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「あ、自己紹介がまだだったね。ボクの名前はジュエル。みんなからはジュリィって呼ばれてる。良かったらジュリィって呼んでね。」
「あ、ありがとうございます。私はサトウミサトと申します。」
「ミサトちゃんか。う~ん、『サト』が二つも入っているし、じゃ、サトって呼ぶね。」
― おう、馴れ馴れしいな、イケメンめ。
しかし、名前が『ジュエル』って、エメラルドみたいな瞳の色といい、このキラキラな笑顔といい、名は体を表すってこういうことなのかしら。
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。ここは安全なところだから。今からちゃんと上司が説明するからね。」
「はい、それはどうも・・・」
もう泣きそうになってきた。
この人の慣れ具合をみるに、ジュエルさんとやらは、きっとその道の組織が経営しているお店のホストで、私、何か粗相をして、それで連れ去られて・・・一週間も眠っていたってことは、薬物か何か投与されたに違いない。
え、ちょっと待って。
私、そもそもホストのいるような場所に行ったことあった?
いや、きっと私の知らないところで何かやらかして、そしてこれから・・・とグルグルと考えていた私の顔は、この世の終わりのような悲壮な顔をしていたに違いない。
「ねぇ、サト、あらぬ妄想をしているみたいだけど、命の危険はないから大丈夫だよ?」
「え、え、私、そんな顔をしてました?」
「うんうん、してたしてた。」
ハハッと笑いながら、ジュリィさんがウィンクした。
― クッ、しつこいけど、このイケメンめ。
「さ、着いたよ。この部屋だよ。」
ジュリィさんがドアを開けた。
目の前には、テーブルをはさんで3人座っていた。
一人目は、黒髪に深紅の瞳の男性、『ザ・魔王様』
二人目は、プラチナブロンドの長い髪に瑠璃色の瞳の女性、『ザ・天使様』
三人目は、ロマンスグレーの髪をオールバックにした、グレーの瞳の男性、『ザ・イケオジ様』
― なんでしょうか、この人間離れした美貌の人たちは・・・日本じゃ見たことがない。
まるで異世界に来たような・・・え、異世界?
ジュリィさん、最初になんつった?
『異世界転移センター』って言わなかった?
・・・え、なに、ここ、もしかして流行りの異世界なの?
えええ、何の世界に来たの、私、乙女ゲームとかやってないんだけど!!
ポカーンと突っ立ったままの私の背中を、ジュリィさんがポンッと叩いた。
「どうしたの?ほら、座って?」