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「ここがどこかわかりますか?」
ロマンスグレーのイケオジ様が口を開いた。
「えっと、ここはあの世でしょうか。もしかして私、死んだのでしょうか。今から天国に行くか地獄に行くか決まるのでしょうか。」
― まさか異世界なんて本当にあるわけじゃあるまいし。
魔王様が地獄の使いで、天使様が天国の使いで、イケオジ様がエンマ様的な立場の方で、今から裁判でも行われるのだろうか?
生まれてこのかた二十数年、善行を積んできたわけじゃないけど、警察にお世話になるような犯罪を起こしたことはない。
どちらかといえば受け身だったけど、それでも割と幸せだったし、自ら命を絶とうと思ったこともない。
私、天国に行けるのかしら・・・だんだん心配になってきた。
ていうか、死後の世界って、宗教関係ないのかしら?
「ここはね、異世界転移センターと呼ばれています。」とイケオジ様。
― は?やっぱり異世界なの?
「異世界召喚って言葉は聞いたことがある?」と天使様。
― それって、ゲームとかアニメとか小説とかの、アレ?
「えっと・・・」と言いよどんでいると、私の返事を待たずに天使様が話し出した。
「最近、違う世界から召喚される事件が多くて、いろいろと不都合が起きているの。まったく、よそ様の世界に干渉することがどれほど危険なことがわかってやっているのかしら?」
頬に右手を当て、ほうっとため息をつく天使様。憂い顔も大変美しい。
「他の世界に干渉することで、時空や歴史が歪んでしまう故、その修復には非常に苦労するのだ。なにせ、召喚された者の存在ごと削り取るのだからな。その人物が社会的な成功を成し遂げているほど埋め合わせは難しくなるし、人数が多くなるほど手に負えなくなるのだよ。」
均整のとれたご尊顔の眉間にしわを寄せた魔王様が唸っている。
「そういうことでね、いろいろな世界の高位の存在の方々・・・まぁ、神様といったらわかりやすいかな。その方々の話し合いでね、この『転移センター』が設置されたってわけ。」
イケオジ様が、これまた優し気な低音ボイスで続ける。
「このセンターでは、まず召喚された人の面接を行い、そのまま新たな世界へ行くか、元の世界に戻るか決めてもらうんだ。そして、世界を渡る意志のある人だけを送り出しているんだよ。」




