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「実際、もう帰れないしねぇ。だったらさ、気晴らしにここで働いてみない?無為に過ごすよりずっといいと思うよ~。」
お色気イケメン様のジュリィさんが、ニコニコしながらこちらに向かってくる。
そして、私の肩に手を置いたと思ったら、ずいっと顔を近づけて、
「それに、このブースは人手不足でさ、困ってたんだよね。ね、助けると思ってさ、一緒に仕事しよ?」
と、破壊力抜群の笑顔で私に言った。
― イケメン様の笑顔が眩しすぎる!!
私は自慢じゃないが、押しに弱い。
そして、なにより小心者だ。
道中でのティッシュは断れず、家には段ボールで作ったティッシュ専用収納があるくらいだ。
― 案外、硬くて使えないよね、タダで配られるティッシュって。
はっ、今はそんなことを考えている時じゃなかった。
目立たないからって忘れられたんだろうけど、怒って騒ぎたてたところで、もう帰れないことは確定済みのようだ。
いくら向こうの落ち度とはいえ、働かずに居候するのは申し訳なくて、小心者の私には耐えられそうにもない。
それに、余計なことを考えてしまうより、動いていたほうが確かにいいのかもしれない。
「わかりました。私は何をすればいいのでしょうか。」
ため息交じりに返事をした。
「そうかそうか、ミサトさんは優しい人だね~。」
嬉しそうな声のマイケル様。
「ほんとぉぉ?あぁ、ありがとう。いい人で良かったわぁ~。」
神々しい微笑みをたたえるエリィ様。
そして、ただ頷いているルキウス様。
「ミサトさんはね、私たちと同じ人界ブースで働いてもらうことになるよ。そこで仕事のことは詳しく説明するからね。それじゃジュエル君、あとはよろしく頼むよ。」
「承知しました。じゃ、サト、これから人界ブースに移動しようか。あ、歩ける?抱っこして連れて行ってあげようか?」
「ひぃぃ~!ジュリィさん、もう一人で歩けるので大丈夫ですから!!」
これでもかというくらい、頭をブンブンと振りながらお断りした。
「そう?でも心配だから、エスコートはさせてね、お姫様。」
私に手を差し出し、ウィンクするジュリィさん。
― ・・・小心者の私には、イケメン様の所業は恐ろしくてついていけません。