相手が魅了使いなら、ワッショイワッショイしてお嬢様をお救いすれば良いじゃないかでヒーローになった庭師の話
「エスメラルダよ!婚約を破棄する!義妹リリム嬢をイジメた罪、メイドになってリリム嬢を主として仕えよ!」
「そ、そんな訳が分かりませんわ。私は勉強をしろと言っただけですわ・・・」
「それがイジメだ!」
シュトラゲル公爵家の庭園でのパーティーだ。
断罪から婚約破棄が始まったぜ。
俺はジミー、しがない庭師さ。
だけど、今日はお嬢様の英雄というものになるぜ。
マントを羽織り木に隠れて出番を伺う。
そろそろでるか・・・
この話の発端は一月と半分前に遡るぜ。走馬灯のように過去が浮かんで来た。
☆☆☆回想
酒を飲んで良い気分になって通りを歩いていると声をかけられた。
「そこのかっこよいお兄さん!!ミサンガです。買いませんか!」
みたら、女の子だ。10代か?黒髪、黒い瞳に濃い肌。
どっかの少数部族だと思ったよ。
「エへへへへ、実は私は日本から転移してきまして、スキル、お守り作りです」
「あ、帰ろうっと」
何かの詐欺師かと思った。
「ちょっと、待って下さいよ!」
腕を掴まれた。
「グスン、とっても良いお守りなのですけど、これ、身代わりになってくれる子です。危機が来た時に切れるヒモなのです。手首につけて下さい」
「いくらだ?」
「金貨1枚・・・」
「お前・・・何だ。俺は金貨1枚持っているように見えるのか?ヒック」
酔っていたから気が大きくなった。詐欺にしても金貨1枚とれる男と見定めてくれたのだろう。
「なら、こうしよう。銀貨1枚出す。残りは役に立ったと思ったら払うわ。シュトラゲル公爵家で働いているんだ」
「毎度!私は佐々木です。いつもこの場所にいます。是非、効果があったらご友人に伝えて下さい」
「あいよ」
銀貨1枚も出したぜ。
次の朝、頭痛と後悔に苛まれた。もし、効果があったら月の給金の半分を出さなければならない。
「まあ、独り身だしな・・・・」
庭仕事をする。
親父が引退したから仕事は独りだ。あっ、お嬢様だ。
「ジミー、ごきげんよう」
「お嬢様、ごきげんようでございます!」
「フ、普通でいいわ。いつも綺麗に手入れしてくれて嬉しいわ。今日ね。義妹が来るのよ。どんな子かしら」
「旦那様がお迎えするのだからきっと良い子でしょう」
お嬢様・・・厳しそうな顔をしているが、微笑むと太陽のようだ。
そのギャップがいいな。
お嬢様は俺を1人の人として見てくれている。
それが嬉しい。
将来の王妃様だ。
王国は安泰だぜ。
話の通り旦那様が養子を迎えた。エスメラルダ様にとって義妹になる。
理由は・・・まあ、俺には関係ない。
リリム様という方で、髪はフワフワ、お嬢様と違って可愛いタイプだが。
「フワフワ~令嬢♪リリムです。焼き菓子を食べて下さい!リリムの焼き菓子美味しいよ、ほっぺが落ちちゃうぞ♪」
奇妙な歌を歌い焼き菓子を振る舞う。
ドタドタと俺の所まで来た。
「庭師さん。リリムの焼き菓子食べてほっぺたを落としちゃって♪」
「有難う」
今年15歳だろに、どこか、おかしい。
「頂きます」
水欲しいな。と思ったら。
バチン!
ミサンガが切れた。
「美味しい?リリムの焼き菓子美味しいですか?」
「とても美味しいです」
何だ。毒でも入っていたのか?お守りが気になったが、もう、ただのヒモだ。
それから、おかしな事は俺ではなく、屋敷中で起きた。
「リリム!さあ、お義父様のところに来なさい。膝の上に乗りなさい」
「え~、宿題があります」
「それはエスメラルダにやらせればいいから!」
「は~い」
え、旦那様、膝抱っこをしている。奥様大激怒だろう・・・
だが、奥様も寄り添う。
「エスメラルダ、姉なのだから宿題をやってあげなさい」
「お母様、宿題は本人がやらなければ意味がありませんわ」
「まあ、口答えをするの?少し評判が良いからって!貴女傲慢になっていなくて?」
お嬢様の兄上も・・・
「父上、つぎは私がリリムと手をつないで庭を散歩します」
「兄上、ずるい」
弟君も夢中だ。
使用人達もリリムに群がり。あれやこれ世話をする。
「ウエ~ン、お義姉様に叱られたー!」
「これはイジメね。いいですわ。私達が守ります」
「あの女、エスメラルダに様付けはいらないか?」
おかしい。たった一月で屋敷の者はリリム様に夢中だ。
俺だけはいつも通りだ。
婚約者の王太子殿下が来られたが・・・
「王子様、この焼き菓子はリリムが作りましたの」
「うむ・・・これは、可愛い義妹殿だな。だが、今日はエスメラルダとのお茶会だ」
「焼き菓子食べたら帰ります」
「リリム、お止めなさい」
使用人達もグルだ。
もう、メイド達はエスメラルダ様にお茶も入れなくなった。
焼き菓子を食べたら王子は豹変した。
「使用人が言うことを聞かない?それは王妃失格だ。我はリリムを娶るぞ!」
「王子様、好き!」
とこんなになった。
そして、屋敷でガーデンパーティーが開かれる数日前にミサンガの女、ササキが来た。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「俺はどうしたら良いと思う?ササキ嬢よ」
様子を見にあの黒髪の女が屋敷に来たので今までの話を振った。
「う~ん。ミサンガちゃんは役に立ったようですね。残金銀貨9枚頂ければ・・」
「今払う。確かに効果はあった。頼むどうしてもお嬢様を助けたいのだ!」
「分かりました。これは魅了の一種ですね」
「魅了・・・」
「タイプがあります」
まず、惚れ薬。これはコスパが悪いです。何故なら、襲われるからです。
屋敷の全員に配っているのでしょう?
「ええ、そうです」
「男と女に襲われたら身が持ちません。リリム様はセックスやレズ行為はしていないのでしょう?」
「そうだが、女の子が・・・そんなこと・・言ったら、イカンぜよ」
「いいから!」
次に、麻薬。リリム様は毎日食べさせていますか?
「いいえ。一回切りですね・・・」
「これも違うわね。では次に宗教的カリスマ・・・」
リリム様は宿題やダンスの練習ですらエスメラルダ様にやらせている。
これはとても無作法です。
「それでも愛される。新興宗教の教祖にみられます。どんなスキャンダルがあっても、信者は全く意に介しません。それどころか、それさえも迫害ととらえてしまうのです」
「そうでしょうか?」
「試してみますか?」
ササキの言う通り。何てことのない水を・・・
「リリム様が湯浴みをした残り湯だ」
と桶に入った水を使用人達に持って説明したら。
「「「くれ!」」」
「「「飲む!」」」
「「「ちょうだい!」」」
うわ。気持悪い。これは新興宗教に現われる。いや、伝統宗教でも現われる現象だそうだ。
「一説には踊り念仏の一遍や浄土教の法主もこのような事があったと伝えられていますね」
「だから、ネンブツとかジョウドとか何なの?」
「いえ、それは異世界の話です」
「なら、俺はどうすれば良い?」
「断罪の時に不確定なことをすれば良いのです・・・・」
「本当かよ。でも、面白そうだな」
そうだ、俺には秘策がある。
俺は気を引き締めて会場に躍り出た。
・・・・・・・・・・・・・・・・
「エスメラルダよ!婚約を破棄する!義妹リリム嬢をイジメた罪、メイドになってリリム嬢に仕えよ!」
「そ、そんな訳が分かりませんわ。私は勉強をしろと言っただけですわ・・・」
「それがイジメだ!」
俺は王子とその隣にいるリリムの前に出た。
マントを羽織っているが、中は裸に近い格好だ。
「パヨ~ン!ジミーでぇーす!」
かけ声とともにマントを取ると、俺の肌色が目立つ。
ササキから教わったポーズを取って芸をする。
「残念!はいています!」
パンツははいている。見えそうで見えなさそうな格好だ。
「「「はあ?」」」
「ジミー、今は大事な場面だぞ!」
使用人達が騒ぐが。
【ギャハハハハ!おもしれー!】
リリムが手を叩いて笑い出した。やっぱり下品な女だったのだな。
殿下は・・・
「うむ・・・よく見ると面白い芸だ」
公爵家の皆様も・・・
「なるほど、はいているのか?」
「素晴らしいわ」
「もっとやりなさい」
「僕もやる!」
皆、脱ぎだした。
そしたら、ワッショイワッショイよ。
お嬢様は口を開けて両手で隠している。
呆れているのだろう。
「さあ、皆さんも!はいてます!」
「「「ざんね~ん。はいてます!」」」
【ギャ~ハハハハハハ!お腹いた~い!】
だが、この芸はすぐに飽きられる。
笑い声が消えかかった時・・・
【ダグラスよ!何をしているか!】
「な、何て言う破廉恥・・・」
陛下と王妃殿下が来られた。近衛騎士団も一緒だ。
「あ、父上、エスメラルダが義妹をイジメているので、婚約破棄をしました」
「馬鹿者!注意をしたのだろう。こんな義妹、折檻をして当然!マックスよ。全員捕縛だ」
「御意!」
「待て、エスメラルダ嬢は丁重に事情聴取で王宮までエスコートせよ」
「了解であります」
これで一件落着。調査の結果、魅了薬だったそうだ。
陛下と王妃殿下にも食べさせようとしたのだから呆れる。
シュトラゲル公爵家は、エスメラルダ様が女公爵として継ぐ事になった。
公爵家の家族は謹慎、使用人は総入れ替え。リリムは婦人の墓場と名高い北の塔で監禁、調査の対象になった。
あ、俺?
「ササキ嬢・・・俺、どうしてこうなった。公爵家を出て冒険者になるはずだったのに・・・」
「さあ?これも不確定ですね・・・」
「助けてくれよ」
「お嬢様、ヤンデレ気質あった?」
「だから、ヤンデレって何だよ」
公爵家で軟禁状態だ。エスメラルダ女公爵の元で・・・
「女商人とのお話終わりましたか?」
「ヒィ!はい・・・」
ずっとドアの隙間から目だけを出してのぞいていた。
「フフフフ、ジミー様、今日は私と積み木をしましょう。気の病には積み木が良いと王宮の回復術士様が仰っていたわ」
「はい、でも、俺、まともですよ」
「分かっておりますわ。ウフ」
「では、ジミー様、さようなら・・」
「待て!ササキ嬢!」
「ダメですわ。こっちを見て。私の目を見て」
病気と思われ屋敷から出られない。
人は何かに捕らわれなければ生きていけないのかも。
それが仕事ではなく女になっただけなのかもしれない。




