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ブラックコーヒーを少し濃いめに入れ、調剤室をノックする。
「失礼します。コーヒーお持ちしました。」
少しふんぞり返って座っているリュウ先生は、どこぞの社長のようだ。
「ミサ、これ、約束していたもの。」
小さめの木箱に入っていたものは、シャンプーとトリートメント、化粧水と保湿クリームだった。
「え、これって・・・」
「ミサの肌質と髪質に合わせて調合した。特別製だから使い心地は保証する。ファンデーションとかはまた後でね。昨日はそれしかできなかったから。」
「え、え・・・わざわざ私のために、昨日仕事にいらしたんですか?」
「ま、別の薬を作るついでだから。コーヒーの対価だよ。」
「そんな・・・申し訳ないです。コーヒーくらいで、そんな・・・」
申し訳ないやら、ありがたいやら、感動やら、いろんな気持ちがごっちゃになって、上手く言葉にできない。
下を向いたままの私にリュウ先生が近づいてきて、
「これ、アルの店で買ったらいくらだと思う?」
と耳元に口を寄せて、金額を呟いた・・・目玉が落ちそうになった。
「な・・・え、えええ?」
「フフ、オーダーメイドだからね。コーヒー何杯分になるかなぁ?」
そして席に座り、ちょっと意地悪く微笑む。
「せっかくミサのために作ったんだから、使ってくれるよね?この世界、防腐剤なんてないから、早めに使わないとダメになるからね?」
― この、インテリ眼鏡め!!私が押しに弱い小心者だと分かっててそういうことを!!!
「あ、ありがとうございます。大切に使わせていただきます。」
― 私の感動を返して!いや、ありがたいんだけどさ!!
「うん、合わないことはないと思うけど、何か異常があったら教えて。あぁ、あと、ソレ使ったら他の一般商品は使えなくなると思うから。なくなりそうになったら言うこと、分かった?」
「は、はい・・・ワカリマシタ。」
― タチの悪い定期購入詐欺に引っかかった気分だ。
他の化粧品は謹んでお断りしよう。返せない負債が増えていくだけだ。
・・・・・・私、借金返せる日がくるのかしら?
「おはよう~。二人ともやっぱり早いね~。あれ、どうしたの?なんか空気が重いよ?」
ジュエル先生が、今日も9時ジャストに出勤してきた。
この世界での商品の額は、ポイントになりますが、語彙力のなさにより表現できなかったので「金額」にしました。
ピッタリはまる言葉があったらぜひ教えてください(涙)




