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それから、リュウ先生はケヴィン様の元に行き、候補地となる国の書物や薬草を事前にもらうこととし、また、二室に正式に依頼して、同じく資料を集めた。
ケヴィン様もルカ君ミカ君も仕事が早く、間もなくけっこうな量の資料と薬草が三室に届けられた。
私も、資料整理や薬草の分類を手伝いながら、二人の聖女様を待つ。
リュウ先生は、届けられたものと格闘していたため、毎日のように残業していた。
それでも、朝起きた時には隣で寝ていたので、ちゃんと帰ってきてくれている。
朝のボヤキから察するに、どうやら、三室に転移陣を設置するのは無理だったようだ。
そして、最初に来たのは、ピンクの聖女様だった。
「こんにちは~!ようやく落ち着きましたぁ~。会長からもぉ、お尻たたかれてるんで、よろしくお願いしまぁす!」
― 相変わらずポジティブで元気な聖女様だな~。
「はいはい。それではこちらへ。ミサ、1時間したら声をかけて。」
ピンクの聖女様とリュウ先生が、調剤室へと入っていく。
その後ろ姿は、まるで『先生と生徒』としか見えなくて、ちょっと微笑ましく感じた。
1時間後に声をかけようと、調剤スペースを除いたとき、
「きゃーっ、リュウ先生、すごぉい!!」
「次は、あなたがこれをやるんです。ほら・・・って、力を注ぎすぎ!もうちょと加減して。」
「ええ~!!これ以上ムリぃ!やだー、リュウ先生がいじめるぅ!!」
などと言い合っている様子がうかがえた。
マイペースな聖女様に、ほとほと手を焼いているリュウ先生。
その様子を見て、ちょっとだけほっとしてしまった私であった。
「あはは、室長センセーも大変だね~。見てよ、あの顔、おもしろっ!」
レイ君が、私の後ろから声をかけてくる。
一応、担当はレイ君だし、聖女様のなぐさめ役?としてその時間帯にはいてもらうことにした。
「レイ君・・・面白がってるとしっぺ返しくらうよ?」
「室長センセーってさ、あの手のタイプの女の子、ほんと、苦手にしてるよねぇ。」
「あはは・・・そ、そうかもね~。マイペースで自分に正直で、思っていることをハッキリ言えて・・・私としては少し羨ましいなって思うけど。」
「へぇ~、ミサトちゃんはそういう風に見てるのかぁ。」
― ん?レイ君はそう見てない・・・のかな?
「じゃあ、レイ君はどう思ってるの?聖女様のこと。」
「どうだろうね~。守秘義務があるので教えませーん。ま、でも周囲を振り回すタイプの子なのは確かだね。」
「またそうやって・・・!ねぇ、前から思ってたんだけどさ、レイ君、私のことちょっとバカにしてない?」
「そんなことあるわけないでしょー!ミサトちゃん、どうしたの?機嫌悪いの?あっ・・・そか、室長センセー取られちゃって・・・」
「・・・・・・あのねぇ。いくら私だって公私混同はしないってば。」
「やだー、ミサトちゃんが怖いー。ほらほら、そろそろ呼びにいかないと、室長センセーが限界そうだよ?俺、お茶淹れてくるから、呼んであげなよ。」
― ・・・まったくもう!
でも、レイ君の言う通り、リュウ先生の眉間の皺が深くなってきたから、そろそろ限界かも。
そこで、私は二人のいる調剤スペースをノックする。
「聖女様、リュウ先生、お茶が入りましたので休憩しませんか?」
リュウ先生が、あからさまにホッとした顔をしていた。
「あーん、ミサトさんが優しい!!ねぇ、聞いてくださいよぅ、ヒドいんですよ?私、素人なんですよ?それなのにぃ、全然手加減してくれなくてぇ!」
そう言うと、ピンクの聖女様が私に抱き着いてきた。
― おおう!まさか、前の国でも今の国でも、誰にでもこんなスキンシップしてたのか?
マリアさん以上だな!
「あ、あはは、それは大変ですね。早くモノにしないと会長さんにも怒られるでしょうからね。さ、こっちに座ってください。」
聖女様の背中をトントン叩きながら、椅子に座らせる私であった。




