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ケヴィン様に唆さ・・励まされ、自身の道を見つけた聖女様。
「指導者とは・・・リュウ先生ですね。」
聖女様は、凛とした表情をリュウ先生に向ける。
― あ・・・なんかトラウマ・・・。
その知性的な表情は、オリビアさんを思い出させた。
「ええ、リュウ先生は優秀な薬師ですからね。きっとあなたの力になってくれるはずです。」
ケヴィン様は、相変わらずキラキラを振りまきながらの笑顔である。
「・・・聖女様がそう決められたのなら、お手伝いはさせていただきます。」
少し間を置いた後、リュウ先生が答えた。
― だよねぇ、そう言うしかないよねぇ。
自分の使命を全うしようと真摯に頑張っていらっしゃる聖女様を前に、断れるはずもない。
私だって、聖女様には幸せになってほしいし、そのための協力は厭わない。
厭わないけどさ、でもさ・・・いろいろと思うところもあるわけで・・・。
「聖女様、これからどうされますか?断罪とやらを待たず、さっさと違う国に行きますか?」
「そう・・・ですね。次にここに来る時までに行き先を決めます。ケヴィン様が選んでくださった国について、私も少し勉強したいと思います。」
どこまでも真面目な聖女様である。
「わかりました。ただし、条件があります。うちの部下が危険だと判断した時には、すぐに避難させます。よろしいですね?」
「はい。お気遣い感謝いたします。そうならないよう祈るしかありませんね。」
「それでは、今日はこのぐらいにしておきましょうか。」
すると、どこにいたのか、聖女様を連れてきた天界の方が、音もなく現れた。
「では彼女を頼みましたよ。」
「はっ。かしこまりました。それでは、聖女様、帰りましょう。お手を。」
その天界の方は、聖女様の手を取ったかと思うと、二人は光に包まれてその場から消えた。
教会には、三人が残される。
「・・・・・・一体、どういうことですか。」
「はて、どういうこととは?人々を癒す使命を全うするには、最善だと思ったまでですよ?」
リュウ先生の質問に、ケヴィン様がコテンと首をかしげながら答えた。
「よくもまあ、そんな戯言を・・・。ほぼ誘導してましたよね。それに能力の解放まで・・・。」
「いやあ、さすが女神が与えた力だけあって、聖女様の能力は素晴らしいですね!それに、リュウ先生だって少々手持ち無沙汰だったでしょう?転移者の方々の相手、レイさんに丸投げして、ほとんどしてないっていうじゃありませんか。」
― うわぁ、よくご存じで!!
「あなたに、それを、言われたくはありませんね。この教会で安穏としているあなたには!」
「ええ、リュウ先生と違って私は年寄りですからねぇ。休み休み仕事するくらいでちょうどいいのです。」
― ケヴィン様、『オヤジ神官』とか『おじいちゃん神官』とか言われたの、根にもってたの?
まさかの意趣返し!!
だからって、私のトラウマまでほじくり返さなくていいじゃないのよぅ~。
これも神の試練なのだろうか・・・。
「冗談はさておき、本番はこれからです。報告によると、聖女様の置かれている状況はよろしくない。地方への巡礼も、本来の仕事ではないようですね。病を治せない聖女様を地方に行かせたのは見せしめでしょう。」
― あ・・・傷も病気も治せないと国中に知らせるようなものだ・・・それってつまり・・・。
「聖女様の評判を貶めるため、ということですか?」
「おそらくそうでしょうね。偽物扱いするために。」
「思っているより、時間の猶予はないとみていいでしょう。」
ケヴィン様の口調は、とても厳しいものであった。




