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世界に嫌われた者【中】

彼女の名は太陽(サン)と言った。


彼女は世界中の人間から愛される存在だった。


どんな悪人でも彼女を見れば魅力され、虜になってしまう。



世界は彼女を必要としていた。



青年の次の任務は彼女(サン)の暗殺だった。



組織が何故、彼女を暗殺しようとしたのかは分からなかったが


青年にとっては組織の命令が全てであり、暗殺の理由は考えなかった。



厳重な警戒網をくぐり抜け、青年は彼女のいる部屋に侵入した。



その部屋は実に奇妙だった…



部屋の壁は完全な防音になっていて、見たこともない奇妙な装置が至るところに設置してあった。



青年はナイフを手に持ち、彼女に近づいた。



白衣を来た彼女は怯えることもなく、優しい笑顔で青年を見ていた。



青年は問う……俺が怖くないのか?…と



「いいえ…怖くないわ。貴方の心は純粋だもの…他人の心が分かって、こんなにも心地良いのは生まれて初めてよ」



にこやかに笑う彼女に青年は動揺した。



…彼女は人の心が分かる能力を持っていた。



彼女に敵意を持つ人間は存在しないが、彼女を利用しようとする人間はいる。


そんな醜い心を持った人間達に、幼い頃から囲まれて育った彼女は、いつしか心を閉ざしていた。



この部屋は彼女の中に人間の心が勝手に入ってこないようにする為の部屋だった。



青年は言った…この世界を恨んでいる俺が純粋な心を持っているはずがない、と。


すると彼女は答えた。


本当の貴方は他の誰よりも優しい心を持っている。


他人から拒絶され続けた貴方は、誰よりも人の痛みを理解している。


貴方以上に他人の気持ちを理解出来る人間は、この世界にいない、と。


そして彼女は続けて青年に話しをした。


自分を認めてくれた人の為に、貴方は自分の心を押し殺して、人を殺めている…



たった一つの「絆」を失いたくないために…



彼女はそう言うと悲しそうな顔をした。



私には何もない……


世界中の人が私を愛しても、私を理解してくれる人は誰もいない……ずっと1人でいるのと一緒。



「もう……1人でいるのに疲れちゃった。私を解放して…私を殺して」


彼女は青年の前で祈るように座りこんだ。



青年は思った…



(シャドウ)太陽(サン)



世界から受ける立場は違えど、彼女もまた「孤独」に苦しんでいた。



彼女を殺す事は出来る……だが、青年には出来なかった。



自分と同じ痛みを分かちあえる人間に会えたからだ。



そう思った時、青年は彼女の手を取り、部屋から連れ出した。



驚く彼女に青年は言った。



一緒に来い……俺達は似ている。お互い分かりあえるはずだ、と



彼女は頷くと青年の手を強く握りしめていた。



太陽と影は一つになった。





























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