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そして舞台は魔界の酒場へ。
アズ師匠と約束した、三室の懇親会である。
「アタシ、魔界の酒場って初めてなのよ~。なんかドキドキしちゃうわよね。」
アリィさんは目をキラキラさせている。
「魔界の方たちは、見た目はちょっとアレですけど、皆さん優しくて気のいい方たちばっかりですよ。」
「へぇ~、そうなのね。なんだか楽しみだわ~。」
魔界ブースに入ると、アズ師匠が出迎えに来てくれていた。
「よう、よく来たな。じゃ、早速行くか。こっちだ。」
アズ師匠の後に続き、酒場へと移動する。
魔界の酒場に入ると、すでにザワザワとにぎわっていた。
「・・・・・・これはまた・・・」
リュウ先生が固まっている。
「ワオ、なんか・・・迫力あるわね。」
アリィさんも固まっている。
「あ、ミサト~。ひさしぶり~。」
「今日は、ニンゲンがいっぱいいる~。」
「ミサト~、結婚したんだって?おめでとう。オイラも見たかったな~。」
見知った方たちから、声をかけてもらった。
「お久しぶりです。みなさんも元気そうですね。ありがとうございます。」
「ねぇねぇ、ミサトのつがいはどっち~?」
― つ、つがい・・・つがいって旦那様のこと、だよね。
「ああ、メガネのほうですよ。」
「へぇ~・・・これがミサトのつがいかあ~。泣かせたらダメだぞー、つがい。」
「そうだぞー。泣かせたら、オイラたちも許さねーぞー、つがい。」
「は、はあ・・・精進します。」
リュウ先生も、かなり戸惑っているようだった。
― いつもなら、「私の名前は・・・」とか言うくせに、そういう余裕もないらしい。
こんな姿を見るのは初めてだな・・・新鮮だ。
酒場の奥に4人が座る。
「さて、それではアズさん、今後のことについて話し合いましょうか。」
「そうねぇ・・・アズ様、相棒を堕としちゃったのねぇ~。本気出しすぎたんじゃないのぉ?」
「1回くらい相手をしてやったらどうですかね?」
「それじゃあ、ますます堕ちちゃうじゃないの。そしたら、沼よ、沼。底なし沼よ。」
リュウ先生もアリィさんも、言いたい放題である。
「だってよ、ミサトもリュウもアリィも、そんなんじゃねぇからさ。ついいつもの癖でよ~。」
アズ師匠の元気がない。
「アズ様、お見送りの時にやってる、アレをやったらいいのでは?」
― ジュエル先生に依存しちゃった女性が受ける、黒いモヤモヤならいけるのでは?
「ミサ、そんなことしたら、最悪三室を辞めることになるぞ。」
― ま、まさか!!
「そうねぇ・・・アズ様に会いたい一心で頑張ってるんだもの。張り合いがなくなっちゃったら、『つまんなーい』とか言って、どこか行きそうよねぇ~。それはそれで困るわよねぇ~。」
― そ、それほど!?
「サトは実感ないかもだけどね。アズ様、あのお店でナンバーワンなのよ?しかも、どっちのお店でもなの。これがどういうことかわかる?」
― えっと・・・お兄ちゃん師匠でもナンバーワンで、お姉ちゃん師匠でもナンバーワンで・・・。
ちょっとなにを言っているのかわからない。




