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「それってかなり危ない橋を渡ってるんじゃない?大丈夫なの?」
「そうなんですぅ。それで、今後のことで色々とお願いをしに来たってわけなんですぅ。」
― 追放された国に舞い戻るなんて危険な真似をしてまでのお願いってなんだろう?
こちらとしては、無事を確認できたので良かったけど・・・。
「今はどこにいるの?」
「今はぁ、商会の拠点がある国にいるんですけどぉ。そこにある教会からこっちに来れないかなぁって。」
「うんうん、わかった。後でその国の名前を教えてね。あとね、そういう時には事前に知らせてくれないと、こっちも動けないし、聖女様だって危険な目にあっちゃうかもしれないから、これからはお願いしますね?」
「はぁ~い、気を付けま~す!」
― ・・・危機感がまったく感じられないんだけど・・・本当にお願いしますよ!
「それと!今後はあんまりフラフラしないでね。その国まで追放されちゃったら、行くところなくなっちゃうからね。」
「あっ!お隣の国はぁ、割と自由なんでその辺はきっと大丈夫!!」
「はぁ~・・・あのね?好みの真ん中どストライクだからって、他人様のものに手を出しちゃダメ!わかりましたか?」
「はぁ~い。」
― すごい、レイ君が大人に見える!
「あっ、あともう一つお願いがあるんですよ~。」
「もう一つ?」
「私、商会でお世話になってるじゃないですかぁ。それで、商会の役に立てって言われちゃって。」
― 商会の役に立つって・・・スパイ工作でもさせられるのかしら。
それって、まさか、ハニートラップ要員じゃ・・・。
「ええ!?聖女様、これ以上危険なことはダメだよ~。」
― やっぱり、レイ君も同じことを思ってたんだ!
「違いますよぅ、もう!お店を1件任せるって言われて、そこで商売しろって言われたんです~。」
― ほっ。
ピンクの聖女様のお店か~・・・お花屋さんとかカフェとか似合いそうだな。
「あ、そういうこと。よかった~。それで、どういうお願いなの?」
「私の力って癒しの力じゃないですかぁ。」
「ああ、うん、そうだったよね。じゃあ、治療院みたいな感じ?」
「それでぇ、どうにかして薬を売れって言われまして。レイ君の前の先生って、確か薬の先生でしたよね~。いろいろ教えてほしいなって!」
― なんですと!?
「あ、ああ、うん、そうだね、そうだけど・・・」
レイ君がちらっと私を見た。
「このハーブティーもお薬なんでしょ~?隣の国にはぁ、薬草がいっぱいあるから、私の力を使えばきっとよく効く薬がつくれるはずだって、会長が!」
「あ、ああ~、なるほどね~。そっか、うん、そっか。じゃあリュウ先生に聞いてみようか。・・・ミサトさん、リュウ先生を呼んできてもらえる・・・かな。」
オリビアさんの時の苦い記憶が蘇る。
イケメン大好きっ娘の聖女様が、リュウ先生をロックオンしたらどうしよう・・・。
いや!ここで公私混同はダメ!
「わかりました。少々お待ちくださいね。」
平静を装い、私は調剤室へリュウ先生を呼びに行く。
「失礼します。リュウ先生、少しよろしいですか?」
「なに?聖女様は帰ったの?」
「いえ・・・。聖女様がリュウ先生をご指名で。相談したいことがあるんだそうです。」
リュウ先生の眉間に皺が寄る。
「・・・・・・俺に?」
「はい、リュウ先生に。詳しくは聖女様からお聞きください。」
「・・・・・・」
リュウ先生は返事もせず椅子から立ち上がり、診察室へと向かった。




