証拠もなく婚約破棄されたので、冒険者ギルドで働くことにしました!〜荒くれ揃いのギルドでまさかの逆ハーレムになりました!?〜
「アメリア・ウィンダミア! 貴様との婚約は、本日をもって破棄する!」
婚約者だったルーカス殿下がそう宣言した日から、わたくしの人生は一変した。証拠もない浮気疑惑を理由に断罪され、公爵家からも追放される羽目になったのである。
「――というわけで.......行くあてもございませんし、冒険者ギルドで働かせていただくことにいたしましたの」
「あの、令嬢様。その丁寧な喋り方.......この職場だと結構浮きますよ?」
黒鷲ギルドの受付カウンターで、わたくしはギルドマスターに向かって淡々と経緯を説明していた。彼は困惑を隠しきれない様子である。
「あら、失礼いたしました。ですが、口調まで変える必要はございませんでしょう? 中身が伴っていれば、それで十分ですわ」
「まあ、腕っぷしさえあれば、口調なんてどうでもいいんですけどね」
半信半疑のギルドマスターを前に、わたくしは静かに履歴書代わりの推薦状を差し出した。
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受付嬢としての初日から、わたくしは早速文化の違いに直面することになった。
「おい姉ちゃん.......この依頼書、さっさと処理してくれよ!!!」
カウンターに乱暴に依頼書を叩きつけてきたのは、剣士のバロンだった。粗野な物言いに、わたくしは思わず眉を上げる。
「あら、依頼書は投げるものではなく、丁寧に差し出すものですわよ。それに、初対面の相手にはまず名乗るのが礼儀ではございませんこと?」
「は.......? そんな面倒なこと、誰がやるかよ」
「面倒、ではなく礼節と申しますのよ? もう一度、やり直してくださいませ」
にっこりと微笑みながらも有無を言わさぬ圧力に、バロンはたじろぎながらも渋々名乗り直した。
「――バロンだ。よろしく頼む」
「ありがとうございます! 次からは、最初からそう仰ってくださいませ」
満足げに頷くわたくしを、周囲で見ていた他の冒険者たちが、興味深そうに見つめている。
「あの受付嬢、なんか只者じゃないな......」
「令嬢気質のくせに妙に肝が据わってるよな.......」
「昨日も、依頼料の未払いを踏み倒そうとした奴を正論だけで泣かせてたぞ」
囁かれる評判をよそに、わたくしは淡々と業務をこなし続けた。礼儀作法にはうるさいが、仕事ぶりは的確――そんな評判が、じわじわとギルド内に広まっていった。
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転機が訪れたのは、ギルドに設立以来最大級の緊急依頼が舞い込んだ日だった。
「ギルド長.......大変です!! 街道沿いに大型の魔獣が出現、討伐隊が壊滅寸前です!!」
慌てふためく職員に、ギルドマスターは険しい顔をした。
「くそ、今出せる戦力じゃ足りない……」
「――でしたら、わたくしも参加させていただきますわ」
淡々と申し出たわたくしに、周囲の視線が一斉に集まった。
「は? 受付嬢が何言ってんだーー」
バロンが呆れたように言い放つ。だが、わたくしは構わず剣を取り出した。
「あら.......令嬢たるもの、いざという時のために剣術くらい嗜んでおりますのよ。婚約破棄されたおかげで、随分と時間の余裕もございましたし」
「時間の余裕で剣術を極める令嬢がどこにいるんだよ......?」
「ここにおりますわ!!!」
胸を張って答えるわたくしに、バロンは呆れ半分、感心半分といった顔をしていた。
半信半疑のまま同行を許されたわたくしは、現場に到着するなり、魔獣の急所を的確に見抜き、一撃で沈めてみせた。
「なっ……嘘だろ......!?」
呆然とするバロンの隣で、魔導士のセインが感嘆の声を漏らす。
「見事な太刀筋だった。まさか、あの丁寧な受付嬢がこれほどとは.....」
「あら、意外だと仰るのは心外ですわ。礼儀正しいことと、戦えないことは決して同義ではございませんもの」
にっこりと微笑むわたくしに、弓使いのカイルまでもが、どこか熱っぽい目を向け始めていた。
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それ以来、ギルド内でのわたくしの扱いは一変した。
「アメリアさん.......今度の依頼、俺と組んでもらえませんか」
「いや、俺が先に声をかけるつもりだったんだが」
「お二人とも、順番くらい守ってくださいませ? それに、依頼の割り振りは実力と適性で決めるものであって、早い者勝ちではございませんのよ」
バロン、セイン、カイルの三人が、事あるごとにわたくしの周りに集まってくるようになった。荒くれ者揃いのギルドで、まさか逆ハーレム状態になろうとは、当のわたくし自身も予想していなかった。
「アメリアさんといると、なんか背筋が伸びる気がするんだよな」
「口うるさいのに、なぜか嫌な気がしないのが不思議だ......」
「俺は単純に強くて綺麗な人には弱いだけだ」
三者三様に漏らす感想に、わたくしは思わず苦笑した。
「皆様、揃いも揃って随分と素直でいらっしゃること.......殿方というのは、もう少し駆け引きをなさるものだと思っておりましたのに」
「駆け引きなんて面倒なもん、俺はやらねえよ」
「わたくし、少々物足りなく感じ始めておりますわ」
にべもなく返してやると、三人はそれぞれ複雑な表情を浮かべていた。褒めているのか貶しているのか、判断に迷うところだろう。
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そんな穏やかな日々に影を落としたのは、実家からの一通の手紙だった。
「.........アメリア、頼む!!! 公爵家の財政が厳しいんだ.......! 少しでいい、力を貸してくれないか.....?」
わざわざギルドまで訪ねてきた父の姿に、わたくしは冷めた目を向けた。
「あら、随分と都合の良いお願いですこと。証拠もなく断罪して追放なさった娘に、今さら何をお求めですの?」
「そ、それは……状況が変わったのだ.......!」
「状況が変わった途端に手のひらを返すのは、殿方の得意技のようですわね。ルーカス殿下も、似たようなことを仰るのかしら?」
「殿下も、その、婚約者選びに苦労なさっているようで……」
「あら、それはご愁傷様ですこと。ですが、わたくしには関わりのない話ですわ」
淡々とした皮肉に、父は言葉に詰まった。
「せめて、援助の一部だけでも……」
「お断りいたしますわ。冒険者ギルドでの稼ぎは、わたくし自身の実力で得たものですもの。理不尽に追い出しておいて、都合の良い時だけ頼るような方々に、差し上げる分は一銭もございません」
「アメリアさんに頼み事があるなら、まずは俺たちを通してもらおうか」
バロンが低い声で割り込む。セインとカイルも、それぞれ父を睨みつけていた。
「彼女は今、我々のギルドの大切な仲間だ。無礼な真似は許さない」
三人がかりで牽制されては、父もそれ以上何も言えなかった。すごすごと引き下がる背中を見送りながら、わたくしは小さく息をついた。
「皆様、援護感謝いたしますわ」
「当然だろう。俺たちの受付嬢に、指一本触れさせるかよ.......!」
胸を張るバロンに、セインとカイルも同意するように頷いた。
「それにしても、実の父親相手にあそこまで容赦がないとは。改めて感服いたしました」
「あら、容赦する理由がございませんもの? 血が繋がっているというだけで、何をしても許されると思われては困りますわ」
きっぱりと言い切るわたくしに、三人は揃って感心したような、少し引いたような、複雑な表情を浮かべていた。
「俺.......アメリアさんを本気で怒らせないよう、これからも気をつけようと思う」
「同感だ。敵に回すと恐ろしいことこの上ない」
「あら、褒め言葉として受け取っておきますわ」
にっこりと微笑むわたくしに、とうとう笑いを堪えきれなくなったのは他ならぬわたくし自身だった。婚約破棄から始まった人生は、思いがけず賑やかな居場所へと辿り着いたようである。
「さて、皆様。おしゃべりはこれくらいにして、そろそろ次の依頼に取り掛かりましょうか」
「「「はい、アメリアさん!」」」
声を揃える三人を前に、わたくしはこれから始まる新しい日々に、静かな期待を寄せていた。
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「バロンたちのキャラ好き」「実父ももう少し追い詰めて」など、感想コメントもお待ちしております!!
三人の中で誰が一番先にアプローチを本格化させるのか、そしてルーカス殿下側の顛末など、まだまだ書きたいことがございます。よろしければ作者フォローもしていただけると幸いです。
それでは、また次のお話でお会いしましょう!




