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こうして、テディさん改めラルドさんの行き先が決まった。
― これでいいのか?本当に?
何度も自問自答している私であるが、本人の希望だから・・・仕方ないよね。
「ジェー・・・」
「ラルドです。」
キッとリュウ先生を睨むラルドさん。
「・・・ラルド君、本当にジン様の世界に行く、ということでいいんだな。」
「もちろんです。いただいた名に恥じぬよう、働かせていただきます。ええ、損はさせませんよ。」
その答えを聞いて、リュウ先生は面倒くさそうな表情になった。
「話はまとまったな。そうと決まれば、我がし・・・」
「そうと決まれば、早速これからのことを話し合わなければ!!」
ジン様の言葉を遮って、ラルドさんがグッと握りこぶしを作り、ジン様に熱いまなざしを送る。
「・・・つい先ほどすべて決まったであろうが。我はこれから、我が永遠のしもべとともにだな・・・」
― な・・・『しもべ』呼ばわりだけでもたくさんな、何故そこに『永遠』までくっつけるの!!
「ああ、アリィさんのお店で石鹸を購入するのでしたね。それからセンターの食事情の調査。かしこまりました。不肖ながらこのラルドがセンターをご案内いたしましょう!」
そう言って、ラルドさんがすっくと立ちあがった。
「いや、我はそこの・・・」
「なにを仰います!私がこれから住む場所、働き先、食の普及、魔法の使い方について、話し合うことは山ほどあるというのに、時間がもったいない。では、リュウさん、ミサトさん、私はこれで失礼します。さあ、ジン様、行きましょう。」
ラルドさんは、ジン様の腕を取り、半ば強引にソファーから立たせて引っ張っていく。
「おい、待て!何故お前と一緒に行かねばならぬ!」
「これも部下の勤めです。さあ、お立ち下さい、さあ、さあ!!」
「引っ張るでない!なんなのだ、貴様は!!」
「あなた様の忠実なる部下ですよ。ほらほら、さっさと行きますよ!」
そうして、こちらが口を挟むヒマもなく、二人はあっという間に三室から消えた。
・・・・・・調剤室がしーんと静まり返る。
「はぁ~・・・。」
リュウ先生の深いため息が響く。
「本当に、あれで良かったんですか?」
「いいもなにも、本人がその気になっちゃったんだから、誰も止められないよ。」
「魔法の話を聞いて、即決でしたもんね。」
「その前にはもう、行く気満々だったろ、あれ。」
「「はあ~・・・」」
リュウ先生も私も、ため息しか出てこない。
「・・・マイケル先生のところに行くけど、ミサも行くか?」
「・・・私が一緒に行ってもいいんですか?」
「・・・・・・あいつらが戻ってきたら、凄く面倒くさい事態になると思うぞ。」
「・・・・・・ご一緒してもいいですか。」
「そのほうが賢明だ。」
ジン様とラルドさんは、これからアリィさんの店に行って、どこかで食事をして・・・あ・・・。
「・・・ジン様専用の身分証・・・渡しそびれました。」
「ああ~、もういいんじゃね?ラルド君がどうにかするだろ。」
どっと疲れた私たちは、足取りも重く、一室へ向かうのであった。




