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「世界とは、これほど広いものだったのですね・・・。」
世界地図とにらめっこをしながら、行き先をピックアップしていた聖女様がポツリと呟いた。
「ええ、そうですよ。あなたのいる国など、世界に比べればちっぽけなものです。そして、女神様はこの世界の安寧を見守るお方。たとえ国が違かろうが、与えられたそのお力を正しく行使することが、あなたのお役目なのです。」
ケヴィン様がニコリとほほ笑むと、キラキラが降りそそいでいる。
― 仰る通りなんだけど、飲んだくれているのよねぇ~・・・。
世界の安寧を願う崇高で美しいお姿なんだろうけど、どうしても酒瓶片手に酒盛りしているシーンが邪魔をする。
「ケヴィン様、私は魔法も使えず病に苦しむ国に行き、そこに暮らしている人たちの助けとなりたいです。」
― オウ!!あなたのほうが、よっぽど女神様だよ!
聖女様の言葉に、ケヴィン様のキラキラがますます降り注ぐ。
「あなたのその思いは、きっと女神様に届くでしょう。なにも憂うことはありませんよ。おや・・・?少し触れてもよろしいですか?」
「・・・・?え、ええ、構いませんが。」
ケヴィン様は、スッと聖女様の頬に手を添え、じっとそのお顔を覗き込む。
突然の出来事に、「え・・・」と戸惑いながら、顔を赤らめる聖女様であった。
― うわぁ~・・・・・なにやってんのよ、ケヴィン様。
そんなキラッキラのイケメン様のご尊顔が近づいたら、正気じゃいられないって!
私だったら、ショックのあまり気を失う!!
「あ、あの・・・これは・・・」
「大変失礼しました。あなたの力は、人々の力を活性化させるというものでしたね?」
「え、ええ。その通りです。」
「それは、人間に限ったことではないようですよ。命あるものにはすべて効果があるようですね。」
― 命あるものって、例えば動物や植物も対象ってこと?
「命あるものとは、どういうことでしょうか。」
「ふふ、実践してみたほうが早いですね。」
ケヴィン様はそう言うと、窓際においてあった植木鉢を持ってきた。
何の花だろうか、蕾をつけている。
「あなたが人々に行使するように、この植物に力を注いでみてください。」
― 力を注いでって、センターに来た時点で能力は封印されるのではないの?
まさかケヴィン様が使えるように、封印を解除したってこと?
はっ!あの頬に触れたのって、そういうことなの?
「わかりました。やってみます。」
聖女様がふぅっと深呼吸をし、その手を蕾にかざした。
その白魚のような手から淡い光が発せられたかと思うと、パァッと蕾が開いたではないか!
その光景に、聖女様自身が驚いていたようだった。
「これって・・・」
「植物の成長に力を貸したようですね。リュウ先生、この植物を鑑定してみてください。」
ケヴィン様は、当然ながらリュウ先生のスキルについてご存じのようだ。
リュウ先生はその植物をまじまじと見つめている。
スキルが発動するときって、目の色が変わったり、光ったりするのかと思って期待したが、ビジュアルに変化はないようだ・・・ちょっと残念。
「これは・・・。薬効成分が普通の花より強いですね。驚きました。」
「どうでしょう、聖女様。新たな国に行かれたら、薬草を育て、あなたが薬を作られるのは。」
ケヴィン様の言葉に、聖女様がハッとした顔になった。
「幸い、このセンターには良い指導者がおりますからね。魔法でなくても病は治せることをあなたが証明するのです。」
「そんな方法、思いつきも・・・私にも病を治すことができるのですね。」
ケヴィン様と聖女様が手を取り合うお姿は、キラキラも相まってとても神々しいものだが・・・。
― その指導者ってさ、リュウ先生だよねぇ・・・。




