閑話【ジュエルの独白①】
俺の名前は、ジュエル・フォン・ブリード。
とある国の伯爵家の次男に生まれた。
家を継ぐ必要もなく、お気楽な立場の俺の職業は近衛騎士、王太子の護衛だった。
一応言っておくけど、けっこうエリートなんだよ?
まぁ、こんな容姿だし、女性には苦労しなかったね。
身分もしっかりしているし、次男坊だからね。釣書もそれなりに、ね。
というわけで、別の意味で苦労は・・・いろいろあったかな。
王太子の護衛について何年目のことだったか、国に瘴気が蔓延し、魔物の被害が出始めた。
そこで、国の威信をかけて聖女を召喚した。
降臨した彼女はとても美しく、そしてどこか儚げだった。
ただ浄化の力は凄まじかった。
俺は、彼女の護衛に配置換えとなった。
あ、左遷じゃないからね?国の危機を救う聖女の護衛だもん、むしろ栄転だよ?
後で聞いたら、『女性の扱いに慣れているから』って理由だったんだけどね、ハハハ。
瘴気を浄化するには、現地に行ってその場所の瘴気溜まりを浄化しなきゃいけない。
彼女は常に前線に駆り出された。
負傷した兵士のケガを癒し、瘴気を浄化し・・・彼女は頑張っていたよ。
でも、日に日にやつれていくのは明らかだった。
そりゃあ、恐ろしい魔物や兵士の無残な姿を目の当たりにしたら、普通の女性なら耐えられないよね。
なにより彼女を一番蝕んだのは、聖女を巡る貴族どもの駆け引きだった。
彼女の周りは腹黒い連中だけ、王家だって例外じゃない。
王太子との婚約話は自然の流れだった。
そうなると、王宮自体が伏魔殿となる。
彼女はね、優しすぎたんだよ。そしてますます疲弊していった。
俺は彼女の一番近くにいた。
体は守ることはできても、心まで守れない悔しさを何度味わったことか。
彼女だって、俺を一番に信頼してくれた。
俺は、彼女だけの騎士でありたかった。
いつの間にか、俺の唯一になっていた。
もちろん、王太子の婚約者だから手は出さなかったよ?
いつまでも側にいたかったからね。
騎士として彼女を支えることに徹した。
彼女は、定期的に街はずれにある教会に通っていた。
中には決して入らず、一人にしてほしいと言われたから、国も俺も彼女に従った。
てっきり、女神サマにでも祈りを捧げているんだと思っていた。
このセンターのカウンセリングを受けていたと知ったのは、ずっと後のことだ。




