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定時が来た。
帰宅する社長から声を掛けられた。
「さっき撮った写真、健ちゃんに送ったんだけど、梅村君はいつから来られるかって聞かれてね」
秘書部全員集合での写真を送ったらしい。
「引き継ぎと有給消化するからまだ先だよって送ったら、返事が来なくなった。……ちょっと意地悪しすぎたかな」
本当に義理の弟である健一さんのことをいい意味でも悪い意味でも、大層可愛がってらっしゃる……
「俺からのプレゼントを素直に受け取ればこんな寂しい思いをしなくて済んだのにねぇ」
LOTUSから贈られたヘブンス社長就任祝いの返礼と、健一さんへの誕生日プレゼントを兼ねて、俺は健一さんへ贈られるはずだった。
でもあの人はあの日、意地を張ってそれを拒んだ。
でも結局、翻意して社長に頭を下げた。
未だにあの日の社長の言動を思い出すと恥ずかしくて顔が熱くなりそうだ。
全て必要なことだった。今もこうして離れている日々はお互いの為だった。
「可哀想な健ちゃんの為に、退社日を今週中には確定して知らせてあげようか」
ゴールを決めるのは、引き継ぎと有給消化の為にも必要だ。
「はい。よろしくお願いいたします」