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帝国魔導士は休みたい  作者: たつみ
第一章
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prologue 2 無茶な戦闘

「左に旋回するぞ!!救援到着までおよそ240!!」


「弾幕が強い!!防御術式の出力を上げろ!」


 少数で大人数を足止めする。一体どうすればいいのだろうか?俺にはわからない。これまでだってなんとなく生きてきただけだ。努力もしてないし、鍛錬も軍の規律通りにやっていただけだ。ただ、厄介なことに魔導の適性だけはあったのでこうやって謎に働かされている。俺が軍人?ふざけるな。どう考えても公務員顔だろう?


 現実戻るとするか。現実的な手段となると接近して錯乱が落どころだろう。見たところ機動性はこちらの方が上である。となると勝負は被弾せずに接近し、敵部隊内に侵入するところまでだが、結局のところそれが一番難しい。俺の固有の魔導能力としては機動性があるが、この装備だと火力に不安が残る。だが、このままだとジリ貧で押し負ける。要するに覚悟を決めろやるしかないだ。無論やりたくない。


「おい!エルヴィン!」


「あ?なんだ!今それどころじゃ」


「うるさい。俺が2個中隊は止めてやる。あとはなんとかしろ」


「はぁ!?何する気だよ??」


「突撃する。煙幕とデコイをありったけだせ」


「いやいや理屈はわかるが…敵は大隊規模で欠員もいない。しかも煙幕は届かねぇぞ?」


「わかってる。敵を錯乱してくれれば十分だ」


「マジかよ。お前すごいな」


「この状況では他に手はない。このままじゃ一個中隊だけ残して3個中隊は先に行くだろうからな」


 そうだ。時間がない。仕事を任された以上はどれだけ嫌でもやらなければならない。それが労働だ。でもボーナスくらいあってもいいんじゃなかろうか。使いたくもない、精神干渉術式によるアドレナリン等の脳内麻薬を出す。これ使いすぎると廃人になるから嫌いなんだよな。麻薬だよこんなもの。そして、魔力反応を示すデコイを発動させる術式を使う。最後に身体能力を底上げする術式。ノーマルセルが焼き切れるかもしれないが、これでやるしかない。


「ルノー君!無茶だよ!」


「無茶するしかないだろ?こんな時は。かわいそうだと思うなら援護してくれよ」


「もう。いつも無茶ばかり」


 アルフェリアは反対のようだ。優しいやつだ無理もない。俺とエルヴィンのようにドライになり切れない、やっぱり軍人に向いてないな。面倒なことをしてくれるバカがいると思えばいいんだこのくらい。


「無論、死ぬ気は全く持ってないぞ??でも共和国の豚どもが偉そうにしてんのムカつくじゃん。一発喰らわせてやろうぜ」


「ルノーが行くなら私も行く!」


 クロエがそう言ってくる。


「いや、お前はここで援護。俺がなんとかするから」


「確かに、偉そうな豚はムカつくな」


「ふふっ、クロエちゃん振られちゃったね」


「え!?そんなつもりは」


 こいつら一応銃撃戦やってんのに気を抜きすぎじゃないだろうか??なんか心配になってきたぞ。


「とりあえず戦闘150秒経過と同時にでる。だから援護頼むぞ」


「「「了解」」」


 うむ。なんとかなりそうだ。実際問題それしかない。森林地帯にデコイと模擬通信を配置していく。さすがに最精鋭ではないだろうから見破られることはない。そもそも最精鋭なら多分撃ち合いにすらならないだろうな。


 森林の木々をかき分けつつ低空飛行しながらデコイを配置していく。無論、多少の銃撃は飛んでくるが、敵は俺を視認できておらず、ただ反応を頼りに撃ってくるだけだ。そして、大隊で固まっている。散開してこない以上やり用はあった。これが散開して各個撃破してきたら、マジで終わってた。その点には豚にも感謝だな。

 さて、さっさと養豚場にお帰りいただこうか。


 あと5秒、4、3、2、1


「エンゲージ!!」


 ノーマルセルの出力を上げる。最大までだ。それで速度は一気に400まで跳ね上がる。敵側面に移動し、森林地帯の上空へと一気に上がっていく。もちろんデコイも起動だ。俺とデコイの魔力反応は合わせて9箇所。そしてデコイも上空へと上がるシステムだ。動かず見抜かれる心配はない。あとは、


「そうだ、ベストタイミング」


 右手の後方は煙幕の援護が発生する。これで敵に視認されることもない、条件クリア。あとは接近して指揮官の豚をあの世送りにしてやるだけだ。せめて俺の出世の礎にでもなるがいい。冥土の土産に他の豚どもの首もつけといてやる!!


 高度1000、1500、2000!!煙幕地帯を抜ける、そろそろ視認される。俺を警戒してるのは二個中隊か、あとはエルヴィン達と撃ち合いをしている。バカだな。さっさと一個中隊残して行けばよかったんだ。


「い!?一騎きます!!」


「何ぃぃ!?ヤケクソの攻撃だ撃ち落とせ!!」


 指揮官風の男がそう叫ぶ。ヤケクソ?そうだな理論性のあるヤケクソと言ってくれ。だけど、お前の首はもらってくぞ。ムカつく共和国の軍人であることを恨むんだな。


「は、早い!?たまが当たらない」


 斜線を避けながら上空へ進む。いきなり旋回したり、大きく弧を描きながら飛ぶ。敵の銃弾に当たるのは嫌だからな。痛いのはごめんだ。


「なんだ!?その機動は!??速く撃ち落とせ!!」


「当たった!!いえ、デコイです!!デコイが混ざってます!」


「何ぃ!?」


 その隙をついて銃弾をプレゼント。一発は外したが1人は撃墜した。距離は300。問題ない。ノーマルセルは共和国製の魔導機関より性能がいいようだ。何が言いたいかというとナメクジがウサギとの競争で勝てると思うか?答えは簡単。勝てるはずがないだ。


「速度460!?突っ込んできます!!止められない!!」


「何を!?」


「やぁ」


 こいつが指揮官か、案外簡単だったな。デコイすらろくに識別できずに玉も当てられない。煙幕があったとはいえ、レベルの低さが露呈しているな。

 ふっ、豚どもとは言っていたが。本当に豚のような体をしているな。このように接近される事態を想定してなかったといった表情か。


「ピクニック中ですかぁ??ああ、まさか地図はお持ちでない!?」


 そう言ってやると顔が赤くなり、怒りが爆発しそうな感じといった顔色になっている。この手の豚には煽りが一番きくんだ。特に小太りの軍人はよくね。


「う、うちころっ!」


 パァン!!!


「もういい。黙れ」


 喋る前に処分、うむ気分がいい。みんなもゴミを掃除できたあとはスッキリするだろう?それだ。だが、小太りを撃ち殺したとは言ってもゴミ掃除は終わってない。きちんと隅々までやり切ってのゴミ掃除である。

 あぁ、手っ取り早い方法があった。


「大尉!!おのれ!!うテェ!!!!撃てぇ!!」


 四方八方からの銃乱射、40以上の銃乱射はちょっと厳しいものがある。が、避けることに関して言えば別にそんなことはない。なぜなら遮蔽物はたくさんあるのだ。


「おい!マークに当たったぞ!味方を撃つな!!」


「気をつけろ!ああ!!味方を撃墜するな!!」


 敵が混乱、混乱、大混乱。ここまでくればあとは楽である。だがまぁ、窮鼠猫を噛むとは言うしな、気を抜かずお仕事いたしましょう。

 飛び回りながら銃の先端についた剣で1人を防御術式ごと貫通して刺し殺す。返り血を頬に浴びる。やはり人を殺す感触というのは思った通り嫌なものだな。だが、仕事である。しかも責任は一兵卒の俺ではなく上司に当たる参謀本部だ。俺は悪くないのだきっと。そもそも悪いのはお前らだ。戦争を始めた共和国を攻めろ。次に狙うのは…


「うわぁ!!ロッドもやられた!!くそ!!」


「あいつ!ロッドを盾にしてクソォ!撃て!敵をとれ!」


「こちら122魔導大隊。カルメル大尉をロストにつき次席指揮官でっ……」


 こいつか。

 首に銃弾を打ち込み、即死させる。


「中尉殿!!!」


 次に狙うのは次席指揮官だろう。もうクリアだ。さすがにそろそろこっちの援軍も来る頃だ。ここらへんが潮時だな。よくやったさ。指揮官2人をやったんだ。もう十分役割は果たした。あとは離脱だ。


「エルヴィン!!離脱する!!手伝え!!」


「了解、」


 通信機からエルヴィンはそう言う。

 ロッドとやらを盾にしつつ、背後に防御術式で固める。要するに前方の防御術式を犠牲に背後を守る。そして一気に離脱する。空中を蛇行しながら銃撃を避けつつ速度を上げる。縦横無尽に逃げながらデコイを発動させるのも忘れずに。

 しかし、このデコイというもの便利だ。自身とほぼ同じ外見をした光学術式。錯乱にも脱出にももってこいの最高のおともだ。


「ザザッ・・・・ザザー・・・お前が時間を稼いでくれたおかげで準備できたぜ」


「ふっ。上出来だ。さっさと離脱するから手伝え」


「了解。無事に帰ってこいよ」


「誰に口聞いてんだ。俺はルノー様だ」


「そうでございましたね。国王様」


 そう言ってエルヴィンからの通信が途切れる。背後の敵は俺を目を見開いて追ってくる。やだ怖い。しねーだの帝国のクソ猿がァァァァァァだの、さまざまな暴言を吐いてくる。様子を見るに数機が追ってきているのか。他の部隊の奴らは撤退をしようとしていたのだろう。となると、俺を追ってくるこいつらは独断専行。軍人として恥ずかしい奴らだな。俺は軍人だけど軍人じゃない。心はれっきとした公務員だ。くそ、戦争をなんとか生き抜いてからずスローライフを送ってやる。それが俺のこれから軍人をやる理由だ!


「ついてくるな!!豚ども!!独断専行のクソどもめ、あの世にお前らも送ってやるよ」


 背後をついてくる奴らの背後を逆に取るその方法は簡単だ。

 急上昇し、円を書くように後ろ回りする形でくるりと背後を取るのだ。射線切りも兼ねたやり方だ。

 これは速さが命のだが、鈍重な共和国魔導士はついてこられない。つまり、俺の勝ちだ。


「しまっっっ!ガッ!!」


 まず一騎落とす。背後の大体の奴らはエルヴィン達が威嚇射撃しているので問題なし。防御結界をしっかり背後に回していれば、基本抜かれることはないだろう。となれば、前方にいる残り2騎だ。ライフルで処理して終了だ。


 続けて二発の鉛玉を貫通を強めた術式で結界ごと撃ち抜く。

 頭を打ち抜きこれにて試合終了だ。こちとら無傷で指揮官2人を含む7騎を落として生還、実にハッピーだ。これはもはやコールドゲームだ。ベースボールに例えると5回10−0ノックアウトだ。いかにも素晴らしい戦果であろう。

 ここでアルフェリアからの通信が入る。


「ルノー君!撃つけどいい??」


「ああ。構わない。負け犬どもにぶち込んでやれ」


「イエッサー」


 その通信の直後、背後で大きな轟音が響く後、音は衝撃と同時に爆風と共に吹き付ける。森林の木々はざわめき、黒煙の中に赤い炎が舞っている。


 爆破魔導。術式構築に時間はかかるが、その威力は絶大であり戦艦の砲撃すら凌駕する。もちろん今回は術式構築に時間がかかるため、簡易的なものであり威力は控えめだが、数機を撃墜するのは容易い威力だ。追撃に来る魔導士を叩き落としてくれた。


「たーまやーー」


 西方の国に伝わっているという感嘆符をこのような場所で使うとはな。何はともあれ、適性のシグナルはかなり減った。敵は俺たちを舐めてかかってくれるというサービスをしてくれた。だからこその大番狂せだ。精々共和国に逃げ帰ってくれ、そして2度とくるな。戦争するなと進言してくれ。俺に労働を増やすな。


 



ーーーーーーーーーーーーーーー



 と言うわけで俺の初戦は終わった。結論から言おう、世界はこれより大戦争時代に突入する。

 バカだよ、マジでバカだよ。もう、命がいくつあっても足りないから。

 とまぁ、大変なことになったわけさ。

 俺のスローライフは夢と消えたのさ、マジでおかしいよな?帝国に、世界に、戦争に災いあれ!

 愚痴は置いといて、この物語はどうにも俺が主人公らしい。なんともまぁ、変な男をピックアップしたものだ。

 まぁ、諸君には長くお付き合いいただきたい。俺の人生を、俺のバカみたいな世界で生き抜く姿に、笑いながら付き合ってくれ。またあいつやってるよ、って風に。


 では、またどこかで。


 ルノー・カールヴァイン。

 


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