであって無理が大きいものです。
ただ、俺はまだケツの青い5歳なので、青い素プリン愚って感じでいいかな?
無理だね〜。
ぶたれたというのに、意味わからないことばっかり考えながらも、一応は弁解をする。
「我を殴るとは…!いい度胸だ‼︎ライン!貴様そこになおれ‼︎我を殴った罪は重いぞ‼︎だが貴様の『使命』を聞いた以上、我自らが裁いてやる‼︎」
「とうとう頭やったか?クソガキ‼︎てめえ、アシュリーの隣の部屋で寝たからってなんでも言ってもいいと思ってんじゃねえのか⁉︎」
「論点が違うね。ライン。」
「お父さん、それは違うと…」
それな。俺も思ったよ、おばさん。
かくして、女房と娘が擁護してくれなかったラインおじさんは、僅かばかりの戸惑いと、アシュリーへの『こんなやつとの結婚なんて破棄しちまえ』という多大な想いを込めたウィンクもあえなく撃沈した。
だけどすげえよ、ラインおじさん。あんた、ウィンク何回してたんだよ?
ただ、想いが届いた人物はいた。目の前にいた俺は、秒間30回は超えるだろうウィンクを素直に賞賛した。
そんな事ながらも、〈最適化〉フィルターが走り出している。
「戯けが!そのような小さきことで慢心するような未熟な精神ではないわ!それよりは、貴様ら!先の話に驚くことなどなかろう‼︎それも何か?我が、硬貨の贋作でもつくるとでも考え至ったのか⁉︎」
「違うのか?」
「あんたのことだから、普通の硬貨より価値の高そうな硬貨をつくると…」
「シリウス、大丈夫だよ!ばれても私はシリウス以外と結婚する気はないから!」
違うね、アシュリー。全く違うね、君が言ってること。
「ウジどもがあ!貴様ら全員、市中引きずり回しだ‼︎‼︎」
買い物書いてないですね。
つうか、このチート使いづらすぎるだろ!