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「はい、どうぞ。どう?リュウ先生の指導は。」
ソファーで休憩をしているピンクの聖女様に、レイ君がハーブティーを差し出した。
「はぁ~、落ち着くぅ。レイさんも聞いてくださいよぅ!リュウ先生ったら、厳しすぎますぅ。私ぃ、薬なんて作るの初めてなのにぃ。」
ぷぅっと頬を膨らませる聖女様は、とても可愛らしく見える。
リュウ先生の眉がピクッと動いた。
「あはは、そっかそっか。でもさ、見込みのない人には厳しくしないと思うよー?会長さんの期待に応えるべく、聖女様も頑張らないとね。」
― すご・・・レイ君がきちんと手綱を握ってる。
「わかってますぅ。でもでもぉ、一つはちゃんと作れるようになったんですよぅ?私って、才能あるかも!!ね、リュウ先生?」
「ええ、そうですね。もう少し繊細な魔力の扱いを覚えていただけたら、いろいろな種類の薬が作れるようになりますから、精進してください。」
― この短時間で、しかも初日で一つマスターしたのか。
やっぱり、召喚されるだけあって、能力は高い方なんだ・・・。
「もうっ!私ってば褒められて伸びる子なんですよぅ?リュウ先生ったら、会長とそっくり!」
― なぬ?聖女様が慕っている会長さんとリュウ先生が、似ているだと?
「へぇ~、会長さんとリュウ先生って、そんなに似ているの?」
「そうなんですよ、レイさん!私ぃ、これでも聖女なんですよ?癒しの力なんて使える人、滅多にいないんだから、もうちょっと優しくしてくれてもいいと思うんですよねぇ~。」
― とっても・・・そうは見えないけどね。
「そうかなぁ?そうじゃないことは聖女様が一番わかってるでしょう?大事にされてるじゃないですか。」
「そりゃまぁ、そのくらいは・・・。私だってバカじゃないですもん。あっ・・・ってことはぁ、リュウ先生も私のこと大事に思ってくれてるってことぉ?」
― ぶーっ!どうしてそうなる!!
危うくお茶を吹き出しそうになった私である。
「ええ、そうですね。転移者の方に危険があっては大変ですから。そういう意味では大切なお客様ですね。」
「・・・聖女様、おふざけが過ぎると、リュウ先生に教えてもらえなくなりますよ?」
「はぁ~い、ごめんなさーい。」
ペロッと舌を出す聖女様。
― ・・・聖女様、この調子でずっと周りの皆さんと接していたのだろうか。
だよね、そうじゃなきゃ追放なんてされないよね。
これまでの話から、男女の距離には厳しそうなお国柄だったし、きっと女性は慎ましやかなほうが美徳とされていたんだろう。
そんな世界でこの調子だったら、『おもしれー女』でお話したくなるよなぁ~。
マリアさんも、きっとこんな感じだったんだろうなぁ。
和気あいあいと休憩しているとき、三室に来客があった。
それは、天界の方だった。
そして、リュウ先生の耳元で、なにやらコソコソと報告をしている。
リュウ先生の表情が一気に厳しいものになった。
― 天界の方にリュウ先生のあの表情・・・。
はっ、まさかエメラルドの聖女様になにかあったのでは!!
「さて、休憩はここまでです。続きをしましょうか、聖女様。」
天界の方が退室された後、リュウ先生が休憩の終わりを告げた。
「ええ~、もうですかぁ?」
「聖女様、もう安全なのでしょう?時間があるなら、帰りにお店に寄って行く?」
「はいっ!皆さんにも会いたいしぃ、そうしよっかな!」
「それじゃあ、早く終わらせないとですね。頑張ってくださいね。」
リュウ先生の表情の変化に気付いたのか、レイ君が聖女様に再開を促した。
「はいっ!ちゃ~んと待っててくださいね、レイさん!」
そして、リュウ先生と聖女様は、また調剤スペースへと入っていった。




