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……待てよ?
それ以外の問題があるんじゃないか?
「与晴のペアの先輩ってさ、女性じゃなかった?
今の所メンバーが男ばっかりなんだけど、大丈夫?」
結婚が決まったって与晴から聞いた気がする。
食事会となってるけど、酒が入る可能性もある。さすがに不味いだろう。
と懸念しつつ、俺は内心ワクワクしていた。
与晴のペアは歳上の女性刑事。
かっこいいお姉様とお会いできるかもしれない!
その邪な考えは直ぐに打ち砕かれた。
『……あ、えっと、それが、ペアが急に変わってさ、ちょっと前から男になった』
あー、寿退職しちゃったか……
「……そうなんだ」
我ながら酷く冷めた声が出たものだ。
『……本当、昔っから歳上の女性が好きだね、翔太って』
笑われた。
対象の性別こそ変わったが、前世から歳上好きは変わらない。しょうがない。
「新しいペアの人は、お歳はおいくつ?」
俺と与晴は同い歳、原と池辺君は2つ下、新居さんはアラフォー
『32。あ、違った、今年34』
はっきりしないということは、まだあまり仲良くないのかな?
「どんな感じの人?」
ペアが変わるかも仕事環境が変わるかもと不安がっていた与晴の事が気になる。
『スタイルいいから大抵のものが似合う。制服姿が最高にかっこいい』
与晴らしい評価だ。
そんな観察ができる余裕があることに安心した。
『仕事には厳しいけど、普段は優しい人』
良さそうな上司さんで良かった。
『あと……』
さっきより少し声音が低く震えている気がする。
『……兄貴に似てる』
途端に胸が締め付けられた。
一度も会ったことは無かったけど、与晴のお兄さんの事は知っている。
与晴が負った心の傷のことも……
不安でつい聞いてしまった。
「……その先輩の傍にいて、与晴は大丈夫? 辛くない?」
『……先輩に話した。そしたら、自分のこと兄貴と思っていいって言ってくれた。
だから大丈夫。楽しいことの方がだんだん多くなってきたし』
「そっか…… 良かったね」
『うん』
しんみりした空気を変えるべく、話題を変えた。
「あ、そうそう、ペアの先輩はアレルギーや好き嫌いある?」
会食や接待予約時の必須確認事項。
驚くほど即答だった。
『アレルギーなし。酒は結構飲める。
苦手なものは日常生活に差し支えないものだから、気にしないで大丈夫なレベル』
「了解。ありがとう。じゃあ日程調整と店のアレンジしてまた連絡するわ」
『ありがとう。よろしくお願いします。じゃあ、また!』