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それから1カ月、聖女様からの連絡を待つ私たちであるが、その間にも他の転移者が面接にやって来る。
ジュエル先生から引き継いで、三室での面接を行う人たちは、話を聞いて、状況を確認するのがメイン。
多少、不平不満は出るものの、おおむね順調に使命を果たされているようだ。
だが、そんな転移者の中にも少々心配な人がいる。
1カ月に1回の面接が、2か月に1回になり、3カ月に1回になり・・・、しばらく連絡が来ていない人がいるのだ。
その人も、聖女様と呼ばれている女性である。
こちらは、少しマリアさんに雰囲気が似ていて、ピンクブロンドの髪に明るい茶色の瞳の色をした美しい女性だ。
リュウ先生も気にしていたようで、これ以上期間が空くようだったら二室に調査依頼を出そうと話していた。
そんなピンクの聖女様から、半年ぶりくらいに予約が入っていた。
担当はレイ君で、助手は私である。
最初はリュウ先生が担当していたが、いつの間にかレイ君に変更になった。
マリアさんに似ているだけあって、断罪されそうなエメラルドの聖女様とは違い、天真爛漫なマイペースな女性である。
きっと苦手なタイプで、レイ君に丸投げしたと私は睨んでいる。
「レイ君の担当している聖女様から予約が入ったから、来週あけといてね。」
「聖女様って、どの聖女様?」
― そうでした、ここにくる女性のほとんどが『聖女様』でした。
「ほら、半年くらい連絡がなかった、ピンクの聖女様。」
「ああ~、あの人。良かった、ちゃんと生きてたんだねー。」
転移者の人はいつ何時危険に巻き込まれるかわからない。
アンジェリーナさんのように、魔物と戦い命を落とす方だっているのだ。
そして、悲しいかな、センターではすべての転移者を助けることはできないのが現実だ。
「この半年、なにがあったんだろうね?」
「さー、あのとおりマイペースで自分の気持ちに正直な人だからねー。やり過ぎちゃったんじゃない?」
「やり過ぎたって・・・なにを?」
レイ君とのやりとりを見ていても、ラルドさんのように国の中枢に食い込むようなキレものには、どうしても思えない。
どちらかといえば、変化を受け入れ、むしろ楽しんでいるように見えてたけど。
「なんだろうねぇ?ま、来週になったらわかるよ。」
― もう!そうやって、いつもはぐらかすんだから!
アズ師匠のお店で、ナンバー3までのし上がってきたというレイ君。
マダム(お姉ちゃん師匠)に認めてらうために努力しているのは、凄いと思うし尊敬する。
でも、最近、ますます足元を見られている感じがして・・・なんか悔しい!
それから一週間後、ピンクの聖女様が三室へとやってきた。
「こんにちは~。レイさん、お久しぶりです!あっ、ミサトさんも!」
いつもながら、私はついでである。
― いいんだけどさ、慣れてるから・・・。
「いらっしゃい。えっと、半年ぶりくらいですよね?ずっと心配してたんですよー。ちゃんと連絡してくれないとダメじゃないですかー。さ、こちらにどうぞ。」
― うっそだぁ~、予約が入るまで忘れてたくせにぃ!
と、脳内でツッコミを入れつつ、ハーブティーを淹れて、ピンクの聖女様に出す。
「あはっ!ごめんなさーい。えっとぉ、うっかり国を追放されちゃってぇ。ようやく落ち着いたので、面接に来たんですよ~。」
― 『うっかり』ってなに!!
国を追い出されるほどの、『うっかり』ってなに!!
ハーブティーをひっくり返さなかった私を褒めてほしい。




