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『うっかり国を追放されちゃった』と、テヘペロ感覚で口にしたピンクの聖女様を前に、レイ君も私も驚きのあまり、固まってしまっていた。
「あ、あの~・・・」
ピンク聖女様が口を開いたところで、ハッと我に返る。
「あ、ごめんね。いきなりだったからびっくりしちゃいましたー。聖女様ったら、今度はなにをしちゃったんですか?」
一瞬で平静を取り戻したレイ君が、聖女様に質問する。
「神官様が言うにはぁ、私に聖女の品格のかけらもないんだって!もう、失礼しちゃう!!」
― 品格って・・・。
そういえば、ピンクの聖女様、よく街に遊びに行ってるって言ってたなぁ、お忍びで。
「でもぉ、私なりにちゃんと仕事はしたんですよぉ?あれは、王子様が悪いんです!」
「王子様って、跡取りの王子様?」
「そうですよ~。ちょくちょく神殿に遊びに来てたんですけど、つい話が盛り上がっちゃって!それで、何度か一緒に遊びに行ったんですよ~。それが見つかっちゃって、テヘッ。」
― テヘって・・・。
一国の王子様とお忍びで遊びに行ったのがバレたら、そりゃあねぇ。
あれ・・・確か、王子様には婚約者の方がいらっしゃるんじゃなかったかしら?
「ああ~、それ、気を付けてねって言ったじゃないですか~。その王子様、確か婚約者の方がいたでしょう?そこらの貴族や騎士とは違うんだから、ほどほどにねって注意したのに・・・バレちゃったんだ。」
「バレちゃった!」
そう言って、ペロッと舌をだすピンクの聖女様であった。
でも、たかだか街にお忍びで遊びに行くくらいで、国外追放なんてなるんだろうか?
・・・まさか、盛り上がったついでに、一線越えちゃったやつだろうか。
「もう、なにやってるんですか。そういう事には厳しいお国柄だったでしょう?未婚の男女が二人で歩いているだけで白い目で見られるんでしょう?」
「だってぇ、王子様って、私のどストライクなんだもーん。」
まったく悪びれる様子もない。
「はぁ~・・・聖女様、これで何人目ですか?」
「え~、レイさんが冷た~い!だって、私の周りにいる人たち、みーんなキラッキラのイケメンなんですよ~?仲良くしたいって思いません?ねぇ、ミサトさん!」
「え、わ、私ですか?いやぁ、どうでしょうねぇ~。あはは。」
― いきなりこっち振らないで!
そもそも、ピンクの聖女様みたいに美しいわけじゃないんだから、誰からもお呼びなんてかからないってば!!
「それで、品格がないうえに王子様を唆したとかで、追放されちゃったわけですね~。それで、今はどこにいらっしゃって、どうやってセンターに来たんですか?」
― それ!!そこが一番気になってたの!
「うふふ~。私だってぇ、ただ街に遊びに行ってたワケじゃないんですよ~。そこで知り合った人たちに助けてもらっちゃって!それでぇ、こっそり国に忍び込ませてもらって、神殿まで送ってもらったんですよ~。」
― す、すごい行動力!!
「知り合った人たちって・・・どういう素性か聞いてもいいのかなー?」
「実はぁ、各国を渡り歩いている商会の方たちなんですけどね。実はお隣の国の密偵だったりするんですよ~。最初に聞いた時はびっくりしちゃった!」
「「えええ~・・・」」
― 王子様を唆しただけじゃなくて、反逆罪まで追加されたね、これ。




