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死出の福引  作者: 氷見
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見田花音の話

 少し前までは「美咲」が一番多くの作品に出演してるキャラだったけど、現在私の書いた作品で一番出演率が高い「見田」の話。


 いくつかの作品で死亡したキャラ達を出していこうという作品だけど、別にそのキャラが出た作品を知っている必要は全くない書き方はしているつもり。

「あ、名前…見田、見田花音12歳です」


 名乗ってなかった。このままキミって言われ続けるのもイヤだし名乗っておいた方がいいだろうと思ったから。これだけ2人で騒がしく?会話してるのに相変わらず誰もこの会話に混ざってこようとはしないし、私にとって金田さんとのつながりは今のところ持続させておきたい、こんなところで他の人たちみたいにいつ来るかもわかんない番を待って黙ってるなんて出来そうにないから。

「12歳。若さぴちぴちろり盛りじゃねぇか」

「ろ、ロリコンなんですよね?」

「おう。言ったろ?12歳で死ぬとか勿体ないよなぁ。こんな可愛いのに」

 また可愛いって。可愛いって言っておけば喜ぶだろみたいなその安易な発想にちょっとイラっとくるけど、本心で言ってくれてる気もしないでもない。


「あの……えっと、ロリコンって事は……私みたいなのがタイプなんですか?」

「んー?見田さんでいいかな?まずね、ロリコンってのは女の子が好きなのね、それは確か。ただ、それとは関係なく見田さんが20歳だったとする。見た目も相応な。だとしてもオレは見田さんに惚れてたんじゃないかって自信はあるよ?」

 は?え?顔が紅くなってる自身がある。こ、この人何言ってんの?そ、それってつまり今現時点でも私に惚れてるって意味になるんだけど?

「ちょっと話しただけで惚れるも何もないじゃん!とか思われてそうだけど、ちょっと話しただけで見田さんとの会話は楽しいなって。何より可愛い」

 またか。やばい、多分本気で言ってくれてるんだ、これ。でも、そんな事言われても…もう死んでるわけだしさ。

「あ、まぁいきなり8つも年上のおっさんに可愛い連呼されて好きだとか言われても困るか。もう死ぬの待つだけだし。オレさ、どうやって死んだのか記憶蘇っちゃった。あ、ホントにここ死後の世界なんだって今実感してて、しゃべってないと怖いんだよ、悪い」

「怖い?」

「怖いよ、泣きたくなってくる。何でみんなこんなに落ち着いてんのか謎すぎる。見田さんはまだ記憶戻ってない?」

 まだだ。ただ死の瞬間の記憶は無いけど、多分自殺したんだろうってわかる。原因が実は違うんだとしても自殺しようとしたその心が否定されるわけでもない。そっか、怖いっていうか哀しくなってくる、1人で何もしゃべってないと、その事ばかり考えちゃって。

「死後の世界があるとか驚きですよね。この後どうなるんだろ?生まれ変わるのかな?」

「どうなんだろうなぁ」

「天国とか地獄とかあるのかな?地獄はちょっと怖いですよね」

「見田さんは地獄に堕ちるような生き方だったの?見田さんがどう生きてきたかわかんないけど少なくとも善良でしょ?それぐらいはちょっとの会話でもわかるって」

 善良か。善人って事かな?善人ってほどではなかったけど、悪い事はしてないつもりだった。でも、悪い事してないのにイジメられるなんてあるんだろうか。ふと腕を見てしまう。リストカットの跡はこの死後の世界でも消えずに残ってる。はぁ……ふと視線を感じて急いでもう片手で手首をつかんで隠したけど間に合わなかったと思う。見られた、金田さんに。善良だって言ってくれたのに、自ら命を絶ったオロカモノだってバレちゃった。

「……悪い、見なかった事には出来ないけど…そっか。何でそうなったのか理由もわかんないけどオレは見田さんを肯定するし、可愛いと思うし少なくともここにいる間は仲良くしたいし。…見田さんは悪い事したわけじゃないんだろ?」

 悪い事なんてしたとは思ってない。でも、だったら何で…ダメだ、泣くな私、みっともない。泣いたってもうどうしようもないじゃないか、死んじゃったんだから、もう。

「あ、あぁぁあ。悪い、イヤな事思い出させちゃった?大丈夫、見田さんは可愛い、超可愛い。オレもう最高のタイミングで死ねたんだなって、最高の人生だったじゃんって思えるぐらいに今幸せに思えてるから」


 うっ、泣き辞め私、金田さんは…いい人だ、この人を心配させちゃダメだ。可愛い以外にもっと気のきいた言葉無いの?って思うけど、…そうだよ、この人褒めてくれてるの外見ばっかりじゃん。20歳で出会ってもとか会話が楽しいとかも言ってくれてはいるけど。他に言い様ってあるよね?ホントに私の事好きならもっとさ。ロリコンだって言うなら、私の身体に欲情する!とかそれぐらい…言ってきたら殴るしかないか、気持ち悪い。でも……

「あの、今更なんだけどこの身体って実際に存在するのかな?」

「唐突に泣き止んだな?あー、少なくともオレはぶっ刺されて死んだね。けど、その傷無いし、実際に存在するってなると遺体は消えたのかよってなるし、精神体みたいなもんじゃね?服とかただのイメージかも。よし、肉体が実際にあるのか自分の身体じゃわからんし、こう触り合いっこしよう!」

 さわりあいっこって何かエッチな響きじゃない?抱き合おうとかなら自然だけど。

「おぉ?この服脱げねーぞ、見田さんはどう?」

 脱げないの、これ?………いや、脱げるじゃん、普通に。……視線感じる。

「金田さん?あの、さっきからもしかして私にエッチな事しようとしてますか?」

「え?してないよ?服をめくったのは見田さん自身でオレは脱がしてないし。さ、さあ実際に脱げるかどうかもっとがばーっと。全部脱いでみないと」

「するかバカ。触りっことか…どこ触る気だったんですか?」

「そりゃあっちこっち」

「うわー、このロリコン…優しい人だなー、いい人だなーとか思ってたのがバカらしくなってくるぐらいサイテーな人だった」

「えー?でも、今見田さんそう言いつつすっげーいい笑顔だけど?それと今みたいに敬語無しでいいぜ。こんな世界で生前の年齢なんてどーだっていいだろ?……12歳とか最高ではあるが」

「…その最後の余計な一言今後言うな。……私の事好きとか言うならもっとこう、ときめきそうな一言とかさ……」

「キスしよう!」

 ダメだ、このバカ、何も考えてない。……なんてね、この人は多分…本気も混ざってるけど自殺した私をずっと肯定し続けてくれてるんだと思う。ほんの少し前まで自分の事同性愛者なんだって思ってたけど、金田さんとなら実際キスぐらいしてもいいかなーとか思えてはいる。だって、どうせもう死ぬっていうかもう死んでるんだけど、少なくとも今のこの状態ではなくなる。なら最後にそういう事してもいいんじゃないかなとは思うんだ。ただいきなり「いいよ」ってのも悔しいから、まだ拒否はしておく事にする。というより刺されたって言った?殺されたって事なのかな?


「皆さま、申し訳ありません、思いのほか手間取ってしまい長い長い行列となってしまいましたので異例ではあるのですが説明させていただきます」


 どこかからか声が響いてくる。頭の中に直接とかじゃなくて、どこかからか。…あれ?もしかして…あ、まあいいや、まずは聞こう。金田さんも黙って聞く気でいるみたいだ。


「お気づきの方も多いでしょうが、ここは死後の世界的なところで皆さまは死の直前の状態にあります。まだ死んではおりません。人間というのは生物の中ではかなり特殊でして、なかなかに死なない不死の生物であります。だからといって生物の頂点だ!などと調子に乗らないように。ただそのような特殊性を持つ生物というだけなのです。そしてですね、普段はこのような長い行列とはならないのです。が、今はこちら…あ、私たちは死使…あなた方のイメージでいえば死神とでも言えば通じるでしょうか。神ではないのですが、死神という印象で考えて頂ければそれが一番近い存在かと思います。私たちの側で不手際があり対応スタッフ不足となっており行列が今も長くなり続けています。誠に申し訳ありません。あ、質問は後で受け付けますので」


「ライトな死神だな。スタッフって」

 金田さんが誰に言うでもなく呟いてるけど、確かに何か死神のイメージとは違うと思う。この発言主は人間の死神のイメージを絶対わかってない。


「行列自体本来であればしっかり時系列。先に死んだ順になっているはずなのですが、行列すらまともに出来ない混沌とした状態も少なくない時間続きその後、適当に行列化したため、『オレの方が先に死んだのに何であいつより後ろなんだ!』とおしかりを受ける事もある状態になっていますが、ご容赦下さい。この世界の時の流れからすれば誤差の範疇とご納得下されば」


 あー、やっぱりそうだ。最初人の群れだったのは行列になってなかったころだ。そのギリギリ行列になる前に私は覚醒してる。っていうか誰がいつ死んだかなんてわからないからそんな事で怒る状況でもないしなぁ。


「そもそもこの行列は何なんだ?といえば先ほども申した通り、正式に死を迎える手続きの為の行列という事になります。ただし!その前に皆さまには…何と!我々より!プレゼントがあります!!」


「何かうざくね?」

「こんなアナウンス慣れてないんですよ、異例だって言ってたし」

「下手くそだよな。要点を先に言え、先に」


「その名も死出の福引。皆さまには1回だけ福引を行う権利があります。権利ですので引かなくても構いません。いいですか、よく聞け、雑談で聞き逃すなよ。特等は死の直前30秒前に巻き戻れるのだ!この世界の記憶を持って。死後の世界の記憶とかわけのわからない事を言う人間は時々いるだろう!デタラメを言っているヤツもいるが、その中には実際にはこの30秒巻き戻りで生還したヤツもいるという事だ!そう、わかったな、わかったよな、死に方次第では30秒巻き戻れば死を回避する事も出来る!」


「うぜぇ。死後の世界の話するヤツはいても福引して蘇ったんだ!なんて聞いた事ねぇよ」

 その通りだ。何この胡散臭いアナウンス?詐欺?

 死使は「あらゆる世界、星において『人間』は不死であり、『人間』が生まれた世界には同時に死使が生まれる」とそういう設定の作品から持ってきた。

「死神の精度」の死神が一番印象が近い存在だけど、それも別に知っておく必要が無い。別に死ぬ前の人間に付きまとって死の承認をしたりしない。ただ盲目的に死んだ人間に生物的な死を与えるだけの存在。意識、自我はあるし善悪の概念も持ち合わせているので自分達の仕事を歯がゆく思ってるわけだけど、今回のこの作品にはその設定は一切寄与しないので気にしなくていい。

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