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帝国魔導士は休みたい  作者: たつみ
第一章
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episode2 砲兵陣地のへ強襲です

「総員傾注!!!」


 整列した20人の軍人たちの視線を集めるのは壇上に居るビアンカ中尉。

 ライフルを背負い、帽子をかぶる。軍人らしく凛々しい姿である。

 俺たちを含む中隊員は敬礼しつつ、しっかりと相手の目を見る。


「救援作戦だよ!陸軍の馬鹿どもの撤退の手助けをするよ」


 撤退の手助け、おそらく平原地帯の遅滞戦闘あたりを実施するのだろうか?もしそうなら骨が折れるな。これだから前線は。やはり帝国、災いあれ。


「敵の魔導士も確認されている。魔導士はともかく歩兵の攻撃に当たって死ぬ間抜けはこの隊にはいないだろうね」


「間違いない」


「ハハハ」


 他の大男の隊員たちはそうやって笑い飛ばす。


「場所は東6区、平原地帯の牧草地域さ。遮蔽物のない塹壕戦の応酬がある場所。つまり、空中軌道の精度が問われる部隊だ。十分注意するように」


「「イエッサー!!」」


 返答にビアンカ中尉は満足そうに頷く。

 

 やってられないな。圧倒的な敵軍を相手に魔導士だけで何ができる?撤退の助攻とはいえども、その難易度はわかるはずだろう。魔導士は存在している、それに加えてこちらは連戦連敗で消耗した二十名の航空魔導士。仕事とはいえどもストライキを起こしたくなるな。


「うん。じゃあ、出撃するよ」


 ビアンカ中尉の出撃の合図で、俺たちは一斉に動く。 

 

 しょうがない、一度乗った泥舟だ。のり続けてやるよ。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 高度800 速度360。隊列を組み飛行する。

 遠くから空気が響く音、砲兵の砲弾が爆発する音が響く。空は薄暗く見え、緑の多かった大地は数日で廃れた土地に荒廃している。これが戦争か、やはり人類最低最悪の営みである。人類は戦い合う運命にあるのであろうか?宗教を信じる奴らの気持ちもわかるな。こんな時には神にも縋りたくなる。だからこそ、宗教勧誘する奴らは弱りきった人間をターゲットにするのであろう。クズだな。


 現状をおさらいしておこうか。

 現在我が帝国は共和国と戦争状態にある。

 共和国の物量は帝国の想定を遥かに超えており、連戦連敗。防衛戦の構築と後退を繰り返して中央の援軍または逆転の一手を待っているようなものだ。

 敵の主戦力は陸軍。武器は一世代前のものを扱っているとはいえ、いかんせん無津量が多いのだ5000人を500人で相手するなんてザラにある。あえて言う。現状だと帝国は負けるだろうな。装備の質、兵士の質が高いとはいえ物量差はそのまま戦力の差となるのだから。

 だからこそ、新人の俺たちをも使い倒されるのさ。


「魔導反応あり!味方です!戦闘しています!!」


 1人の隊員がそう言う。


「だね。終わってたら、地獄への切符を持ってきた意味がないじゃないか。このまま高度維持。速度を400まで上昇。戦場に突っ込むぞ!!」


「「イエッサー!!」」


 一気にノーマルセルの出力をあげ、400キロに速度を上げる。

 近づくにつれて、火口付近の大地と勘違いするような丸焦げた旧牧草地帯が見えてくる。

 

 所々からは煙が上がり、地表に出て戦う兵士はいない。全て塹壕の中に入っているのだ。硝煙の匂いが佇む戦場。上空からは鮮明に見える。帝国兵の姿は少なく、代わりに共和国兵が多い。まったく今俺はどこの国の空を飛んでんだか。

 砲撃音が聞こえるたびにどこかで叫び声か、血飛沫と土が舞っている。 塹壕の中には、泥に塗れた兵士たちが這いずり、砲撃に震えていた。ある者は弾薬を抱えて走り、またある者は倒れた戦友を見つめて動けなくなっている。


 なんだここは?地獄の舞踏会会場か?後方には、戦車隊か。あれが塹壕にまで達すると流石にこの戦場は終わる。



「前方に戦車隊確認!!」


「撃滅するよ!!第一、第二小隊は私に続きな!。第3、第4は別れて、敵の塹壕を焼き払いな!!」


「「イエッサー!!」」


 体系を組んでいた中隊は四手に分かれることに、俺が所属する第一小隊はビアンカ中尉とともに鉄のおもちゃとのおままごとに。第二小隊はおそらく緊急スクランブルで来るであろう敵の魔導士との交戦。第3、第4は味方歩兵のサポートに移るのだろう。


「戦車をリサイクル用品に変えちまいな!!総員エンゲージ!!」」


 風を切り、一気に敵陣地へと侵入を開始する。銃弾が横を飛んでくる。だが、当たることはほとんどない。注意すべきはガトリングによる弾幕を張られることだ。一般的な歩兵の兵器であるライフルじゃ400で飛ぶ俺たちには弾は当てられない。しかもこちらには防御結界もある。結界は累積ダメージで壊れるが、歩兵のライフル一発程度なら余裕で耐える。


「ルノー君!!私たちは??」


「戦車を片付けるぞ。燃焼、貫通を同時使用して戦車のエンジン部分にぶち込むぞ!」


「!了解!!」


 戦車がワルツを踊れるとは思わない。だから航空魔導士は強いのだ。

 

 敵が弾幕を張ってきたので、デコイを使いつつ急上昇し弾を避ける。防御結界なんかに余計なリソースを割きたくはない。今回は戦車をやって、ついでに塹壕も破壊しておこう。


 隼の要領で高度1200くらいから一気に急降下する。自由落下つきのスピードだ。限界設定を超えている。多少は動きつつ射線を切る。弾を避けながら一気に片付ける。狙いを定め、二発程度銃弾を撃ち込む。

 すると、熱源反応が一気に高まり、戦車は大爆発を起こす。爆発の余波で近くにいた共和国兵諸共吹っ飛ばす。血飛沫をあげて、腕が吹っ飛んでいく。あまりにもグロテスクな光景だ。戦争をやってるんだ仕方のないことだろう。


 アルフェリアの方は…心配要らなそうだ。

 ゴリゴリにインファイトして戦車を撃破しているな。この調子でいけばもしかするとこの防衛戦の維持も見えてくる。


「俺も少しは働くかな。砲兵隊を叩いとくか」


 そうして北東の敵の砲兵陣地を補足する。今なら、うちの魔導士が戦場をかき乱しているので勝算はある。独断専行になるが、撤退の助けになるし、敵の侵攻を少し遅らせることもできる。一石二鳥だ。


「っ!?ルノー准尉!!何をするつもりだ!!」


「敵の砲兵陣地を焼き払います。我々の部隊が前線をかき乱している以上、今が好機かと」


「やめろ!!集中砲火で落とされるだけだ」


「こちらは航空魔導士です。やりようはいくらでもある」


「待て!!おい!ルノー准尉!?」



 一気に速度を上げて敵陣地内へ食い込む。時間との勝負。つまりは速度が命だ。ノーマルセルをぶっ壊すくらいの加速で行くしかないな。ここの砲兵を叩ければ、時間稼ぎにもなる。なんとしても叩かないと。


 縦横無尽に進み続け、数キロ先まで突き進む。通常、砲兵は前線から10キロほど先に点在しているが、侵攻しているので通常よりも前線に位置していた。だからこそチャンスでもある。


 目立たないよう地を這うように飛び、煙と土埃に紛れて接近する。多少の銃撃はあるが問題ない。懸念点は敵魔導士の存在だ。今回の目的は敵魔導士との好戦では無く、あくまで砲台の破壊だ。逃げに徹すれば勝ち目がないわけではないが。


 ある程度近づいたら一気に空へと上がる。


 術式構築をする。魔法系統は爆破術式だ。砲弾が大量にある、火薬の宝庫。でっかい花火を打ち上げてやるよ。敵はこちらに気づいているが、もうタイムリミットは終わっている。俺に、航空魔導士に接近された時点でね。


「チェックメイトだ」


 タン、と乾いた音を発しながら俺のライフルは術式を帯びて、一直線に砲兵陣地に伸びていく。

 弾丸は砲車の弾薬庫に着弾し、爆発の連鎖が始まる。


 ドオオオオオン!!!!!


 黒煙と共に赤い太陽が姿を表す。爆風が陣地の鉄線を薙ぎ倒し、砲身の破片は高く吹っ飛んでいく。砲手たちは悲鳴を上げる暇なく、爆炎の渦に巻き込まれることに。


「もう少し、欲張っておくか」


 近隣の砲兵陣地も射程内の場所は破壊しておこう。欲だが、まぁいいだろう。長射程用の術式を使用する。威力は落ちるが弾薬に火がつけばなんでもいい。周囲の敵もこちらにやってくるので、それの対応も同時進行だ。光学術式の一つであるデコイを飛ばして敵を錯乱。その間に俺は火薬庫を狙う。


 続けて数発トリガーを引く。それだけで爆発は起こる。

 悲鳴も聞こえてくる、やっぱこれは心にくるね。俺は大量殺人鬼じゃないか。カエサルくらい殺してんじゃないか??

 まあ、考えても仕方がない。これは戦争だ。恨むんなら宣戦布告してきた上層部を恨むんだな。俺は悪くない。多分??このくらい気楽にやれてるうちはきっと大丈夫だ。


 砲兵陣地を破壊し終えたので離脱する。もちろん帰りに敵陣地を荒らし尽くすプレゼントもつけてだな。

 と、全て終わった後すぐに中尉から通信が入ってくる。


「本当にやっちまうとはね、花火は綺麗だったかい??」


「そうですね。きったない色をしていましたね」


「はっ。独断専行は後でとっちめてやるから覚悟することだね」


「イエッサー」


 そして、通信を切る。

 とりあえず、今回の戦闘は帝国軍の勝利と言える。砲兵隊を排除したことで歩兵の生存確率も上昇し、撤退もかなりしやすくなるだろう。おそらく帝国軍は新しい防衛戦を築こうとしている。なら、敵の侵攻スピードを落とさなければならない。だからーー


「第二中隊各位へ、こちらFCP。その戦域に魔導士大隊、戦車隊、歩兵が侵入する。侵入までおよそ300。遅滞戦闘を継続せよ。繰り返すー」


 だから、勝つためには敵の機動戦力。魔導士の排除が必須になる。





 

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