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私の住まいとなる部屋に案内される。
豪華とはいえないが、それでも必要最低限の設備は揃っている。
ワンルームのアパートといった感じだろうか。
ベッド、机、収納棚、クローゼットが備え付けてあり、ミニキッチン、トイレ、シャワー室なども完備されていた。
全体的に明るいクリーム色で統一されており、清潔感のある部屋だった。
「ここがサトの部屋になるよ。快適に暮らすための改造なんかは全然OKだからね。必要なものがあったら遠慮なく言ってね。」
「は、はい。ありがとうございます。」
「もう少ししたら、夕食がてら共用スペースを案内するから、それまでゆっくり休んでてね。」
そう言うと、手をヒラヒラさせながら、ジュリィさんが出て行った。
「はぁぁぁぁーーーーーーー、つっかれたーーーーーーー」
私は、ベッドに体を投げ出す。
あまりにも情報量が多すぎて、返事をするだけで精一杯だったけど、一人になると考えなくてもいいことまで頭が回る。
とりあえず、日本には帰ることができなくなった、ことだけは完全に理解できた。
エリィ様やルキウス様の話しぶりから、私がいた日本では、もう『私が生きていた』という事実はない、ということだ。
両親のもとで娘として生きてきた25年間も、学校の卒業証書も、友達とのやりとりも、すべて存在していない、ということ。
自分を形作ってきたものが、足元から崩れていくような感覚になる。
もう、自分が自分でないように思えてくる。
― うわ、これは・・・思っていたより、けっこうくるわ・・・。
視界が歪む。
自分でも気が付かないうちに、涙が頬をつたっていく。
ベッドに横になりながら、私はただ泣き続けていた。