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テディさんが国を潰したのは、これで2つめ・・・二室案件にはならないのだろうか。
古臭い習慣に縛られた国を潰し、次は圧政を強いた国を潰したのだから、むしろ英雄の類なのか・・・?
話しを聞けば聞くほど、こんがらがってしまう私であった。
「天界の方とは事前に打ち合わせしてましたからね。私が到着してこちらに送ってもらうと同時に教会の機能は封鎖。というわけで、帰るところがなくなっちゃいましたので、しばらくここでお世話になります~。」
「・・・そういうことは事前に説明しておけよ。無駄に心配したじゃないか、ジェームズ君。」
リュウ先生が本名呼びに変わった。
「あはは、すみませ~ん。ほらぁ、機密事項ってどこから漏れるかわからないでしょう?敵を欺くにはまずは味方からってよく言うじゃないですか!」
― いやいや、外の世界に行けない私たちが、どうやって秘密を漏らすのよ!
あ・・・これぇ、私たちをびっくりさせようとしてやらかしちゃったヤツだな、きっと!!
「ああ、はいはい、そうだな。それで、行き先はもう決めたのか?」
― こっちも匙投げた!
「なんですか、その面白くない反応は。まあ、いいでしょう。マイケル先生からはいくつかリストアップしていただいているので、その中から決めるようでしょうねぇ~・・・。」
「なんだ、その顔。マイケル先生のことだから、ジェームズ君にピッタリの世界を探したと思うけどなぁ。まあ、ここと繋がっている世界しか行けないから限られるだろうけど。」
「そうなんですよねぇ。私ってば、この頭脳と才能を買われて召喚されたようですから、魔法とか魔力と呼ばれるものが存在しない世界ばかりなんですよ。」
― えっ!テディさん、もしかして魔法を扱えないの?
それって、私と同じってこと?
「テディさん・・・あっ、ジェームズさんも魔法を扱えないのですか?」
「どちらの呼び方でも構いませんよ。『も』ということは、ミサトさんもですか?」
やっぱり、ジェームズよりテディのほうが親しみやすいので、『テディさん』と呼ぶことにする。
「そのようです。私の場合は、単に能力不足みたいですけど。」
「ああ~・・・なるほどなるほど。納得です。」
― 納得するんかい!
「君の話しぶりからすると、そういう世界に行きたいってことか?」
「だって、せっかく世界を渡ったんですよ?ファンタジーですよ?ファンタジーといえば、魔法や魔力や精霊や召喚なんかがつきものじゃないですか!この目で見て、その原理を追求したいじゃないですか!」
テディさんの目がギラギラしてきた。
「気持ちはわかるが、魔法が日常の世界で、魔法を使えない君が行ったところで、いい扱いはされないと思うがなあ。」
「やっぱりそうですよねぇ。底辺から這い上がっていくのも醍醐味ですが、いかんせん私も若くないですからね・・・はぁ、年齢ばかりはどうにもなりません。」
― いろんな世界があるけれど、どこの世界でも25歳といえば、もうオッサン扱い。
成功する頃には、おじいちゃんになってるかもしれない。
「・・・なんですか、ミサトさん。その老人をいたわるような視線は。言っておきますが、あなただって世界に出れば、立派なオバ・・・」
― その先は、言わせない、絶対!!
「いちいち私に突っかかるのはやめてくださいよ。私はリュウ先生と同じでここを離れる気はありませんので心配ご無用です。」
「おっと、ミサトさんに反撃されてしまいました。年齢のことで女性をイジるのはやめましょう。行き先については、少し考えます。そのくらいの滞在は許されますよね。」
「年単位でなければ大丈夫だろう。君のことだからそれほど時間はかけないと思うが。」
そんな話をしていると、三室の扉が、バーンと勢いよく開かれた。
― なんだろう・・・この開け方、嫌な予感しかしない。
「来たぞ!我が永遠のしもべよ!!待たせたな!!」
― やっぱり、来ちゃった!!




