5-2
次は新居さん。
同じように経緯と目的と打診を書いて送ると金曜日の夜に返事が来た。
『返事が遅くなって申し訳ない。話が長くなると思うから電話してもいいか』
(はい。大丈夫です。お願いします)
すぐ電話が掛かってきた。
『お疲れ。ごめんな夜に』
「いえ大丈夫です。お仕事、お忙しいですか?」
『ちょっとプライベートで忙しかっただけだ。気にするな。
会社は前よりは落ち着いてきた。
健一にもだいぶ心の余裕が出てきた』
「それは良かったです」
『入社日までは梅村に会わないで頑張るって意地張ってる。
いつまで持つかはわからんけど』
お互い笑い合った。
しかしすぐ新居さんは真剣な声音で本題に入った。
『捜査の一環って、久田のあの件か?』
「それは、はっきり違うと言われました』
『……そうか。なんだろな』
聞いても教えてはくれないだろう。
『あ、話が少し逸れるが、実はな、今医師の知り合いに薬剤分析ができないか、内々に打診されてるんだ。健一にもまだ話してはいない。
LOTUSでやれないか、折を見て話すつもりだ』
「そうなんですね……」
それで新居さんは忙しかったのかもしれない。
『その医師が、俺の名刺を誰かに渡したって言ってきた。そのうち連絡がいくかもって。
何となく警戒してたら、お前から連絡が来たってわけだ』
「……では、警察に渡したって事ですか?」
『あぁ。だから、これは俺の憶測だが、薬害事件の捜査協力をLOTUSに頼むつもりで接触しようとしてるのかもしれん。
久田の件と引き換えに』
ちょっと厄介なことになり始めたぞ……
『梅村、大丈夫だ。そう深刻に考えなくていい。健一には早いうちに俺から説明しておく』
「ダメって言われたらすぐ教えてください」
『……まあ、間違いなく渋るだろうな』
会社と社員を守る重い責務があの人にはある。当然だ。
『俺と電話したと知ったらまず拗ねるだろうし、刑事の佐藤君に結構ヤキモチ妬いてるからな』
「えっ!?」
いやいやいや! それはない!
前者はともかく、後者は絶対違うでしょ。
『健一が重かったら、俺に遠慮なく相談しろよ?』
「ありがとうございます……」
嘉太郎さんが中に居た時の健一さんは、確かに結構重かった。
でも、嘉太郎さんがいなくなってからの健一さんとは、数回しか直接接触してない。
本当の健一さんは重いんだろうか?
『……じゃあ、また連絡する。おやすみ』
「あ! はい、また。よろしくお願いします。おやすみなさい」
電話を終えた。