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「そんな怖い顔しないでくださいよ、リュウさん。遅くなっちゃったことは謝ります。いやあ、思いのほか大事になっちゃいまして、アハハ~。」
「笑い事じゃないだろう!まったく、君ってヤツは・・・。こっちがどれだけ心配したと思ってるんだ。」
はぁ~と、深いため息をつくリュウ先生である。
私は、二杯目に温かいハーブティーを淹れ、テディさんの前に置き、リュウ先生の隣に座る。
「はぁ~、だいぶ落ち着きました。ご心配おかけしたようで申し訳ありませんでした。では、何があったのかざっくり説明しましょう。」
テディさんの説明によると、二代目の皇帝が戦争の準備として、税金を上げたことが始まりだった。
さらに、贅沢品には重い税が課せられたことにより、テディさんのジュエリー店やお城のようなホテルは大打撃を受けたらしい。
貴族が治める領地からの徴兵や、その費用負担を巡って不満が噴出していたのだとか。
その中には、切り捨てられた先代皇帝の重鎮の方たちもいたとのこと。
「・・・テディ君は、自分の店がターゲットになった腹いせに、そいつらを焚きつけたってわけか。」
「言い方はアレですが、まあ、そんな感じですねぇ。あのクソ皇帝、私の店を真っ先に潰しにかかりましたからねぇ~。従業員を守るため、仕方なくですよ。それに、防衛のためならわかりますが、力の誇示だけの戦争なんて意味がありません。ガキ大将じゃないんですから。」
― テディさんの話からすると、主導者はあくまで元重鎮の方たちで、テディさんではないようだ。
なら、何故一週間も行方知れずだったのだろう?
お膳立てだけして、とっととセンターに来ればよかったのに。
「事情はわかった。それなら、さっさと来ればよかっただろう?」
「それですね~。クーデターが失敗することは目に見えてましたから、ちょっと小細工をしましてね。その後始末に思いのほか時間がかかっちゃって。」
― え?失敗するのがわかってたのに、計画を遂行させたの?
「小細工・・・?クーデターは目くらましってことか?・・・って、おい、まさか・・・また国を一つ潰してきたのか!?」
― ・・・・・・は?どういうこと?
「あはは~、ついうっかり!だって、隙だらけなんですも~ん。隙はつきたくなるじゃないですか~。」
― 『うっかり』って、なに!?
うっかりで、一つの国を潰せるの?それって二室案件にならないの?
「領土問題で隣国と揉めることはよくあるでしょう?今回も、その辺で戦争を起こす気だったらしいですよ。そ・こ・で、第三国の登場というわけですよ。国内が混乱している時に、ノーマークだった方角から攻められたら、たまったもんじゃないですよね~。」
「「・・・・・・」」
「避難先の国のトップに、チョチョっとお誘いをかけましてね。そしたらなんと、食いついちゃいまして!あとは、ご想像のとおりです。いやあ、こんなに上手くいくとは思いませんでしたよ。」
「「・・・・・・・・・・」」
「おや、なんですか?その虫けらを見るような目は。あのクソ皇帝のもとでは、遅かれ早かれ国は滅んでいたでしょうから、少し時間を早めてあげただけです。」
― そんなドヤ顔で言われましても・・・。
「ああ、そう。それで、その国のトップから言い寄られてたってワケか。それを振り切るのに時間がかかったと。」
「そうなんですよねぇ~。なかなか離してくれなくて困っちゃいましたよ~、アハハ。」
― そっちか・・・。秘書さんじゃなかったのか・・・。




