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聖女様は、静かに泣かれていた。
私は、聖女様の隣に座り、タオルを差し出し、そっと背中をさする。
「見苦しい所をお見せしました。申し訳ありません。」
そう言って、顔を上げた聖女様は、しっかりと前を見据えており、スッキリとした、そして凛とした表情になっていた。
「それでは、今後のことについて話し合いましょうか。」
リュウ先生の言葉で、私も聖女様の正面に移動する。
ここまでくると、話を聞くとか、状況を確認するという段階ではない。
今後のことについては、室長であるリュウ先生にお任せすることにした。
「国を追放されたとして、あてがありますか?」
「いえ・・・。できれば、魔法を行使しなくても生きていける国に行きたいと思います。」
「わかりました。ご自分の行きたい国を探すことは可能ですか?」
「神殿には、蔵書の閲覧室がありますので、可能かと。」
聖女様とリュウ先生が、淡々と話を進めていく。
「では、できるだけ早めに、行き先の候補を決めてください。」
「わかりました。次は1カ月後・・・ですね。」
「時間に余裕があるのでしたら、1カ月後でなくても構いませんよ。聖女様もお忙しいでしょうからね。」
聖女様は、黙って頷く。
「それと、身分の高いものが動いているとなると、聖女様の断罪がいつ行われるかわかりません。明日かもしれないし、数年後かもしれない。万が一の時のために、予約なしでもセンターに来れるよう手配します。ですので、身の危険を感じた時には、躊躇なくここに来てください。いいですね?」
「お気遣いありがとうございます。そうさせていただきます。」
「そちらの神殿に常駐しているスタッフにも、このことは伝え、身辺警護について要請します。ですので、まずはしっかりと寝て、体力を温存してください。」
「はい・・・。本当にありがとうございます。」
それからいくつか確認し、聖女様の面接が終わった。
聖女様を見送った後は、マイケル先生に報告である。
聖女様が害される危険があること、召喚された国から逃げたいと思っていることを伝える。
「ふむ。それは緊急案件となるね。身辺警護の要請とセンターでの一時保護、逃亡先の確保をお願いしよう。」
マイケル先生も納得され、至急天界に掛け合ってくれるとのことであった。
「さて、次は・・・」
― 次?あとは聖女様の答えを待つばかりではないの?
「次って、他になにかあるんですか?」
「念には念を入れて、だよ。ただ国外に行ったところで、それで終わりじゃないかもしれない。追手がかかったり、道中なにがあるかわからないからな。」
「それなら、神殿と神殿を直接繋げばいい話じゃないんですか?それが一番安全ですよね。」
― 今いる国の神殿と、逃亡先の教会か神殿に転移陣設置すれば、一瞬じゃん!
「それじゃあ味気ないだろう?自分の国のために召喚した聖女を追放することが、どれだけおろかな事なのか、身をもってしらしめてやらないとなあ。」
― ・・・まさか、それ、『ザマァ』ってやつじゃないでしょうね。
「リュウ先生!それで聖女様が危ない目に合ったらどうするんですか!!」
「そうしないために、今から相談しに行くんじゃないか。」
「え・・・?相談って、どこに・・・?」
「ほら、適任者がいるじゃないか。人間に肩入れする自称窓際族が。」
そう言うと、リュウ先生はニタ~リと笑った。




