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「まったく。人前で『くん』づけはやめろって言ってるだろ。もう酔ってるのか?」
「ええ、もうさ、ボクたち身内みたいなもんだからいいじゃない?どうせいつかはバレることなんだし。」
ジュエル先生とリュウ先生がこんなに仲がいいとは驚いた。
「皆さん、とても仲がいいんですね。驚きました。3人でよく飲まれたりしてるんですか?」
「う~ん、そうねぇ。実はね、アタシ、一室にスカウトされたことがあって、ちょっとだけいたことがあったのよ。ジュリィちゃんとは以前から面識はあったんだけど、3人でこうして集まるようになったのは、その時からね~。」
「えええ、そうなんですか!アリィさんが一室に!!」
「そうそう。いろんな人に対応できるようにね。でもねぇ、ほら、アタシってこんなじゃない?余計なアドバイスしたくなるし、ウジウジを見てるとラリアットしたくなっちゃって。やってらんなーいって辞めちゃったの。」
― アリィさん、その筋肉でラリアットしたら、その人ただじゃ済みませんね・・・。
「え、ていうか、断ることもできるんですか?」
「いやだ、当り前じゃないの。合わない仕事して病んじゃったら本末転倒じゃない。サト、もしかして知らなかったの?」
「そういうものだと思ってたから、断る選択肢なんて思いつきませんでした・・・」
「もう、サトったら。この前も言ったけど、アンタ、もっと疑問持ちなさいよ?ま、この二人のお守りに疲れて辞めたくなったら、アタシが拾ってあげるから、いつでもいらっしゃい。」
「ホントですか?アリィさん、頼りにしてます!!」
― 退路があると思うと、気持ちがぐっと楽になる。
「えええ、サト、今さら辞めるとかダメだからね~。室長として却下します!」
「それは聞き捨てならないな。」
― あれ、どこからか声が聞こえてくる。
「へぇ・・・君の髪って見た目より細くてサラサラなんだな。」
― ん?なんだろう、私の髪の毛をひと房持って、くるくると弄んでる人がいる。
「この香り・・・あぁ、あのシャンプー使っているのか。それにこのファンデーション。」
と言いながら、私の頬を優しく触っている人は・・・どなた様でしょうか。
私にはリュウ先生に見えるんですが、実は別人だったりするのでしょうか?
驚きのあまり、固まったまま動けない私。
「君は、髪も肌も乾燥気味なんだな。アル、これじゃないヤツあっただろう?」
― アル?アルってアリィさんのこと?
アルって呼んでるの?
「リ、リュウちゃん、それはサトのお財布事情で仕方なかったのよ?」
「仕方ない?あぁ、アルは商売が仕事だったか。じゃあ、今度俺が特別に作ってやるよ。ねぇ、その代わり、君は俺になにをくれるの?」
狙った獲物は逃がさない、とでも言うように、私の頬を触ったまま、片肘をついてニヤリと笑っているリュウ先生がいた。




