閑話【ジュエルの独白②】
彼女は頑張っていた。
縁もゆかりもない国のために、頑張って浄化を続けていた。
女神サマに祈りを捧げながら、自分をすり減らしながら、本当に頑張っていたんだよ。
そして、間もなく浄化が終るという時に、彼女が
「ねぇ、この国から連れ出してくれない?」って呟いたんだ。
愛している女性にそんなこと言われたんだ、すぐにでも一緒に逃げてやりたかったよ。
でもさ、その時は俺も近衛騎士だったし、国に忠誠を誓っているじゃない?
次男坊とはいえ、一応国を支えるお貴族サマだしね。
だから、「間もなく浄化も終わります。そしたらお好きな場所に行って羽根を伸ばしましょう。どこでもお供しますから」って、要は「もう少し頑張れ」って言ってしまったんだ。
彼女は、「ふふ、そうね。そうよね、ありがとう。」って儚く微笑んだ。
今思えば、それがトドメの一言だったって、よくわかる。
頑張ってすり減った心に、「もっと頑張れ」なんて言っちゃいけなかった。
最後の浄化の前日、彼女は祈りを捧げに教会へと出かけた。
事件はそこで起きたんだ。
いつものように教会の外で護衛をしていたら、中が騒がしいことに気が付いた。
その頃になると、王太子妃の座を巡るゴタゴタがひどくて、どこにいても危険な状態になっていた。
彼女が祈りを捧げる時には、国も細心の注意を払っていたから油断していた。
まさか、と思って、彼女の言いつけを破って扉を開けたら、そこには血まみれになって倒れている彼女と、見たこともない恰好をしている人たちがいたんだ。
当然、剣を抜いたよ。
「君は、彼女の護衛騎士のジュエル氏だね。」
初老の男性が俺に向かって話しかけてきた。
「時間がない、君も一緒に来てくれ」
と言われたと思ったら、世界が暗転した。




