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ピンクの聖女様が修行に戻り、私がテーブルの上を片付けていると、レイ君から質問される。
「室長センセー、なんかあった?」
― やっぱり、気付いてたか。
「天界の人が来たってことは、もう一人の聖女様の件じゃないかな。」
「ああ、断罪されるって言ってた聖女様?かなり厳しい表情してたけど、大丈夫なのかな。行かなくてもいいの?」
「どうだろうね。なにかはあったんだろうけど・・・。」
― エメラルドの聖女様の身に危険が及ぶ場合は、天界の方が対処するって言ってた。
断罪とやらが行われた可能性はあっても、最悪の結果にはならないはず。
「リュウ先生が指導を再開したってことは、大丈夫なんじゃないかな。」
「なるほど。事件は起きたかもだけど、無事にこっちに連れてきたってことかな?」
「そうだと思うよ。指導の時間が終わったら、すぐに行くと思うけど。」
「ああ~・・・・ねぇ、ミサトちゃん、本当に大丈夫?」
「天界の人が身辺警護してるっていうし、きっと大丈夫だよ。」
「そうじゃなくて、俺が心配してるのはミサトちゃんのこと!これから、室長センセー、聖女様にとられちゃうよ?」
― あ、そっち・・・レイ君に心配かけるくらい、態度に出てたのかなぁ、私。
「前にも言ったけど、公私混同はしません。心配してくれてありがとね。」
「ミサトちゃんがそう言うならいいんだけどさぁ・・・。あ、もう一人の聖女様もさ、気晴らしにって店に連れてくるといいよ!」
― うぅ、レイ君が優しい。
「うん、もしもの時はそうさせてもらうね。レイ君もそんな気遣いができるようになったんだねぇ・・・なんか感動した!」
「なにそれ―。別に店の売り上げに貢献してもらおうと思っただけだってば。その言い方、なんかオバ・・・」
― その先は、言わせない、絶対、再び!!
「あー、あー、それよりさ、あの聖女様、会長さんに大事にされてるって、どういうこと?」
― 悪くすれば、詐取されかねないとしか思えなかったんだけど。
それに、そのことはピンクの聖女様もご存じのようだった。
「ああ、そこは気付かないんだ、ミサトちゃん。あのさ、本気で利用しようとするなら、わざわざお店なんて預けないよ?それに、目をつけられないようにちゃんと配慮もしてる。万が一自分に何かあっても、聖女様が自立できるように、生活の基盤整えてるじゃない。大人なやり方だよねー。」
― あ・・・そういうことだったのか。
そうだよね、手っ取り早く稼がせるなら、もっと直接的な方法があるもんね。
会長さん、外見だけじゃなく中身もカッコイイ人なのか・・・。
リュウ先生に似ている、と言ってたけど、そんな気遣いを憎まれ口で隠してるんだろうなぁ、きっと。
聖女様も、そんな会長さんに認められたくて頑張ってるのかな。
・・・べ、別に、リュウ先生がロックオンされなさそうで安心した~、って思ってるわけじゃないからね!
それから1時間くらいして、ピンクの聖女様が調剤室から出てきた。
「お疲れ様。それじゃあお店に行きましょうか。」
「ああ、もう疲れましたぁ!レイさんのお店で癒されたーい!!」
「聖女様、宿題は忘れずにお願いしますね。次に来るときにはあなたが作った薬を持ってくること。わかりましたね?」
― すっかり、学校の先生である。
「はーい、わかりました。じゃあ、また来週来ますね~!」
「お疲れさまでした。あまり遅くならないうちにお帰りくださいね。」
ピンクの聖女様は、開店を急かされていることから、しばらくの間は毎週来ることになっている。
そうして、レイ君と腕を組みながら、タウンへと向かったピンクの聖女様であった。
「さて・・・次は教会か。」
リュウ先生が呟いた。




