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リュウ先生と私は、マイケル先生に報告へと向かった。
いつもと変わらない、明るいマリアさんに迎えられ、その天真爛漫な笑顔にちょっと癒された。
普段なら、『私、なにかしたっけ』と裏を読んでしまうのだが、今日は相当疲れているらしい。
「おや、今日はジェームズ君が来ていたのではないのかい?彼との話し合いは済んだのかい?」
マイケル先生も、今日避難してきたのは承知のようだった。
「そのことで、報告にあがりました。少し長くなりますが、お時間よろしいですか?」
「うんうん、構わないよ。でも、その二人の顔・・・あまりいいことではなさそうだね。まずは座りたまえ。」
マイケル先生に促され、執務室にあるソファーに座る。
「それで?彼は今後どうするって?」
「それなんですが、実は・・・」
リュウ先生が、三室で起こった事件をマイケル先生に説明した。
「えええ!なんだって!?じゃあ、ジェームス君・・・じゃなくてラルド君は、ジン様の世界に行っちゃったのかい?」
「ええ、そうです。彼のことですから、すでに向かったか、遅くても明日には行くでしょうね。」
「ああ・・・そう~・・・はぁ~、困ったなぁ。」
マイケル先生も、最後は私たちと同じ反応であったが、『困った』とはどういうことだろう。
「マイケル先生、あの、困った、とはどういうことでしょうか?」
― まさか、ラルドさんの行く世界はもう決まっていて、すでに話を通していたとか?
マイケル先生は、恨めしそうに私たちを見る。
「ラルド君が一介のスイーツ職人で収まると思うかい?」
「・・・それは、どういう・・・」
マイケル先生の意図が汲めない私である。
「収まらないでしょうね。ジン様の代理とかなんとか言って、足繁くセンターに来ては無茶な要求をしてくるでしょうね。」
― え、えええ?まさかそんなことあるわけ・・・あるわけ・・・。
「ミサト君、彼は二つも国を滅ぼした策士だよ?このまま終わるわけがないじゃないか。これはルキウス君とエリィ君にも話を通さないといけないなぁ・・・。」
がっくりと肩を落とすマイケル先生である。
「マイケル先生、一つ聞いてもよろしいですか?」
「なんだい?リュウ君。」
「ラルド君は、高位の方に名を貰いました。ジン様はおそらくその世界の頂点の方でしょう。その場合、ただの人間にはどのような影響があるのでしょうか。」
「ああ、それねぇ・・・。一般的に考えれば、その方の眷属になるよねぇ。普通の人間じゃなくなっちゃうよねぇ。ジン様がそこまで考えているかどうかはわからないけど。」
「やはりそうですか・・・。」
― え、ええ、そうなの!?
高位の方に名を貰うって、そんなに大事なの?
まさか、ラルドさんはそこまでわかってて、名付けてもらったということ?
「ラルド君がそういう存在になっちゃった、ということは・・・面倒なことになるねぇ。」
「ですね。なにをふっかけられるか、わかったもんじゃない。」
「ま、まさか、いくらなんでも・・・そんな・・・」
「だからねぇ、ラルド君は軍師で宰相で裏社会のボスで、相当な策士なんだよ。でなければ、ここまで生き延びていないよ?」
「ジン様も、とんだジョーカーを掴まされたってわけだ。」
― それ、褒めてるのか!?
とても褒めているようには思えないんですが。
「二人とも、報告感謝するよ。ジン様とラルド君じゃあ、君たちではどうしようもないもんね。引き続き、相手をよろしく頼むよ。」
― ・・・それは、免除してもらえないだろうか。




