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0005 『腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい - World of Sandbox -』(作者:てんてんこ様)

◯作品名:腹ペコ要塞は異世界で大戦艦が作りたい - World of Sandbox -<書籍化>

◯掲載媒体:

 書籍版:

  https://www.kadokawa.co.jp/product/search/?auth=%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%A6%E3%82%93%E3%81%93&indexFlg=2

 なろう:https://ncode.syosetu.com/n2749hf/

◯作者:てんてんこさん

◯連載状況:現在、連載中(本稿執筆時:第285話まで<Web>、書籍第2巻発売)


※一奥の過去のイチオシレビュー

『文明による侵略と解体・再構築のカタルシス。砲艦外交の本質とは平和的な同化の強制である』


転移ものの魅力は、迷い込んだキャラが元の世界の常識――彼にとっては平凡なもの――が持ち込まれ、強烈な化学反応が進んでいく点にあります。


――ならば人間だけでなく、技術の粋たる要塞ごと転移したら?


多様な資源を大量に要し、各構成部分を精密に連携させる"腹ペコ要塞"の存続には、高度に分業化された社会と巨大な経済システムと緻密な法体系が必須であり――単なる個人の知識伝授チートなど悠長に待っていることはできません。


ただ平穏に過ごしていくためだけですら、世界そのものを塗り替え、自らの内包する異質な「文明」の腹の中に"同化"していくべき宿命を負うのです。望むと望まざると。


本当の意味での「侵略」。

文明そのものの解体と再構築のカタルシスが、私たちのよく知る魔法ファンタジー世界を、着実に、しかしドラスティックに侵していく戦慄と高揚こそが、本作の魅力です。


   ***


<以下、本文>


 人は何故、異世界転移に憧れるのでしょう。

 人は何故、異世界転生に思いを馳せるのでしょう。


 そして人は何故、異世界への「侵略」に、どうしようもない一種のワクワクと浪漫を感じてしまうのでしょう。


 思考の体系が異なることや、技術の体系が異なることそれ自体も大事です。

 それまで全く出会うことのなかった要素同士が出会った結果、不思議な爆発力が形成される。あれとこれを組み合わせたらどうなるのか――とにかくなんかすごい(・・・・・・)ことが起きそうである、という、読者としてあれこれ想像はするけれども、それを一種大系の形にまで落とし込んだ「世界」が表現される。


 本作は"塗り絵"です。

 剣と魔法のファンタジー世界に、SFミリタリ科学軍事技術バリバリの『要塞』が、そのシステムごと乗り込んで根底から塗り替えてしまう、そんな爽快感に溢れた構成となっています。

 技術の大系は単なる一個人という「異人」の到来による波紋とは違う。水面に投じられる一石ではなく、その水面を丸ごと「資源」として吸い尽くすポンプが投げ込まれたかのような衝撃は――もはや『侵略』と呼ばずしてなんと呼ぶべきであるか。


 ただただ、自らの元の文明・技術・文化水準を維持して存続するという、ただそれだけでさえも、現地文明を根底から塗り替えて塗り潰してしまわざるを得ない。『侵略』という意識も認識すらもなく、そんんなしゃらくせぇ(・・・・・・)罪悪感なんてものすらなく、圧倒的に押し付けるという棍棒外交(パクス・アメリカーナ)の爽快さこそが、いっそ開き直ったレベルにまで突き抜けた楽しさを醸しますが……それだけでは終わらないのが「相互作用」という名の組み合わせ爆発の妙です。


 本稿執筆現在、書籍2巻が発売され、Web版285話まで連載されておりますが――こんなものまだまだ(・・・・・・・・・)序章に過ぎない、と一奥は見る。


 一見、圧倒的な力で塗り潰したように見えましょう。

 科学の力とシステムに馴染まぬ存在さえも、異法則を量でぶつけるゴリ押しによって踏み潰したとも見えましょう。


 しかし、本作ではただ押し潰して同化を強制させつつも――『魔法』を確かな"現象"として捉え、解明を試みる一つの法則として捉え、それを貪欲に学習していっているのです。この"要塞"とその司令官という形を取った『侵略者(まろうど)』は。


 さながら、塗り潰したと思ったその"色"が、下色となって滲み――上色と入り混じって、乾いた頃には従前からは想像もできぬほど、鮮やかでオリエンタルな妙色に至るかのように。


 粛々と、着々と、要塞戦艦とAI種族達は『魔法(ファンタジー)』を学習していっている。

 まるでそこから、転移前の大系からは想像もつかなかった新しい何かが生み出されようとしている。それを同じ大系に属し、画一化された思考を持つはずのAI達が、積極的に受容する者、警戒して拒む者とに分かたれながらも――その多様的な反応そのものが劇的な「組み合わせ」爆発を予感させるが如くに、煮込まれている。


 やがて、そこに『科学×魔法』という、ただでさえ圧倒的だったものがさらに圧倒的な何かに変貌しようとしている予感を抱かせる。それが本作を読み進めていて、ページを捲る指を止められなくなる、ちょっと禁断じみた感触すら抱くような魅力です。


 つまり、イチオシで書いた視点は……序章に過ぎなかった。

 真に「腹ペコ」であるのは、ただ単に従前の存在を維持せんと貪欲であるのみならず。


 ――降り立った異世界の異法則すらをも己の存在と技術の大系の中に組み込み、喰らい込み、取り込んで進化していくための、その飽くなき爆進の様こそが「腹ペコ」であると称されるべきもの……。


 というガチガチの爽快感が、可愛らしい見た目に受肉した個性あるAI達の学習と成長と、それに翻弄されながらも取り込まれ、半ば強制的に教化・成長・促進されていく現地人達との相互作用の中で繰り広げられ、まるで伝染するように拡がっていくというのもまた、見ていてゾクゾクとするようなギャップです。


 『侵略』と『消化』からの『融合』と『進化』と『躍進』を楽しみましょう。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


どうか、少しでも興味をお持ちいただけましたらば、掲載したURLから本家作者様の作品へ。


「いいね・★評価・感想・レビュー・SNSフォロー」などによって、この素敵な作品を投稿してくださった作者様に、「震わせられたよ!」という思いを伝えてあげていただけたら、一奥もまた心から嬉しく思います。

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