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「お待ちしておりました。どうぞこちらへ。」
今日は、あの赤薔薇の君の面接の日である。
朝のミーティング時、リュウ先生がレイ君に「初仕事だ、頼んだぞ。」とだけ伝えた。
さすがのレイ君も、「なにそれ、いきなりー?スパルタはんたーい!」などと抗議していたが、「たぶん年上の、かなり美人な女性だよ。」と伝えたところ、「そうなの?じゃーやってみようかなー」とあっさり掌を返した、現金な彼だった。
赤薔薇の君は、私を一瞥した後、リュウ先生の姿を見つけると、文字通り薔薇が花開くような笑顔になった。
― この感じ、なんだか懐かしいなあ。
ジュエル先生に抱き着かんばかりに駆け寄っていった、あの聖女様のことを思い出した。
まずは、リュウ先生が診療室に案内をし、給湯室でレイ君がお茶を用意する。
「レイ君、私がお茶をだそうか?」
「あー・・・いいや。俺が出す。ミサトちゃんは出て行かないほうがいいと思うよー。」
と言われたので、給湯室から面接の様子をうかがうことにした。
そして面接が始まる。
「これから、あなたの担当になるのはこのレイとなります。」
リュウ先生が淡々と告げる。
赤薔薇の君が動揺しているのが、こちらにも伝わった。
「はじめましてー。レイと言います。これからよろしくお願いしますねー。さ、おかけください。」
そんな彼女におかまいなしに、レイ君がニコニコと挨拶をして、着席を促した。
最初のうちは、明らかに面白くなさそうな態度であったが、人懐っこいレイ君に、徐々に打ち解けていったようだった。
― レイ君・・・人たらしだ。
リュウ先生がいなかったら、私もコロッといっちゃってた・・・危なかった!!
2回目のお茶は、記録を取っていたリュウ先生が淹れる。
「ほら、大丈夫だっただろ?」
私に向かってしたり顔で囁いていったリュウ先生だった。
終始、レイ君のペースにのせられ、あっという間に面接の時間は終わった。
次の面接の予定を確認し、カードを渡すとき、彼女の視線が私の手にいった。
「ねぇ、リュウ先生~、お仕事が終わったら予定はあるのかしら?」
帰り際、受付にやってきた彼女が、振り向きざまにリュウ先生に問う。
「私、今日は一泊して帰る予定なのよ~。良かったらお食事でもどうかしら?」
ニッコリと、それでいて挑発的な笑顔を見せる赤薔薇の君である。
― うわ、指輪に気付いてこれか~・・・。
それとも、そういう習慣がない世界の人で、もしかして気付いてない?
いやいや、確かに視線は感じたし、わかっているはずだ。
リュウ先生は、転移者の希望はできるだけ聞くスタンスだから、付き合うんだろうなあ。
今日は、アリィさんを誘ってゴハンでも食べに行くかなあ~。
「え、お泊りするんですかー?それはちょうど良かった!僕、あなたを連れて行きたい所があるんですよー。この後、僕に時間をいただけませんか?」
そこで口を挟んだのはレイ君だった。
「え?でも、私が誘ったのは・・・」
赤薔薇の君が、明らかに困惑している。
「いいじゃないですかー。ぜーったい嫌な思いはさせませんから、ね?・・・それとも、僕じゃダメですか?」
上目遣いに、甘えるように縋るレイ君。
「そ、そこまで言うなら・・・でも・・・」
グイグイくるレイ君に、リュウ先生に助けを求める視線を送りながらも、まんざらでもない顔になる彼女である。
「決まりですね!じゃー、これから早速行きましょー。リュウ先生、ミサトさん、そういうわけで、僕これから一緒に出かけてきますね!!」
赤薔薇の君の腕を取り、「楽しみですねー」なんて言いながら、三室を後にした二人であった。




