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「おはようございまーす。」
ホワイトな労働条件だったので、朝の出勤時間は気にしなくてもいいかな、とは思ったが、一応30分前に来てみた。
案の定、まだ誰も来ていない。
― 昨日は二人ともお疲れのようだったし、今日はギリギリでの出勤かもしれないな~。
診察室はだいぶ片付いたものの、まだ雑然としている。
― あ~、昨日のお茶会、そのままになってる。
せめて給湯室に片付けてくれたっていいじゃん。
ていうか、そこのスライム君にお任せすれば、あっという間なのに。
あぁ、もう!本当にお母さんになった気分だ。
ブツブツ言いながら片付けていると、三室を開ける音がした。
「おはようございます。」
「ああ、おはよう。」
まず出勤してきたのはリュウ先生だった。
・・・・・
・・・・・・・・・・「は、早いな。」
それだけ言って、調剤室へと消えた。
― お、おう、そりゃどうも、です。
あらかた片付けたところで、どうしよう、と悩む。
― 朝のお茶、入れたほうがいいのかなぁ~。
前の職場では、新人を中心とした若者による朝のお茶入れだけは習慣として残っていた。
飲みにケーションとかいう慣習が廃れたため、なんとか仕事以外でのコミュニケーションを維持するため、らしかった。
友人からは、『何それ、前時代的~』とバカにされ、実際、面倒くさ、と思っていたが・・・。
なるほど、『お茶に関するあれこれ』を理由に、双方自然にコミュニケーションが取れるのか!
調剤室をノックし、「リュウ先生、コーヒーでも淹れましょうか」と声をかけてみる。
「え、あ~・・・ではお願いしようかな。」
「わかりました。お好みはありますか?」
「え、お好み?」
― あれ、私、変なこと聞いてる?普通聞くよね?
「ブラックとか、砂糖とか、ミルクとか。」
「あ、あ~、そうか。ではブラックで。」
― なんだろう?なんか態度が違う・・・怖がられている?
昨日・・・ガミガミ言い過ぎたかな。




