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勢いよくドアを開け、入ってきたのは、ジン様であった。
― どうしていつもいつも、こんな時に突然やって来るの!!
この前だって私一人の時にやって来て、その前はキャロルさんがいた時にやって来て、今回はテディさんがいる時に・・・って、まさかどこかで見てるんじゃないでしょうね。
そこで、私はハッと気付く。
― ま、まさか、このネックレスにそういう機能でも・・・?
・・・・・・いやいや、そんなわけがない、あるはずがない。
突然のジン様の来訪に、三人ともポカーンとしている。
「おい、しもべ。なにを呆けておる。我が来たのだから、アレを出せ。」
― アレ・・・って、ハーブティーのことか?
しかも、『しもべ』ってなに?
いつ、誰が、あなたのお世話係になったというの!?
しかし、大人な私は仕方なく席を立つ。
すると、私が座っていたところに、ドカッと腰を下ろし、また優雅におみ足を組んだ。
「おう、久しいな、薬師よ。」
「・・・これはどうも。先日はうちの部下がかなりお世話になったようで。」
「はっはっは。気にするでない。それに心配することはないぞ。なにもお前の部下に手出しする気なぞ、これっぽっちもないのだからな。」
リュウ先生の顔が引きつる。
ジン様の御前に男性用のハーブティを出し、仕方なくテディさんの隣に座る。
ジン様といえば、上品な所作で香りを楽しみながら、ハーブティーを味わっていた。
「・・・ミサトさん、この傍若無人な御仁はどこのどなたですか?こんな方、センターにいましたか?」
テディさんが私に耳打ちをする。
「この方は、つい先日センターに協力することになった世界のお偉いさんでして、リュウ先生のハーブティーをいたく気に入られて、何回かお見えに・・・」
「はあ・・・私の知らないうちにそんなことが・・・」
「おい、そこでなにをコソコソ話しておる。」
「ああ、いえ。ところで今日はどういったご用件ですか?」
ジン様は、前回と同様にラフな服装であるということは、また逃げ出してきたのだろうか。
「なにを言っておる?この前の続きに決まっておろうが。次は我に食を提供するのだろう?それに、前回はこの茶を持ち帰るのを忘れたからなぁ。」
― ・・・忘れてなかったんだ・・・。
「それにな、あの大女の店で買った石鹸だが、大層評判が良くてなぁ。リピ買いというやつだ。」
― 『大女』って・・・一応、女性として扱ってくれているのか。
それに、『リピ買い』って、ほんと俗っぽい方だな!
「隣にいるお前は、ここの者か?」
ジン様が興味を示されたのか、テディさんに話しかけた。
「私ですか?いえ、私はもともとここの患者です。つい先刻、避難してきたばかりですよ。」
― テディさん、患者じゃないですよね。
と、盛大にツッコミたいが、心の中だけにしておく。
「ほう、避難とな。なにをやらかしてきたのだ?面白そうだな、我に聞かせてみろ。」
「いえいえ、たかだか国の一つや二つ潰してきただけのこと。高貴なお方に聞かせるような面白い話などありませんよ。」
ジン様を前に、ニコニコとしながら答えるテディさん。
― リュウ先生といい、テディさんといい、なんてメンタルしてんのよ。
すると、ジン様の目がスッと細くなる。
「国を潰してきただと?ふむ、興味が湧いた。その話、詳しく聞かせろ。」
― あ~あ・・・本格的に興味を持っちゃった。
これは、長くなりそうだなぁ・・・。
リュウ先生を見ると、全てを諦めたような目をして無表情になっていた。




