49
診察室に行くと、ソファーでぐったりしているジュエル先生とリュウ先生がいた。
「あぁ、サト。コーヒー買ってきたから、よかったらどうぞ~。」
「ありがとうございます。」
空いているのは、診察用の先生の椅子だったが、恐れ多くて座れない。
休みで不在とはいえ、課長や部長の席に座れないのと同じである。
というわけで、受付用の椅子を引っ張ってきて、少し離れたところに座る。
さすがのジュエル先生も、今日は口数がめっぽう少ない。
このままだと、ず~っと休憩していそうな雲行きになってきたので、仕方なく口を開く。
「ジュエル先生、ここに掃除用具はないんでしょうか?雑巾とかバケツとかホウキとか。」
「え?あぁ~、そうだねぇ・・・ええっと、確かこの辺に・・・」
と言いながら、だるそうに立ち上がり、診察用の机の引き出しを物色し始めた。
「あ、あったあった。これ、三室用のカード。ここで必要になるものはこのカードで買って。ボクやリュウ先生に持たせると、余計なもの買っちゃうから、サトに預けておくよ。」
― そんな大事なカード、怖くて受け取れません!
「えええ、そんな大事なカード持てませんよ。必要になったら都度お借りしますから。」
「そう言われても、ボクもいないときがあるしなあ。じゃあ、ここの引き出しに入れておくから、必要な時に使って。くれぐれも自分のカードは使わないようにね。リュウ先生もそれでいい?」
「ああ、構わない。」
― んな不用心な。
「で、なんだっけ、掃除用具だっけ?あ、スライムもらってくるの忘れてた。センター内にもお店があるから、必要なものはそこで買ってね。」
― へぇ~、センター内でもお買い物ができるんだ。
「じゃあ、もう少ししたら動こうか。ボクはスライムの手続きに行ってくるから、リュウ先生はサトと一緒に買い物に行ってくれる?」
「は?俺が?」
― リュウ先生も余裕がないんだな~。一人称が『俺』になってる。
「昨日案内するのすっかり忘れれててさ~。ついでにお茶セットとかお茶うけとか、足りないものを買ってきてくれるかな?サトのセンスにお任せするから。」
リュウ先生が心底面倒くさそうな顔をしているが、作業優先だから仕方ない。
私が迷子になっても、さらに面倒が増えるだけだ。
ここは、心を鬼にしてお願いしよう。
「わかりました。リュウ先生、お疲れのところ申し訳ありませんがよろしくお願いします。」
「仕方ないな。わかった、そうしよう。」
ため息をつきながらも了承してくれた。
―あのねぇ、 ため息をつきたいのは、私もなんですよ?




