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ジン様を前に、テディさんのワンマンショーが始まった。
テディさんが召喚されてからのこと、召喚された国を売って隣国に渡り、さらにその隣国さえも他国の餌食にしたことを、身振り手振りを交えて、熱弁をふるう。
時には面白おかしく、時には悲壮感を漂わせ、聞いている者を飽きさせない口調だった。
ジン様も、時折合いの手を挟みながら、最後まで聞かれていた。
あのジン様が、人間のお話を最後まで聞かれるとは・・・さすが一流の商人、話術も一流である。
ただ、話が長くて・・・・・・。
かれこれ、2時間ぐらいは経過しているのではないだろうか。
リュウ先生は、途中から話は聞いてないわ、あからさまに不機嫌な顔になるわで、見ているこっちがハラハラした。
1時間を過ぎたあたりで、諦めてしまった私は、お茶を入れ替えたりして気を紛らわせた。
「あっはっは、愉快愉快。人間からこのような面白い話が聞けるとはなぁ。お前、なかなかの策士のようだな。」
「いえいえ、私などまだまだですが、お褒めに預かり光栄です。お楽しみいただけたようでなによりですよ。」
― よ、ようやく終わった・・・。
今日は満足して、このまま帰ってくれないかしら。
「ふむ・・・お前、自分のいた世界に飽きたのだな?すべてをリセットでもしたくなったか?」
ジン様の声色が変わった。
テディさんは、それに答えることなく、ただニコニコしている。
「ならば、我に仕えるか?ちょうど人材を探しておったしな。」
― え・・・?ここでスカウト!?
リュウ先生も、ギョッとした表情になっていた。
「人材ですか?この私になにをお求めでしょう?」
テディさんの顔から笑顔が消えた。
「お前・・・」
― ゴクリ。
ジン様の次の言葉を固唾を飲んで待つ三人である。
「お前、『ケーキ』なるものは作れるか?」
「「「・・・・・・え?」」」
― ・・・・・・『けーき』って聞こえたんですが、聞き間違いじゃないよね。
この前紹介して、お手本のような食レポをいただいた、ケーキのことだよね?
「ケーキですか?い、一応確認しますが、何かを測定する計器とか、街を豊かにする景気とか、経営部門をサポートする経企のことでしょうか。」
「は?ケーキといえば、甘味以外、なにがあるのだ?」
― やっぱり、ケーキだった!!
その答えを聞いたテディさんが、俯いている。
頭脳や才能を求められたテディさんにとっては、ショックな要求だったのだろうか。
しかし、しばらく俯いているテディさんの様子がなんかおかしい。
肩を震わせていると思ったら、「クックック」と笑っているではないか。
「この私にケーキ職人になれと?これは面白いことを仰る御仁だ。この私に!ケーキを!」
「以前、そこのしもべと食した甘味だ。あれを我が世界にも流通させたくてなぁ。」
腕を組み、目を閉じてウンウンと力説されているジン様である。
「次は食を制する・・・悪くない提案だ。あれ、あれあれあれ?そうなると、私の次の就職先が決まっちゃったってことですかね?」
― えええ、そんなんでいいの!!




