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はじまり
──それはまるで雪のようだった。
それは、真白の花びらで。ヒラヒラを不規則に舞い落ちてくる様は、一層、白雪と紛わせた。
はて、この森に白い花弁を葺くものがあっただろうか。
少年は首を傾げた。
人里からほど遠く、滅多なことがなければ人の寄りつかないこの森は、少年にとって庭も同然。知らないことを探す方が難しいくらいだった。
今し方、目線を下に落とす。手のひらに落ちた淡雪のようなそれは、いじらしくもそこに留まっていた。
小指の先ほどの小さな花弁。それが、厭に目についた。
そっと息を吹きかけてみると、呼気に煽られた真白は柔く揺れ、やがて旅立っていった。
瞬きのうちに、空を舞い、横風に攫われていく。小さく小さく、やがて花弁は全て旅立っていった。
少年は知らない。それは報せだということを。これから立ちはだかる大いなる運命を。
降り積もる雪の下で、目覚めを待っていた芽の、獣の、とまっていた時が、確かに動き出した——。




